1998 May.後期 (Arcana 18)

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過去のお言葉


May 21th (Thurs.)

数が多くなってきたので、 「過去のお言葉」を整理してみました。 毎日「お言葉」を書くのは結構大変なんですよね、、よく続いているものだ(自画自賛)。

また昼まで寝てしまった。食事をして、午後は雑文を書いたり、買物に出たり。 買物ついでに、西本願寺近くの薫玉堂を訪ねる。 薫玉堂はお香の店で、香道の方面でも信頼されている老舗である。 四百年ほど昔からやっているらしい。 今日は香道の道具展などもやっていて目の保養をした。 おみやげに簡単に薫ける白檀と沈香の香を買って帰る。

さて、香道も数学と関係がある。無理矢理言ってるんじゃないです。

香道は一言でいうなら、香木をある様式に従って薫(た)いて楽しむ芸道だが、 その内の最も有名なものが「源氏香」である。 これは香り当てゲームで、以下のようなルールで遊ぶ。
まず、五種類の香を各五つずつ包みにし、この合計二十五の包みから、 ランダムに五つを選び出して、順番に薫く。 この内、どれとどれが同じ香であったか、を当てるというゲームである。 注意して欲しいのは、その香が何であるか、を当てる必要はなく、 どれとどれが同じだったか、という異同を当てるゲームであることだ。 回答者は、どれとどれが同じだったかを香文という図式に書いて答える。 この図は例えば、全部違う香りだったら、縦線を五本書く。 二番目と三番目と四番目が同じで、後の二つが違えば、 五本線の二、三、四番目を横線で上部を繋ぎ、一、五番目はそのまま。 一番目と四番目が同じ、二番目と三番目が同じ、五番目はどれとも違う香なら、 五本線の一、四をつなぎ、二、三をつなぎ、五はそのまま。 全部同じだと思ったら、五本線の上を横線で全部繋ぐ。 このように、同じ香だったと思う所同士を上部で繋げばよい。 この図は日本人ならきっと何処かで見たことがあるだろう。

さて、数学としては次の問題が気になる。 「一体、何通りの組み合わせがあるのだろうか?」

素朴に絵を書いて数えていくなり、もう少し頭を使って、 一致している香の最大数に注目して分類するなりして、 数えあげれば答は (*1)52通りなのだが、 これをもっと上手く数える方法はないか? この問題はただちに N 種の香がある時に一般化されるが、 その場合の答は N でどう表されるか? これらはかなり高級な数学の問題である。あなたも考えてみますか?

(*1): この52通りの組み合わせに、それぞれ源氏物語の帳名がついていて、 その名で答えるところが趣向であり、源氏香の名はそこから来ている。 源氏物語は54帳あるので、どれか二つが無い。 全部違う香だった時を「帚木」、全部同じ香だった時を「手習」と呼ぶ所をみると、 おそらく「桐壷」と「夢浮橋」が無いのではないだろうか。

May 22th (Fri.)

来週の火曜日まで出張しておりますので、 日記更新をお休みさせていただきます。

「珍しき香練りあはせ立てましし迷ひの宮ぞいざ迷ひてな」
源氏物語三十二帳「梅枝」より

May 23th (Sat.) - 26th(Tues.)

東京でお仕事、および私的なことごと。

仕事は某○○○が開発中のチップと、 わがA社のライブラリについての会議に参加。 なんかおおげさなことになってきたな、、、

私的なことは、、、、 NHKで大昔のハリウッド映画を観て号泣、とか(馬鹿)。 エンパイアビルの最上階で待ち合わせする話であることは知っていたが、 それがラストシーンだと誤解していた。 そこからまだこんなに話があったとは。 兎に角偉いぞ、デボラ=カー。 幸せになってね、デビー、、、(って映画だってば)

二十六日、山科に帰宅。 映画マニアのBさんに頼んでいたダビングテープが届いていた。 多謝。御旅行、気をつけて。

May 27th (Wed.)

早起きして計算など。 相変わらず、一週間前からの謎の追及を続けるが、 どうしてもあっているとしか思えない、、、 しかし反例の計算もあっているとしか思えない。

正午くらいに簡単な食事をして、チェロを三十分ほど練習。 午後から京大数理研へ。

T師匠とゼミ。今日も前回からの謎の計算を続ける。 三時間ほどかかってようやく解決。 反例の計算が間違いで、やはり最初の僕の証明であっていた。 確率解析の初歩の初歩と言ってもいい問題だったのだが、 二週間近く悩み、ノート一冊分くらい無駄にしてしまった。 まあ、確率解析の公式で単関数の計算でつかまらないものは、 ほとんどない、という確信は得たかもしれないが。

三条で本屋などを見て帰宅。

「宗教と奇蹟」みたいなテーマの本を立読み。 バチカンには今も奇蹟を収集記録している部署があると言う。 イスラムにもあると言う。 なんと愚かなことであろうか。 何故、存在や精神や物質や時間に、驚き畏れを抱かないのか。 私が指を動かそうと思い、 その通りに私の指が動く驚きに何故打たれないのか。 水の上を歩いたり、死人が起きあがったりすることが、 そんなに偉大で不思議なことなのか。 水が水であり続けることが奇蹟なのに、 何故ワインに突如変わらなくてはいけないのか。 そんなに皆、手品が見たいのだろうか。

May 28th (Thurs.)

数学の勉強をしたり、チェロの練習をしたりしている内にもう午後。 簡単な昼食をとってから大学へ。

何のことはなしに、コンピュータのログを眺めていると、 得体の知れない外国から僕のコンピュータに直接 telnet されていることを発見。もちろん、deny されていたが、 なんとなく気分が悪いような気がして、 急拠セキュリティをチェックする。

僕の所属する情報学科では各研究室に複数の IP アドレスが与えられ、 各研究室ごとの方針で勝手に管理、実験をすることになっている。 僕の研究室の机の下にあるコンピュータもまったくオープンに、 外の世界につながっているので、 いつでもどこからでもアクセスされる可能性はあるのだが、 実際にそんなことがあるとは思っていなかった。 特に見られて困るものもないし、侵入されてどうということもないのだが、 やはり気持ち悪い感じが抜けなくて、 午後は色々と設定のし直し。

ネットワークを切断して、 いくつかの重要な設定ファイルの状態をチェックした後、 Tcp_Wrapper で不必要なサービスを全部断わるよう設定、 滅多にいらないデーモンはそもそも立ち上げないようにした。 さらに表から自分がアクセスするために SSH (Secure Shell) をインストール。 tripwire で定期的にハードディスクのハッシュを 計算してチェックできるようにした。 そこまですることもないのだが、簡単に出来ることだし。

セキュリティに限らず、危機対策はかけ捨ての保険のようなもので、 そのコストが「もしや」の時の損害に見合うかが問題になる。 実際、ほとんどの人は自分のハードディスクのバックアップも取っていない。 そして一、二年に一回くらいクラッシュされて「あちゃー」と頭を抱えている。 そのことを目鯨を立てて忠告する人は多いが、 (僕も表向きはそうしているが)、 本当はそれももっともなことだろうと思ってもいる。
本当にその危機に見合うコストはどれくらいなのか、 ということを正確に見積ることはとても、とても難しい。

May 29th (Fri.) - 30th(Sat.)

午後からBKCへ。 ネットワーク管理グループのミーティングに参加して、 その後セキュリティ問題に興味を持つ人達のミーティング に参加。

夜は京都駅周辺にO先生と一緒に飲みにいく。 日本酒で焼き鳥を食べた後、バーで二杯ほど飲んで帰る。

土曜日。髪を切りに出た以外はずっと家にいて、 チェロの練習をしたり、数学を考えたり、コンピュータをいじったり、 優雅な休日を過ごす。

お、知らない内に京都を色んな人が訪問していると見えるな、、、

May 31h (Sun.)

午後にT部長に電話。仕事を片づけてから、夕方に三条で待ちあわせる。 昨日急拠上洛した東京のMさんとmさん、 関西組のT部長、Nさん、KMさんは午後、 北白川でビリヤードに興じていたらしい。
東京方面の人は19時には京都を出たいということで、 みんなでお茶を飲みにいくことにし、 三条の Cafe Riddle で、だらだらと御隠居な時間を過ごす。

Mさんは予定通り19時過ぎに京都を発ったが、 mさんは終電に余裕があるとかで夕食も京都駅で御一緒することになる。 九時過ぎくらいに解散。

今日思ったこと二つ。
(1)Nさんは流石に王子の貫禄。
(2)危ない、、、もうちょっとで負ける所だった。偉いぞ自分(謎)。

深夜は明日のゼミの準備の予定。


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