有益な環境側面(2016年調査結果)

16.05.30
「有益な環境側面」とか「プラスの環境側面」なんて言葉を覚えていらっしゃるだろうか?
そんな言葉聞いたことがないとか、ああ、そんなアホを語っていた人もいたね、なんて言ってくれればうれしい。

ワカラン
ワカラン
しかし現実にはいまだにそういう非論理的な論理に惑わされ、あるいは審査員にいじめられている人がいるのだ。 もちろんその前段として非論理的なことを語る審査員がいて、間違えたことを教える審査員研修機関があるということが問題なのである。
そもそもISO14001規格には過去から「有益な環境側面」なんてものは書いてないし、そんな発想もない。だって環境側面とは有益な影響も有害な影響も出入れするというか関わるものであって、有益な側面からは有益な環境影響だけ発生するなんて考える人はISO規格をまったく理解していないのである。

どうでもよいこと: ところで有益とはだれにとって有益なのだろうか?
得をする人がいれば損をする人があり、貿易黒字の国があれば貿易赤字の国が存在しなければならない。還元性大気であった地球を酸化性大気にしたストロマイトは後々の生物からは大恩人であるが、それ以前の嫌気性生物から見れば凶悪な殺戮者であった。
有益な環境側面とはある視点から見たものであり、別の視点から見れば有害な側面になるのだろうか?
そう考えただけで、有益/有害という論理が破たんしていることは明白である。
まあ、そんなことに気が付きもせずに語っているのだろうけど・・・

ところが実際にはその辺に転がっている審査員だけでなく、某認証機関の社長とか審査員登録機関のえらいさんの中にも「有益な環境側面ガー」なんて語る人もいるので、我々企業のISO担当者は恐るべき状況にある。
そんな不条理というか低レベルな世界で頑張っていらっしゃるみなさんの苦労は大変だと同情する。いや、私も長年そんな世界で糊口をしのいできましたので、私も同情されなければならない。
ともかくそのような誤った考え、間違えた論理は21世紀も6分の1が過ぎた今では消え去ったのであろうか?
私は2012年、そして2014年に日本の認証機関、審査員研修機関の「有益な環境側面についての見解」がどうであるのか調べたことがある。前回から2年たったのでこのたび改めて調査した。
過去に調査したときは二晩かけた記憶がある。今回は1日つぶしただけで済んだ。
なぜか?
理由は簡単である。認証機関も審査員研修機関もドンドンと減ってきていて、以前よりも調査対象が大きく減ったのだ。それがうれしいことなのか、悲しい事なのか、それはともかくそれが現実である。
では前振りは終わって本題に進む。

■調査方法
過去2回と同じく、googleで「有益+環境側面」で各機関のウェブサイト内の検索を行った。
調査対象はJABからEMSの認定を受けている認証機関すべて、及びCEARから承認されている審査員研修機関すべてである。
ノンジャブも調べろという声があるかもしれないが、実はノンジャブのほうがISO規格の理解がまっとうで「有益な環境側面」なんて語っているところはないのだ。

■判断基準
現時点でトップページからたどれるhtmlのページ及びpdfその他のファイル、並びに2015年以降の広告、広報誌その他に「有益な環境側面がある」旨の記述があるもの。

 注:「プラスの環境側面」も「有益な環境側面」と同等とみなした。

■結果
1.認証機関
2016年5月27日現在、JAB認定のEMS認証機関は40機関である。
このうち2015年以降において有益な環境側面があると記載したコンテンツがウェブ上にある認証機関は2機関、それ以前の日付の資料において有益な側面があるとしているコンテンツが存在したのは5機関であった。
2014年以前のコンテンツであって、特にそれが過去に広報した資料などの場合修正は不可であろうが、そういった表現は間違いであった旨の説明がないのはやはりまずいのではないかと考える。あるいは当該機関においては現時点ではそれが不適切と考えていても過去については是正しないという発想かもしれないが、やはりそれは社会的責任を全うしていないと思われる。よって無条件OKではなく△とした。

過去からの変遷は下表のようになる。

2010年
注1
2012年2014年2016年
有益な側面ある45%732
古いものが残っている(注2)155
有益な側面なし55%373333
調査件数454140


注1:
2010年はアイソス誌2010年1月号のアンケート結果を流用した。
注2:
古いものとは、調査時点以前のコンテンツに有益な環境側面があると記載しているものがあるもの、及びお客様からのお便りなどに有益な環境側面があると記載されているものも含む。
後者については特段の意図はなく、種類分けが増えるのを嫌っただけである。

調査年によって対象件数が異なるために、比較のためにパーセントを取ったのが次である。

2010年2012年2014年2016年
有益な側面ある45%16%7%5%
古いものが残っている2%12%10%
有益な側面なし55%82%81%85%

これをグラフにしたものが次の通り。
有益な側面があると考える認証機関

有益な環境側面があると語っている認証機関は年ともに減少してきている。しかしいまだに「ある」と語っているところもあるのに驚く。このような認証機関に対してアドバイスとか指導を行う仕組みはないのだろうか。

2.審査員研修機関
まず驚いたことがある。研修機関の数が大幅に減った。4年前10社、2年前7社あったのが、今は4社である。審査員研修機関連絡協議会(JATA)にはいまだ13社の会員会社があるが、他はQMSなどの研修機関である。
ところがLMJはCEAR承認を返上しているがIRCA認定のISO14001審査員研修コースは維持しているのを見ると、CEAR承認はいらないということなのだろうか。ということは今後はCEAR登録の審査員は減る一方でやがては全員がIRCA登録者になるのか? 以前からJCQAやLRQAの審査員はCEARでなくIRCA登録だったが、グローバル化が進んだとみるべきなのだろうか。情報を持ちの方いらっしゃいましたら教えてください。
それはさておき、審査員研修機関についても認証機関同様にウェブサイトの全検索を行った。
またまた驚いた。有益な環境側面がありそれを教えるとウェブサイトに明記していたのは3社あった。数が少ないからパーセント表示は不適ではあるが、全体の75%である。

有益な側面があると考える審査員研修機関

上図は縦軸が割合であり、図を見ると有益な側面を教える研修機関が増えているように見える。
下図は縦軸を研修機関数で示したもので、これを見ると有益な側面を教えている研修機関も絶対数は減少していること、それにもまして研修機関数が大きく減少していることがわかる。

有益な側面を教える研修機関
注:
アイソス誌2010年のアンケートでは、審査員研修機関に対して有益な環境側面があるか否かという調査を行っていない。
2016年調査結果では、有益な側面がないという研修機関が壊滅したが、これは解釈が変わったというよりも、前回調査で有益な側面があるというコンテンツがなかった研修機関のすべてが承認を返上した結果である。
前述したようにこの変化がどのような原因やいきさつなのかは皆目わからない。

懸念されることは、現在事業を行っている有益な環境側面があると考えている審査員研修機関で教えられた審査員は、実務についたのちにはどのような審査を行うのであろうか? まあ最近は受講者のレベルが向上しているから審査員研修で惑わされることなく、まっとうな規格解釈をするであろうと期待する。
いや、ゆくゆくCEAR登録審査員が消滅し、IRCA登録者だけになると状況は変わるだろう。

■考察
今回の調査結果、「有益な環境側面」という考えは、いまだ守備ラインを割らず、頑強に(頑迷に)抵抗を続けている。なぜいまだに「有益な環境側面」という発想がなくならないのだろうか。いや、そのような間違ったことを発現する人を諫めないのはなぜなのだろう。一体だれの責任なのだろうか?
聞くところによれば認定審査員が陪席した認証審査において、認定審査員が認証審査員に対して「有益な環境側面に言及していないのは不適合である」と発言したとそこにいた企業担当者から聞いたこともある。ということは認定機関は「有益な環境側面」が存在していると考えているのだろうか。いや認定審査においては規格解釈には踏み込まないはずだから聞いた人になにか誤解があったのかもしれない。ともかくこの問題はなにが原因なのか、なぜ是正がかからないのか、私にはわからない。
ウェブサイトに堂々と「有益な環境側面についても審査をします」とか「有益な環境側面についても教えます」と明記しているにもかかわらず、ISO関係者がそれを問題にしていないというのも異常だろう。まあ、それが現実である。
2015年に規格の大幅改定があった。これで変わるのかどうかと考えると、パフォーマンス向上を見るという方向に舵を切ったようだから、規格の文言とか本来の意図とかかわりなく、パフォーマンス向上を錦の御旗として「有益な環境側面ガー」という声が再び盛り返すような気がするのは私だけだろうか?
そもそもISO認証で環境パフォーマンスを向上させるなんて理屈に合わない。認証審査は指導ではなく審査なのだ。審査員が上から目線で指導するのだという意識(認識)を持っている限り認証の信頼性は向上しないだろう。そして実際に指導できる力量もないのにそんな意識を持つのは犯罪でもあり恥でもあろう。

■以下、調査結果
  1. 認証機関
    すべて2016.05.27〜29アクセス及びサイト内検索にて確認済
    認証機関名称有益な側面の言及2016年の内容備考
    2012年2014年 2016年
    日本規格協会審査登録事業部(JSA) なし なし なし  
    日本検査キューエイ株式会社(JICQA) なし なし なし  
    日本化学キューエイ株式会社(JCQA) なし なし なし  
    日本ガス機器検査協会 QAセンター(JIA-QA Center) なし なし なし  
    日本海事協会(ClassNK) なし なし なし  
    日本海事検定キューエイ株式会社(NKKKQA) なし なし なし  
    高圧ガス保安協会(KHK) なし なし なし  
    日本科学技術連盟 ISO審査登録センター(JUSE) あり なし なし  
    日本品質保証機構(JQA) なし なし なし  
    日本電子部品信頼性センター(RCJ) なし → → 2013年認定辞退
    SGSジャパン(SGS) なし なし なし  
    電気安全環境研究所(JET) なし なし なし  
    日本能率協会(JMA) あり △ なし  
    建材試験センター(JTCCM) なし なし なし    
    ロイド レジスター クオリティ アシュアランス リミテッド(LRQA) なし なし なし    
    日本エルピーガス機器検査協会(LIA) なし なし なし    
    日本建築センター(BCJ) あり △ △ 2007年、2008年、2009年  
    DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン(DNV) なし なし なし    
    日本自動車研究所認証センター(JARI-RB) あり あり △ 2009年から2013年の資料  
    日本環境認証機構(JACO) あり △ △ 2008年、2010年、2016は顧客の声にある。  
    三重県環境保全事業団(MEC) なし △ △ 資料あり 略称は元MEC
    防衛基盤整備協会(BSK) なし なし なし    
    マネジメントシステム評価センター(MSA) なし なし なし   略称は元MSAC
    ペリー ジョンソン レジストラー インク(PJR) なし なし なし    
    日本燃焼機器検査協会(JHIA) なし なし なし    
    ベターリビングシステム(BL-QA) あり △ △ 2014年以前の資料に多数あり  
    ドイツ品質システム認証株式会社 ? なし なし   2015年UL DQS JapanからDQS Japanへ社名変更
    発電設備技術検査協会(JAPEIC) なし なし なし    
    岐阜県公衆衛生検査センター(GRCA) なし → →   2013年認定辞退
    国際規格認証機構(OISC) なし なし なし    
    国際システム審査(ISA) なし なし なし    
    エイエスアール(ASR) なし なし あり 2015年資料であるとは断定していないが、説明において是認している。  
    BSIグループジャパン(BSI-J) なし なし なし    
    トーマツ審査評価機構(Deloitte-TECO) なし なし なし    
    アイエムジェー(IMJ) なし なし なし    
    ジェイーヴァック(J-VAC) なし なし なし    
    ビューローベリタスジャパン(BV) なし なし なし    
    和歌山リサーチラボ(WRL-ISO CENTER) なし なし →   2014年認定辞退
    ISO審査登録機構(RB-ISO) なし ? なし    
    国際規格審査センター(ISM) なし → →   2014年認定辞退
    テュフ・ラインランド・ジャパン(TUV Rheinland Japan Ltd.) なし なし なし    
    北日本認証サービス(NJCS) なし あり なし    
    日本審査機構(JAO) なし なし →   2015年認定取り消し
    AUDIX Registrars (AUDIX) あり あり あり 資料他  
    インターテック・サーティフィケーション(Intertec) なし なし なし 元ムーディー・インターナショナル・サーティフィケーション(MIC)


  2. CEAR承認 EMS研修コース審査員研修機関
    すべて2016.05.27〜29アクセス及びサイト内検索にて確認済

    研修機関名称有益な側面の言及2016年の内容備考
    2012年2014年2016年
    (株)テクノファ(TF) あり あり あり 「わかりやすい環境側面と影響評価」セミナー
    (株)日本環境認証機構(JACO) △ △ △ 2008年、2010年のコンテンツにおいて「有益な環境側面」と記したものが現在もアップされている。
    過去のものの修正までは手が回らなかったのか?
    (株)グローバルテクノ(GTC) あり あり あり EMSステップアップコース
    (株)LMJジャパン(LMJ) △ なし → 2016年
    承認返上
    中部産業連盟(CHU-SAN-REN ISO) あり あり → 2015年
    承認返上
    日本科学技術連盟(JUSE) あり → → 2013年
    承認返上
    日本能率協会 ISO研修事業部(JMA) あり あり あり ISO14001審査員研修コース
    日本海事検定キューエイ(NKKKQA ISO‐SC) なし → → 2012年
    承認辞退
    品質保証総合研究所(JQAI) あり → → 2014年
    承認返上
    法政大学 環境センター(CEI) あり なし → 2014年
    承認返上

    注1:
    「あり」でピンクの個所は機関として「有益な側面があるとみなしている機関」であり、黄色の個所は2014年以前のコンテンツにおいて「有益な側面」について記している機関である。
    注2:
    「承認返上」「承認辞退」とはJABのウェブサイトの記述のまま。差異は不明。


うそ800 本日のまとめ
審査員物語のようなお話を書くのは、音楽を聴きながらの片手間仕事で30分もあれば完了するのですが、このようなデータを取る仕事は時間がかかります。今回は認証機関も審査員研修機関も大幅に減少したという僥倖(?)はありましたが、それでも結構な時間がかかりました。
さて、今回の調査結果はみなさまの予測通りというか、ご期待通りだったでしょうか?
少しは状況が改善されたとも思えますし、ちっとも変っていないとも思えます。「有益な環境側面」なんて審査の場で要求されるようでは日本のISOは良くならないでしょう。
ちなみに偉大なる寺田大先生は、10年も前から「環境側面に有益も有害もない」と看破してらっしゃいましたけど・・
そういえば何年か前に 大英帝国国旗 イギリスの工場でISO認証の責任者だった知り合いに、「イギリスでも有益な側面なんて考えがあるのかい?」と聞いたら、「なんだ、それ?」と笑われたことがあった。
誤った規格解釈を正すのも、ISOに関わる我々の責任である。多勢に無勢であろうと努力しなければならない。他人にうそをつくことはできても、己にうそはつけないのだから。



名古屋鶏様からお便りを頂きました(2016.05.30)
有益な環境側面は、認証機関やコンサルタントにとって「有益」かもしれませんが、それで利益が出るでなし。
まあ、他に語れるモノがないということでしょうね。

名古屋鶏さん、毎度ありがとうございます。
他に語れるモノが無い

そりゃ本当に省エネするとか廃棄物を減らすなんてことは設計とか流通とかサプライチェーンの上流まで知ってなきゃできませんよ。
それを知らずして環境をよくする方法を教えようなんてバチがあたります。

akijapan様からお便りを頂きました(2016.05.31)
おばQさま
ご無沙汰しております。
5/19〜20第2回定期監査を終了し、ISO14001:2004返上のための最終営業的確認をしています。営業部門へお任せですけれど。
きちんと取引契約も取り交わさないお客様がいますが通常はISOなんてなくても問題の無い風潮になってきていますね。こちらのブログやお仲間の功績でしょうね!?

akijapan様 毎度ありがとうございます。
始めるのは簡単だけど止めるのは難しいというのはすべてに共通のようです。ISOも認証するのは簡単だけど止めるのは難しい。
いつも講釈を語っている私ですが、ISO認証返上をしたのは自分自身ではただの1度しかありません。指導していた会社とか工場でも海外の工場が2件、国内が3件くらいだったかと思います。
まず認証機関に電話して「ISO認証を止めます」というと、認証機関が「なにかご不満がありましたか?」「よそに鞍替えするのですか?」「費用でしたら話し合いをしたいのですが」とか、もうやくざが足を洗うよりもめんどくさいですわ。
止めるというとあっというまに改善ができるなら以前からしてくれたらいいのにとか、鞍替えを止めるのに値引きするなら鞍替えしないときでも安くしてくれたらよかったのにとか、まあ、ばかばかしくてやってられませんねえ〜
おっと、akijapan様のほうは順調のようで頑張ってください。これで年間費用100万とか浮けば特別ボーナスくらいは??
ISO認証コンサルという存在があるのだから、ISO辞退コンサルというのは商売にならないか?


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