BOOK BAR 4 > 本 > パピヨン仕立てかがり製本


パピヨン仕立てというのは栃折久美子氏考案の製本法。本文の折を糸でかがって背をかため、開きやすく読みやすくて本にとっても優しいという大基本をおさえながら表紙はいろいろ好きにできる方法。

製本なんて、本文をバサッと裁ち切りノリやボンドでべとべとにくっつけて束にすればいいと思っているひとには、パピヨン仕立ての本の柔らかさや優しさ、そして楽しさは驚きかも。

超男性 A . ジャリ(白水社1989)

表紙

波型の透明アクリル板をつかい、見返しのNTラシャ100kの黄がそのまま見えるようにした。背の部分はブルーの綿布で、アクリル板との貼り合わせた境目に茶色の革ひもを埋める。
この方法は結構気に入っているんだが、アクリル板と見返しの紙を貼り合わせるベストな接着剤がまだ見つかっていない。なにかいいの、ないでしょうか。
大好きなジャリの本なので、何度もこれからも読むことを前提に頑丈に。機械に愛された人間は、単なる環境への適応のために未来の最初の人間となる...という超男性っぽくクリアーな感じで。

HMV フリーペーパー(1994 Aug-Sep 〜1995 Aug-Sep)

表紙
タイトル
見返し
花ぎれ

ビニール素材の黒
ルミナカラー135kの+オフメタル105kの銀にHMVの袋をモノコピー
ルミナカラー135kのぼたん
綿糸で派手派手の本格派三段編みをしてつける。ちょうどパッセ・カルトンしていた本の作業が花ぎれにかかったときだったので、練習を兼ねて遊んでみた。普通は絹糸で編むが、こういう遊びのときはワイルドにコットンでやるほうが合う。
某フリーペーパー1冊を一折として好きな号だけ合わせて12折で合本。好きなバンドなどがインディーズ時代に取り上げられていたりする号は、なんとなく捨てがたくてたまってしまうものだ。フリーペーパーらしさを残しながら残っている号だけ集めて合本する楽しみ。

骰子一擲 S . マラルメ(思潮社1991)

表紙
タイトル
見返し
花ぎれ

濃赤の半革装、紙は土壁のような凹凸が感じられる青系のもの
金箔押し
ベルクール90kグレー
残っていた端革の緑
*タイトルは初めてやった箔押しのため、小さな別の革に押したものをうすくすいて本体に貼りつけてある
本文は原書に似せたレイアウトで雰囲気をだそうという努力が見えるが、装幀はそうとう陳腐。原書とのこうしたギャップは、マクルーハンの『メディアはマッサージである』の邦訳版と争う。製本アトリエでのカリキュラムのなか(パピヨン半革装)で制作。

kosmos ゴンブロビッチ(恒文社 東欧の文学 1967)

表紙
タイトル
見返し
花ぎれ

濃紺の薄手コットン。「突き刺す」イメージでアクリルの棒を埋め込む
エドワーズストライプ200kのシルバー+NKファイバーの青にIBMの古いワープロの書体
ベルクール70k、赤茶。ポーランドの大地の色
表紙の棒の色に合わせてピンク
*ワープロの書体もいいものがありました...。
世界●●全集の一つで装幀が古臭い。全集を棚に並べる趣味はないのでこの一冊だけ買い、『コスモス』らしく「つきさすもの....」を取り入れて作り直した。『骰子一擲』同様にカリキュラム(パピヨン布装)のなかで制作。

明るい部屋 ロラン・バルト(みすず書房1985)

表紙

黒の厚めのクロス布。もともとのタイトルの文字組がきれいだったのでその部分をそのまま使い、その上にグリーンのオーガンジーを被せて窓辺的表情を出す。スクェアな本に化繊を用いるのは困難、アトリエの講師陣の知恵を大拝借。
装丁しなおすときはもともとの表紙も折り込んでかがる。この本はもともときれいなシルバーの表紙だったので、見返しはベルクール75kの黒で抑える。『コスモス』同様にカリキュラム(パピヨン布装)のなかで制作。

ジャリ詩集 A . ジャリ(思潮社「セリ・ポエティック4」1969)

表紙

Tシャツプリント式で、表紙から背、全体を原寸につくって(タイトルも)カラー出力したものを白のコットンに転写して使用。jarry自ら作ったubu(ユビュ)人形をスキャンして加工したものと、jarryの流れをくむウリポの資料から構成。紙でもいいけど布でやってみたかった。
たまたま通りかかった百貨店の通路で古本即売会をしていて、ぱっと目に飛び込んだ。縁のある本はそっちから向かってくる...。これを作った98年頃のTシャツプリントのインクはもりもりしていてちょっと厚みがあった。当時としては苦心の作。

憑かれた人 アラン・ナース(元々社、最新科学小説全集8 1956)

表紙

MBSテックのオレンジ。「憑かれたヒト」を描き、カラー出力したものを貼った
タイトルはオリジナルの書体があまりにも美しい活字だったので(ルビつき)それをそのまま版下にしてゴム印をつくり、アクリル絵の具でおす。このゴム印、まだ残ってますので「憑かれた人」がいたら貸しますケド....。
古本屋で見つけた。タイトルも奇抜だし、中のイラストも劇的でかっこいいが、表紙も箱もぼろぼろ、本文紙も黄ばんでいたので装幀しなおす