カーミングシグナル
犬とオオカミの生命保証
Turid Rugaas

カーミングシグナル◇攻撃やストレス恐怖等自分の望まないことに対する遮断と予防 信頼の確立と安全の確保そして何より自分を理解してもらうこと


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“カットオフ(遮断)"のシグナルはオオカミが攻撃の遮断として使い、それは直前まで迫った争いの問題解決につながっています。オオカミの研究者達は、このシグナルについてはかなり昔から知っていましたし、1950年代には記述されていたのです。ところが、犬とオオカミは異なった能力と社会性があるものと思われていたのでしょう。犬関係の人々はこの生命にもかかわる重要な能力には関心を持ちませんでした。実は犬にもオオカミと同じ能力はあり、むしろ犬の方が多くのシグナルを持っています。オオカミがハッキリと懸命にシグナルを出す状況では、今日の犬にとってそれほど危険は感じないかもしれません。よってより多くの微妙なシグナルを使うことができるのです。

1年に1000頭以上の犬の観測を10年間続けてきて分かったことは、犬はその祖先であるオオカミから“カットオフ(遮断)”のシグナルを確実に受け継ぎ、日常のあらゆる状況において、犬独自のシグナルに形を変える等して使っていることが分かりました。犬は様々な小さなシグナルをちらりと連続して見せることがよくあります。これを全て見つけるには経験が必要となってきますが、はっきりしているものも多いので、努力をすれば見えてきます。

犬は独自のランゲージを持ち続けることにより、お互いを理解しコミュニケーションを取り合っています。そして同じランゲージで我々人間や他の動物までも理解します。人間と犬との間の理解の相違が生じる多くの理由は、このランゲージに問題があります。我々が犬をより理解しシグナルを読み取ることにより、問題の事前解決が可能になります。また、犬のランゲージを人間が使うことで、自分の犬や他の犬のストレスや恐怖、攻撃性を避けることができるようになるのです。

この犬のランゲージの観察を始め、理解してくると、犬を見るたびにすぐ分かるようになります。そして自分の犬が本当は何を伝えようとしているのか理解でき、より正確な対処が出来るようになるでしょう。(犬の立場から考えられるようになるのです。)また、犬が不安、疲れた、集中力がなくなった、或いは命令が理解できない等のシグナルを出しますので、トレーニングもやり易くなります。

犬が自分を守る体勢になり、それが攻撃の行動になるのを、カーミングシグナルで抑えることが出来ます。また恐怖心を持った犬に自分は信頼できる人間と思わせたり、犬のストレスを取り除くことができます。

シグナルを知り、それぞれの意味を理解して、自分でも使うことができる様になれば、犬を勉強する上で最高の学習となるでしょう。そして犬が伝えようとしていることを真に理解するのですから犬の最高の友達となることができます。

このシグナルは訓練のスケジュールを組む上でも、とても役に立ちます。例えば色々な施設を訪問する犬は、始めは怖かったものを受け入れる様に少しずつ訓練するのですが、その時このシグナルの大きさを確認しながら少しずつ進めていけば、犬が最悪の状態にならずにすむのです。

犬とはとても素早い動きの動物であり、その動きに我々人間が競うことなど到底不可能です。しかし、今よりもう少し早く状況を把握することを学習できますし、それによって常に主導権を握ることが出来るのです。

これらが私の過去において、この国で最も臆病な犬や攻撃性のある犬を扱っても1回以上咬まれたことのない理由といえます。今、既に犬に対する独自の観察力があるのでしたら、このシグナルは必要ないのかもしれません。ただ‥‥その1回咬まれたのは私自信のミスだったことを付け加えておきましょうか。((2)につづく)

翻訳:金子真弓、 監修:山崎恵子
資料提供:アニマルファンスィアーズクラブ(AFC)
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