ART織田の


週末画廊日記


8月25日

坂本典子@久我記念


DMより。部分

坂本典子さんは先々月お亡くなりになったということだった。
癌という病をおしての製作中、個展の開催を見ることなく他界された。
開催によせての坂本さんの文章の一部が印象的だった。確かこんな感じだった。
「・・・私はこれまで、経験の積み重ねを作品にしてきた。しかし今はこれまでのことはあまり重要では思えなくなってきた。これからおこること、未来のことが最大の関心事だ。そして今、このひと時を大切にしたいと思う・・・」
そして、私も、これを読むあなた方も、死に行く人間に他ならない。その終わりを意識した時に始めて人生はリアルなものになる。創作のない我々に、人生が意味するものは何だろうか。この作品は、終わりの時が刻々と迫っているような、また、何かに溶け込み、あるいは地下深くに落下していくような重さに満ちている。そしてまた、高飛び込みの目眩がするような美しさがある。展示では布に書かれたこの連作が、部屋の入り口から幾枚も垂らされ、カタツムリの殻のような形を成していた。最後は細く行き止まる状態で、完全に体が作品に包まれる。僕はここで一度死んだ。そして展示場を思い出す今、「リアル」を模索していこうと思う。


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