ART織田の


週末画廊日記


10月26日

仙頭利通@画椰。虫の目

忘れるわけがない。これは巨大な「おしべ」である。まあ、間違いはないだろう。農学部時代、育種学実習の時間、激しく照りつける太陽のした、開花前の小麦の数ミリの「おしべ」を解剖用はさみで切り取るという、頭がくらくらするようなみみっちい作業を、すべての穂、1反くらいを、数名でやった覚えがある。次々と意識を失い倒れていく仲間を見捨てながら、育種学の険しさを覚えたのだった。
この「おしべ」はそびえ立つ大きさだ。スケールからすると、自分は蟻かあぶらむしだ。
もし自分が蟻なら、世界はぜんぜん違うだろう。体長の何倍もあるおしべ。山のような草花。超巨大生物人間。造成地は広大な砂漠。川は果てしない大洋だろう。そこには異なる空間が開けているというわけだ。
仙頭さんの独特の色彩は、さらに異なる空間を我々に提示してくれる。額の中の絵にはそれぞれ、異なる空間を旅した者の記録が、新鮮な感動として書かれている。それが伝わるところが、絵の面白いところだろうか。


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