アート織田の週末画廊日記
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2003年7月20日

タイトル: なし
作家: 足利桂子
場所: おいし


DMより

 ムルソー君は言う。
「人生が生きるに価しないことは誰でもが知っている」と。
 そう。大体において、日々と言うものは無価値に過ぎていく。悲しいくらい冗長で、石のように孤独で、笑えるくらい薄っぺらに。
 ただ、記憶だけは積もる様に無意味に重なって行く。かすれながら、切れ切れに、黄ばみながら。そして人生は、動物園の憂鬱なゴリラのように終わって行く。
 絵のタイトルは「黄砂の日」だ。記憶を、感性を、このような形で書き写すことの出来る人は、本当にすごいと思う。抜群の色使い、ぼやけ方、線である。初めて見た絵だけれど、何点かはまさに驚嘆した。
 ムルソー君はこうも言う。
「もっと速く泳げたらとか、口元が綺麗だったらとか、そんなことは意味がない」と。
 ただ、僕はこんな風に絵が書けたらとか、師匠の様に作品が書けたらとか、は思う。そうだったら良かったのに。
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