アート織田の週末画廊日記
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2004年5月1日

タイトル: 陶展
作家: 小林陽子
場所: みさき画廊


会場にて撮影

 砂漠の幻想のような作品である。作品一つで周囲を砂漠に変えてしまうような、空想力を引き出す、今回も素晴らしい作品だと思った。
 何より芽がいい。焼き尽くされてざらざらと乾燥した、夜のしじまのような、火星のような作品から、ニョキっと出てくる芽。これらが、なんのしじまなのか、希望なのかわからないが、この対比が、心を捉えてはなさないのだろうと、そう思う。
 そういえば昔、昔鳥取大学の乾地生態学で、聞いた事がある。「砂漠は肥沃な大地なのです」と。この作品の奥深くに潜んでいる肥沃さは、今芽吹き、いずれは花開くのではないだろうか。
 鳥取県岩美郡福部村では、11月に小さならっきょうの花が咲き乱れる。その時ばかりは一面砂の丘も、紫色に染まるのだ。


 アルジェから繰り返しムルソー君は言う。「もし生きたまま枯れ木の幹の中に入れられて、頭上の空にひらく花をながめるより他に仕事がなかったとしても、だんだんそれに慣れてゆくだろう・・・中略・・・よく考えてみると、私は枯れ木の中に入れられたのではない」
 一つの運命が一人の人間を選ぶ。運命は不可解で、未来は未知である。生活とは慣性であり、それで全部なのだ。ゴールデンウイークの最中、事務所で一人、電話番をしながら、つくづくそう思う。
 個展では600円の小さな、ポンペイの砂漠の遺跡から出土したような、陶製オリーブの実を買った。その出土品のような質感が、平和な安らぎのようだったのが良かった。
 「平和とは焼かれた灰の中に見出すものです」と、こっちは先生の言葉だ。

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