アート織田の週末画廊日記
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2006年12月21日

作家: 大木千波
タイトル: 幸せの瞬間
場所: 3号倉庫


会場にて撮影 (CACIO G'z One Type-R VGA by KDDI)


 一見すると、かなりSF的なクールな展示で、無機的な印象を受ける。
 几帳面にぶら下がっているのは、スライドガラスに半透明なカットバン、しかし近づくと一枚一枚に血痕が・・・。
 一瞬にしてクールな展示も、ちょいホラーで血なまぐさい、痛そうな感じがしてくる。
 がしかし、これは作り物だそうで、少々安心する。
 傷とか、血とかいうと、得意なロートレアモンな世界である。なにせ人生は傷なのだから、つめを伸ばして、皮膚を切り裂く世界である。
 そういう風に、捻じ曲がった私には、一生この展示の意味がわからないかもしれない。
 マルドロールが出てきては、幸せの意味が違ってくる。血のコレクターの幸せ、なんて書いていては、危険人物まちがいない。
 というわけで、あらためて作品の意味を考えてみる。
 だれでもの人生は傷と痛みに満ちている。ここまでは間違いない。
 問題なのは、それを絶望した個人の中に、すべて全部をきれいさっぱり飲み込んで溜め込んでいくのかどうか。それは先生のような上級者の世界である。
 そこは、誰かと分かち合うべきなのか。恋人か、家族か、友人か、他人か、相談所か、ネットか。
 キリスト教では、痛みはイエスと分かち合う。
 あるいはそんなことはどうでもいいと、ムルソー君は言う。どんなつらさにも、いずれは慣れるものだと。
 個人的には、最近またぞろムルソーな感じではある。

今日のつぶやき「どうしたキリスト教」


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