アート織田の新週末画廊日記
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2008年12月1日

作家: ソン・ジュンナン
個展タイトル: Fall Down
場所: 3号倉庫

いつもは開いている倉庫の扉が、今日はわずかに半開きになっていた。
OPENとは書かれているものの、入りづらくもある。何かあやしい感じだ。
だがしかし、今日の私はファン・ファン・ラ・チューリップの裾ボタン付き黒トラウザーに、ライク・ア・ハリケーンのぴったり黒パーカー、バックラッシュのエンジニアブーツと、全身黒であやしさでは簡単には引けをとらないつもりだ。
思い切って扉をあけると、そこには私向きなダークな世界があった。


会場にて (SoftBank 913SH (Full Face) VGA)

この距離からみると、沢山の羽虫が飛んでいるようにも見える。
しかし、これは黒い人型の紙が、黒い糸につるされているものに二つの照明があたっている展示であった。
個展のタイトルはFall Down だ。
「見ろ、人がゴミのようだ、あっはっは」
ムスカの名言が思い出される。
一つ一つの式紙は所詮紙であり、全体的に重いイメージの他はなにも残さない。この距離ではだ。
しかし、踏み出して、一枚一枚をよく見てみる。光を反射して広げられた手は、決して落ちているのではなく、厳密に言うと吊されているのだ。


(部分)会場にて (SoftBank 913SH (Full Face) VGA)

「一つの運命が一人の人間を選ぶ」
ムルソー君の世界観が思い出された。
紐の長さや、紙の剃り型、光の当たり方、細かい差は関係なく、この全体の状況のもとで、全て平等である。
とも私には思えた。

それにしても、人生は紙のように軽いのだろうか。
その軽く小さな人生がただ終わるのを待つように生きるだけなのだろか。
「そうです」とムルソー君は言う。
私同様真っ黒な紙切れは、何も答えない。


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