貧しきものにも日は降り注ぐ

 

2輪でも走れ

 ホンダ・ソロを買った。オープンカーがあるじゃないか、という考えもあった。それにどちらも居住性が悪く、人や物が運べず、とりあえず走るという以外目的が思いつかないものばかりが増殖していってどうする、とも思う。だけど、どうしても欲しかったのだ。
 原チャリで走る感覚はロードスターとまるで異なる。ロードスターは、ふんぞり返って片手運転、空を視野に入れながら、アメリカの西海岸でも流すか?って感じがする。少なくとも僕の使い方はそうだ。そのためのATだし。しかし原チャリは違う。非力なエンジンを全開にしながら、全身で冷たい風を突っ切り、前後左右に休まず目を配り、道路事情を把握しながら、車の隙間をひらりと駆け抜ける移動機械だ。空など見上げる余裕などはまったくない。
 原チャリに限らず、バイクの魅力というのは、その不安定さにあるのではないだろうか。タイヤだってクルマの半分しかついてないし、体を覆う鉄板もない。当たり前の話だが、安全性などまるでシステムとして要素にないのだ。
 気持ちもそれがわかっていて、走っている間は少し恐怖感がある。しかしそれは楽しく癖になるスリルである。と書いたところで、そうかスリルが欲しかったのかも、と思うわけだ。


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