貧しきものにも日は降り注ぐ

 

秋の夕暮れ

 夏の夕暮れが戦いの終わりの心地よさなら、秋の夕暮れは終わりの始まりである。
 秋はそもそもが心地よい。虚しい程抜けるような蒼さの高い空と、気まぐれか冗談のように優しい太陽。そして巻き込むのは、清々しい風。何もかもが心地よい秋のオープンドライブである。だから夕方は冬の訪れを予感させる、理知的で何気ない冷たさがある。しかも夜は一気に来る。だから、秋の夕暮れは怖さがある。
 すべては移ろいでいくのだろうか?人のする事は何もかも価値がないのだろうか?だったら全部戯れに過ぎないのだろうか?
 そして秋の夜は他のどの季節よりも漆黒に感じる。いくら自分に問いかけても答えなど出ない。その漆黒を巻き込みながら、ヘッドライトに照らされる間近な道を進んでいった。ただ星だけは永遠のように思えた。


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