貧しきものにも日は降り注ぐ

 

走れ!デュエット!

 あたりまえだが、映画「卒業」もすっかり古典になってしまって、「ほら、卒業でダスティン・ホフマンがさぁ」とか言っても訳わかんなかったりする。けどさぁ、まあ知らなくっても以下楽しく読んでくださいよ。別に見てくださいって訳じゃなくって。
 大学の卒業祝いにベンジャミンは親からデュエットを買ってもらう。スゲーさすがは金持ちとは思うが、ベンは無関心だ。それで退廃的にロビンソン夫人とやっちゃうんだ。そりゃーどっちも合意の上だからいいじゃんと思うが、それでは映画は始まらない。何も知らない父ちゃんから「クルマでエレーンをデートに誘ったら?」とロビンソン夫人の娘とくっつけられる。ここでも無関心のベンはエレーンをストリップ小屋に連れて行き、ぶち壊しを図るのだが、泣き出すエレーンにグッときて惚れてしまう。ここでエレーン1本に絞ろうとするベン。阻止する夫人。ベンの非道ぶりにあきれて結婚に流れるエレーン。3人の思惑はエレーンの結婚式へともつれ込む・・・。と映画解説はともかく。
 原作ではエレーンを追うベンの資金として売られるクルマも、映画では大きな機動力として扱われる。実家のある南カリフォルニアからエレーンのいるバークレー(サンフランシスコの近く)まで500マイルを越えるのでは?大学から戻って、実家で結婚を知らされ、バークレーまでエレーンを探すがも時遅く、ロスから100マイル北のサンタバーバラへとんぼ返り。そらガソリンもなくなるわな。デュエットも走りっぱなし。そんな大活躍を支える忠実な僕(しもべ)を最後は置き去りだけど、クルマは人を応援しますって感じ?愛するもののために突っ走るという、走れメロス的な感動を呼び起こすものだなぁと思うわけだ。
 高校の頃はベストな作品と思えた卒業も、そんな健気なデュエットを映画の内容より評価してしまう私。オレも走るぜって、何のため?


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