貧しきものにも日は降り注ぐ

 

ジェームス・ディーンの550

先日(といっても結構前だが、)映画「理由なき反抗」を見た。
ディーン演じるジムは別に悪人というわけではないのだが、話は悪いほうへ悪いほうへと流れていく。売られた喧嘩をつい買ってしまい、崖っぷちに向かって車を飛ばし、どちらがより手前で飛び降りるかを競うチキンレースをする羽目になる。喧嘩を打った相手は脱出に失敗し死亡。警察に自首しようとするジムに、死んだ奴の仲間が襲い掛かる。
家族との葛藤、恋、友情、複雑に絡み合い物語りはラストシーンへと進む。
この映画のラストシーンはとても好きだ。中でもジムの寂しがりやの友人プレイトーのセリフ
「世界の終わりはいつやってくる?明け方だ」
そしてプレイトーは明け方に警察に打たれて死ぬ。あわててちぐはぐに履いた靴下を見てジムは泣きながら笑い出す。
ジェームス・ディーンの3本の映画のうち、「理由なき反抗」のみ、死が明確に描かれる。そしてもっとも演技の迫真さを実感したのがこの映画だ。逆にはまりすぎと言う印象まで受ける。

そしてジェームス・ディーン本人は後にポルシェ550スパイダーで命を落とす。ていうか私は「ポルシェは人生に幕を下ろすべく疾走した」と感じられる。決してジェームス・ディーンは安全運転をしていたわけではないのだ。なぜ左折するフォードを前に止まれなかったのか。避けきれなかったのか。
私には「理由なき反抗」とポルシェ550スパイダーは、どちらも舞台装置のように思えて仕方ない。果たしてジェームス・ディーンはポルシェのコックピットで、笑い出しはしなかっただろうか?


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