貧しきものにも日は降り注ぐ

 

気合を見せてオープンで

 オープンカーとは冬の乗り物である。寒そうだから止めとけなんて言わないでほしい。寒風を突っ切ってこそのオープンエアだ。春秋は楽しみではあるが、冬こそ本番、見せ所なのだ。
 こっちは何も好き好んで、布製のトップのクルマに乗っているんだ。面目ってもんがある。こいつはBピラーの付いた4ドアの旦那グルマじゃないんだ。快適な移動のために買ったクルマじゃないし。ぬくぬくとなんかしてらんねーんだよ!ってな具合だ。
 それに天神行って見てみなよ。女子高生もOLさんも、クソ寒いのにミニスカートだ。コートの前を開けてさぁ。似たようなもんだろ?気合ですよ気合。
 というわけで、画廊も美術館も閉まっていたので、幌を全開にして、信号もない新道、博多埠頭<=人工島=>志賀島を爆走してきました。
 冬の海を左手に見ながら、志賀島を一周した。あまりの気合のため、前方の車は道を譲ってくれる。そう、馬鹿にはかかわらん方がいいってわけだ。志賀島を抜けて復路にかかると、前方に見たのは何とイスヅ・べレット!。追撃をかわそうと、野太い音をさらに響かせていた。オレンジに黒のストライプという事は、確かGT−R。120hp/sならほぼ互角。が、こちらには10年という年式の分がある。スロットルを開け、追い越し車線から猛然とまくった。冬の空気が滝のようにコックピットに流れ込んでくる。その寒風に混じるようにソレックス×2のうなりが聞こえた。こいつにはこいつの気合があるってわけだ。
 抜くには惜しい、綺麗なべレットだった。
 俺はそのままドアミラーにベレットを捉えた。次第に小さくなっていく、4灯の精悍なマスクはその信条を語っていた。
 そして冬のおだやかな日差しの下、2台の排気音は未開の荒涼な埋立地に飲み込まれていった。2003年まであと2日と少々を残すのみである。


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