貧しきものにも日は降り注ぐ

 

速度(スピード)

 やはり冬のオープンは気持ちがいい。冬特有のあたたかみのある日差し、冷たく軽い空気と針葉樹の甘い香り、黒く厚い雲、すべてが気持ちいい。「貧しい者にも日は降り注ぐ」という気持ちが実感として伝わってくるのはこういう日だ。
 ところで、走りこんでくると、季節を楽しむ反面、スピードに飲まれたいという気持ちも出てくる。そういう時、欲しくなるのはスピーダーである。
 スピーダー・・。僕の欲しいのはこいつ↑↑だ。こいつとはケータハム・スーパー7さん。グレードはいろいろあるが、170馬力くらいのやつがいい。
 で思い出すのがトレーシー・チャップマン(古っ)ってなんでやねん。
 そう、でトレーシー・チャップマンの歌「ファースト・カー」の話。
 歌の内容は、仕事が長続きせず、どうしようもない男を、恋人が慰める話。「仕事はまた見つかるわよ。それより、友達と遊んだりして、気分を治してね。それにあなた、速いクルマを持ってるでしょ。前に乗ったわね。私はスピードに酔いしれて、私はあなたの肩によりかかり、もしかしたらもっと別の人間になれるような気がしたわ」ってそんな内容。
 僕はこの「スピードに酔いしれて」が欲しいときがあるわけだ。
 もし歌の通りしたいのだったら、RX−7あたりがお勧めだが、僕はこの超7がいい。
 まあ、超7のフルバケットシートじゃ、決してロマンチックじゃないし、それに写真のようなフロントスクリーンじゃ、思考すらできんだろうけど、スピードの持つ緊張感というより恐怖感をしっかり味あわせてほしい。あの景色が狭まる感覚というよりブラックアウトする感覚が欲しい。しかもオープンというよりカラダむき出しで。
 そうでないと、トレーシー・チャップマンの、あのどろくさい退廃を感じるスピードを感じられないから。
 そう、僕の言うスピードはメーターで計るものでも、「はい、220キロ」とプレゼントされるものでもない。風圧に耐えながら、恐怖と戦いながら、直線の彼方に、やっと見つける事の出来るあたたかさである。それを手にするには、こいつはもっともいいツールだと、僕は思う。
 とはいえ、安全運転だよね。あと1点残しだし。


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