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ディープスペースナイン エピソードガイド
第156話「予期せぬ亡命者」
Treachery, Faith and the Great River

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・イントロダクション
うつぶせになっているキラ。「うーん、もっと下。もっと。もう少し。」 目を閉じ、肩を出している。
オドー:「効いてますか?」
「ああ…うーん。」
オドーは両手を液体状に変え、キラの背中をマッサージしていた。「これでさすがのあなたも思い知ったでしょう。」
キラ:「何を?」
「可変種相手に決してスプリングボールをしないことです。」
笑うキラ。「よーくわかった。でも次は一ゲームも落とさないつもりだから、覚悟してね。」
オドー:「だったらバックハンドを覚えることです。」
「そうね。今はただこのまま 2、3時間ぐっすり眠りたい。うっ、あ…効くー。」
「ゆっくりお休みを。あなたが目覚める頃には、私も戻っています。」
「戻るって、でかけるの?」
「実は今朝ガル・ルソル※1から暗号通信を受け取りまして。」
起きあがるキラ。オドーは手を固形に戻す。
キラ:「ガル・ルソル? カーデシアがドミニオンに加わった時、処刑されたはずじゃ。」
オドー:「どうやらその情報は間違っていたようです。ルソルが会いたいと言ってきました。」
「なぜ?」
「わかりません。ですが彼は最も信頼できる情報屋です。」
「昔の話でしょ? 実は死んでいて暗号通信は偽物かも。」
「それも考えました。だが真偽を確かめたい。恩義がありますから。」
「同行しましょうか?」
「独りで来いという指示です。」 キラの肩に触れるオドー。「心配ありませんよ、ネリス。十分警戒します。」
「誰が心配なんか。これで留守中に、バックハンドの特訓ができるわ。」

プロムナードでは、そこら中にケーブルが入り乱れている。
作業しているオブライエンに話すクワーク。「チーフ! 一体いつまでプロムナードを閉めとく気だよう。店はガラガラ、ウェイターはブラブラ、儲けはゼロ。」
オブライエン:「邪魔するな、クワーク。プラズマコネクターを口に突っ込むぞ。」
「俺を脅す気か?」
ノーグ※2も手伝っている。「これでも急いでやってるんですよ。」
クワーク:「プロムナード商店協会の代表として、シスコ大佐に正式な抗議をしてやるぞう。」
シスコ:「文書で頼むぞ、クワーク。」 いつの間にか来ていた。
「パッドを探しとく。」 離れるクワーク。
「で? どれぐらいかかる、チーフ。」
オブライエン:「…まあ、今日中には何とか開けられると。」
「プロムナードのことではなくてディファイアントのことだよ。重力制御ネットの修理はいつ終わる。この前ブリッジに入ったら、10キロも重く感じたよ。」
「修理は当分お預けです。」
「どれぐらいかかる。」
「3週間。重力量子安定機※3を交換しないと。」
「3日で直せ。すぐディファイアントを、パトロールに復帰させるつもりだ。重力の変動でこれ以上クルーたちに気持ちの悪い思いをさせたくない。」
「ですが新しい安定機を入手するのに 3週間はかかると、セクターの補給担当が。」
「それはそっちの問題だ。これから会議でベイジョーに出発する。私が戻るまでに、必ず修理を終えておくようにな。わかったかね、チーフ。」
「はい。」
「よし。」 歩いていくシスコ。
2人の話を聞いていたノーグ。「疑うわけじゃありません、たった 3日でどうやってディファイアントを修理するんです?」
オブライエン:「不可能だ。」
「その取引相手の補給担当ですが、名前は?」
「ああ、確か…チーフ…チーフ・ウィルビー。」
「ファーストネームは?」
「知るか。」
「結婚は?」
「結婚? それと装置を揃えてもらうことと、どう関係あるんだ。」
「大ありですよ。彼には毎日何百という注文が舞い込んでるはずでしょう? 全てに対応するのは無理だから、順番待ちリストに載せるわけです。」
「そりゃあそうだろうな。俺だって同じことをする。」
「だから、要はどうやって自分をリストのトップにしてもらうかですよ。一番の近道は、彼といい関係を作ることです。だから、奥さんや子供たちの名前を調べて、好みの食べ物を聞き出すんです。」
「ウィルビーと親しい関係を築いてる暇なんてあるか。」
「ああ…じゃあ、僕が。僕が代わりに安定機を手に入れますよ。」
「3日で?」
「僕にお任せ下さい。」
「…いいだろう。だが余計なことはするなよ。」
「チーフ、こう制約があっては変なことはできません。」
「とにかくだ、艦隊の裁判にかけられることだけはするなよ。」
笑うノーグ。「なるべく。」
「ノーグ!」
「冗談ですって。」 ノーグは離れていった。
ため息をつくオブライエン。

ランナバウトは惑星に到着した。
洞窟に入るオドー。「ルソル。……ルソル!」
ウェイユン※4:「ルソルは来ません。」 先に待っていた。
「…ウェイユンか。」
礼をするウェイユン。「創設者。こうして再びお目にかかることができて、光栄に存じます。」
オドー:「ガル・ルソルはどこだ。」
「残念ながら 1年ほど前にカーデシアの中央司令部に処刑されています。だます気はありませんでしたが、創設者においで頂くにはこうするしかなかったのです。」
「そうまでして、私に何の用だ。」
「お仕えしたい。…もはやドミニオンの一員としてはやっていけないと悟りました。」
「…亡命するのか?」
「どう取って頂いても。私は自分の運命をあなたの手に委ねます。」


※1: Gul Russol
明確な言及はありませんが、オドーが「恩義がある」と言っている点、会う場所が同じく洞窟という点から、DS9第66話 "Improbable Cause" 「姿なき連合艦隊(前編)」に登場したカーデシア人情報屋と同一人物の可能性があります。前回は名前は言及されませんでした

※2: Nog
(エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) 前話 "Chrysalis" 「愛に目覚める者」に引き続き登場。声:落合弘治

※3: graviton stabilizer

※4: Weyoun
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) DS9第152話 "Shadows and Symbols" 「預言者の呪縛」以来の登場。声:内田直哉

・本編
ウェイユンは尋ねた。「私をお疑いですね。」
オドー:「ガル・ルソルの死は疑わないがね。ドミニオンから亡命したいということだが、理由は?」
「創設者…」
「私は創設者ではないと言ったはずだ。」
「仰せのままに。オドー…全ての疑問にお答えしますが、まずはそちらのランナバウトに移った方が賢明かと。既にジェムハダーたちが私を探し回って、この辺りをうろついて…」
「まずこちらの質問に答えろ。…なぜ、亡命を決意したんだ。」
「あなたのおそばにお仕えするために。」
「もっとましな言い訳があるだろう。」
「これならご満足ですか。私の身に危険を感じたからカーデシアを出たのです。」
「敵は?」
「全員です。」
「思いこみじゃないのかね。」
「いいえ、私は命を狙われています。」
「なぜだ。」
「連邦との戦いでいつまでも決着がつかないからです。」
「計画通りにことが進むとは限らん。」
「その通り。そして結果が悪いと、誰かに責任を押しつける。今回それが、私だった。さあ、早く…乗り移らないと危険です。」
腕組みするオドー。
ウェイユン:「よろしいですか、オドー。私が握っているドミニオンの様々な情報は、惑星連邦の勝利に役立つことになるはずです。」
「その情報をこちらに提供してもいいというのかね?」
「何なりとお聞き下さい。」
「……ではドミニオンがセクター507※5 付近に新しいケトラセル・ホワイトの、貯蔵施設を建設したという噂については?」
「施設はペロサ星系※6に実在します。正確な座標軸は後ほど。」
オドーはコミュニケーターに触れた。「オドーよりリオグランデ、2名転送。」
ため息をつくウェイユン。2人は転送された。

リオグランデのコクピットに入る。
オドー:「そこに座れ。監視できるようにな。」
ウェイユン:「監視は構いませんが…私は神を傷つけるような行為はしません。」
「私は神ではなく、一人の保安部員で、君は一人の捕虜に過ぎんのだ。」
「その言葉に私がどんなに傷つくかご存じないでしょう。」
ため息をつくオドー。
リオグランデは惑星を離れた。

まだプロムナードで作業しているオブライエンに、ノーグが話しかける。「ああ、エドガーと会いましたよ。」
オブライエン:「エドガー?」
「新しいお友達の、チーフ・エドガー・ウィルビー※7。そうそう、ガムジャン・ワイン※8のお礼を伝えておいてくれと、言われましたよ。」 笑うノーグ。
「そんな物贈った覚えはない。」
「僕が勝手に贈らせてもらいました。それで、奥さんの名前はシンシア。メリッサという 8歳の娘と、エドガー・ジュニアという 5歳の息子がいて…」
「装置は手に入れたのか?」
「まだそこまでは。」
「どういう意味だ。」
「在庫を切らしてて、新しい船荷が着くまで、1週間はかかるそうです。」
「ああ、これまで。運も尽きた。」
「あ、そうとも言えません。U.S.S.センチネル※9が、余分な安定機をもっているんです。」
「俺たちにくれる保証はない。」
「誰ももらえるなんて言ってませんよ。でも交換してくれるかもしれない。」
「何と交換する?」
「お互いの要求が合えば、交渉はバッチリでしょ。」
「交渉する分には構わんがね。でも忘れるな、慎重にやれ。」
「金儲けの秘訣、168条。『成功したけりゃ、内密に。』※10
「ふーん、頼むぜ、ノーグ。」
「ああ、チーフ。もう一つ。許可コードが必要です。」 追いかけ、パッドを差し出すノーグ。
「なぜだ。」
「注文の手続きで。」
「持ってくれば、許可する。」
「僕がやれば時間の節約になります。シスコ大佐はいつ戻られるんでしたっけ?」
オブライエンはため息をつき、パッドにコードを入力した。
ノーグ:「心配ご無用です。私がうまくやりますから。」
オブライエン:「どうだかね。」
パッドを受け取り、ノーグは歩いていった。

帰還中のリオグランデ。
オドー:「いい加減にしてくれよ。」
ウェイユン:「何がです。」
「そんなに見つめるな。」
「その…無意識のことで。」
「この 10時間、ずーっとそうだ。」
「お許しを。私は創設者のおそばに座らせて頂けるだけで光栄で。」
オドーはウェイユンを睨んだ。
ウェイユン:「保安主任でした。」
コンピューターに反応がある。
オドー:「呼びかけだ。」
ウェイユン:「無視して下さい。」
「カーデシアからだな。」
「波長にスクランブルをかければ、ロックされずに済みます。」
「よし。」
だがカーデシアの通信が映像に切り替わった。映し出されたのは、ウェイユンだった。『創設者…』
隣のウェイユンを見るオドー。
通信相手のウェイユンは続ける。『…またお目にかかれて光栄です。』


※5: Sector 507

※6: Pelosa system

※7: Chief Edgar Willoughby
1960年の「ミステリーゾーン」のエピソード、「敗北者」(原題 "A Stop at Willoughby"、ジェイムズ・デイリー主演) へのオマージュ

※8: Gamzian wine
酔う飲み物。DS9第7話 "Q-Less" 「超生命体“Q”」など

※9: U.S.S. Sentinel
クラス、番号不明

※10: No.168 "Whisper your way to success."

カーデシアにいるウェイユンは言った。『驚かれたようですねえ。』 隣にダマール※11も映っている。
オドー:「ヴォルタ人※12がクローンだとは承知しているが…私にはこの世にウェイユンが 2人も必要だとは思えんね。」
『大賛成です。』
「それで? 不幸にもここ数年に渡って私と会っていたウェイユンは、一体どちらのウェイユンなのかね?」
リオグランデのウェイユン。「どちらでもありません。」
カーデシアのウェイユン。『あれはウェイユン5 です。我々の優秀なる先輩は、1月前に亡くなっているのです。』
「そして私がその後に生まれた。」
『あれはドミニオンにとって、実に不幸な日でした。偉大なる真の愛国者であったウェイユン5 が、転送装置で事故死してしまうとは、何という不運な人生だったのでしょう。』 ダマールを見るウェイユン。
もう一人のウェイユンが続ける。『事故は未だ調査中。』
ダマール:「徹底的に調査をしたが、殺しの証拠は見つかっていない。」
オドー:「なるほどな。こっちがウェイユン6 だということは、お前は 7 だな。」
「クローンめ。こんなに手間取らせるとは、厄介な奴。」
「前任者が生きているのに、なぜ新しいクローンを作ったんだ。」
ウェイユン7:「通常はあり得ないことですが、欠陥クローンが出た場合は…」
ウェイユン6:「私は欠陥じゃない!」
『立派な欠陥品だ。敵に亡命しようとするなど、その反抗的な態度がいい証拠ではないか。』
「オドーを敵呼ばわりするのか。」
『とんでもない。君もわかっていると思うが、敵は惑星連邦です。』
ダマール:「いい加減にしてくれ。インプラントを作動させるよう、指示を。」
「わかっています。」
オドー:「インプラントとは?」
ウェイユン6:「ヴォルタ人はみんな脳幹に停止インプラント※13をもっているのです。」
ウェイユン7:『創設者への忠誠を証明しろ。停止するのだ。』
「忠誠を誓うオドーに、まだ死を命じられていません。」
ダマール:『言い聞かせてわかる相手じゃないと言っただろう。今のままでも、お前は死人同然だ。二度とディープ・スペース・ナインには帰さんぞう。』
ウェイユン7:『創設者、あなたまでがこのつまらない争いに関わる必要は全くありません。我々が到着するまでその位置に留まっていて下されば…』
オドー:「大事な捕虜をそちらに引き渡す気は毛頭ない。」
『拒否なさるなら船がどうなっても責任はもてませんよ。』
ウェイユン6:「ただの脅しですよ。創設者を攻撃できるものか。」
ダマール:『ウェイユンには無理でも、私にはできる。よく考えることだ。攻撃機は既に発進した。』 通信を終えた。
ため息をつくオドー。
ウェイユン6:「……申し訳ありません。もっと早く真実をお話しするべきでした。」
オドー:「今からでも遅くないぞ。なぜ亡命を思い立った。」
「…とても、明快なことなんです。私はこの世に生まれ出た瞬間から、この戦争が間違っていると感じていました。どうか誤解なさらないで頂きたい。私は創設者を崇拝していますが、アルファ宇宙域を征服したいという彼らの執着には納得できませんでした。もうそろそろ固形種と共存していくことを学ぶ時期です。創設者たちに疑問をもつなど、許されないことはわかっています。……ウェイユン7 が正しいのでしょう。…私は異端だ。」
「…君は正しい。戦争や創設者に対する君の思いは…筋が通っている。」
「……ありがとうございます、オドー。私を擁護し、守って下さって。」
「誤解されては困るなあ。私はどの捕虜にも公平だ。」
「承知しています。神ですから。」
また、ため息をつくオドー。

カーデシア・プライム。
ウェイユン7:「まさか…ウェイユンから、あのような裏切り者が出ようとは、私は今でも信じられません。」
カナールをグラスに注ぐダマール。「会った瞬間からあいつは何か違ってた。残忍さが欠けていたんだなあ。」
ウェイユン7:「ウェイユン6 は我々ヴォルタ人全ての名を汚す者。…だが…彼に全ての責任を負わせてしまうのも気の毒かもしれません。クローン生成は細心の注意を…必要とします。不良品がたまに出てしまうのは、どうしても避けられないことですからねえ。これまでウェイユンには見られなかったが、可能性はあった。それに裏切りに…関して…言えば、ウェイユン5 の死に何か問題があるといえるかもしれませんね。」
「ああ、私が事故に関わっていると?」
「彼はあなたと転送されるはずでした。」
「中央司令部の緊急会議に呼び出された。」
「都合よくね。」
「私はいつも、運がいい。」
「ええ。」
「カナールで乾杯というのは、やはり無理かな?」
「我々の問題をそう簡単に水に流すわけにはいきませんよ。」
「何をそんなに心配しているんだ。オドーだってジェムハダーの攻撃を望みはしない。」
「だが捕虜の引き渡しを拒んだら、どうする気ですか?」
「その時は殺す。」
「ありえない! 創設者を殺すことは私が許しません。」
「船を阻止しなければ、オドーは 6 を惑星連邦に連れ帰るだろう。そうなれば我々の戦略的作戦について、全ての情報が暴露される。その意味がおわかりか?」
「戦いに負けるということです。」
「その通り。そんな事態を許すわけには。カーデシアは危険にさらされ被害を被る。たった一人の流動体生物を救うことで、未来に対する全計画、あらゆる夢が打ち砕かれることになるとしたら…」
「たとえ命令でもジェムハダーがオドーを攻撃するとは思えません。」
「彼が乗船していると知らせなければ。ただランナバウトを攻撃しろと命令するんだ。」
「……それならうまくいくでしょう。しかし万が一オドーの死に我々が責任があると、創設者に知れたら。」
「誰が知らせるんだ?」
「……オドーはご自分を、創設者だとは考えていない。」
「意見が一致した。ランナバウトを破壊するのだ。」
ウェイユン7 はダマールを見つめ、うなずいた。
ダマール:「安心したよ。これでカナールを少し試してみる気になったかね?」
ウェイユン7 はダマールを無言で見すえた後、部屋を出て行った。
笑い、カナールを飲むダマール。

DS9。
ターボリフトを待っているエズリ。
乗ってきたオブライエン。「おはよう、中尉。」
エズリ:「このまま下がった方がよかったかも。」
「何で。」
司令官室からキラが呼びかけた。「チーフ! ちょっとこちらへ!」
エズリ:「遅かったみたい。」 ターボリフトで降りていった。

オブライエンはキラが待つ司令官室へ入った。妙にガランとしている。
キラ:「事情を説明してくれない?」
オブライエン:「…大佐のデスクは…」
「しらばっくれないで。これはあなたの許可コードでしょ?」
パッドを見るオブライエン。「…ノーグめ。」
キラ:「ノーグがどうかした?」
「ノーグが重力量子安定機と大佐のデスクを交換してしまったと…」
「何ですって?」
「ご心配なく、デスクは取り戻します。」
「ええ、当然のことよ。大佐は 2日でベイジョーから戻ります。大佐が戻られるまでに、デスクを戻しておくこと、きっちりこの位置に。わかったわね!」

レプリマットで話すノーグ。「心配いりませんって。あげちゃったわけじゃありませんから。デスクは貸しただけです。」
オブライエン:「誰に。」
「アル・ロレンゾ※14。」
「誰なんだ、そいつは。」
「デコス・プライム※15の作戦部長です。」
「大佐のデスクを何に使う。」
「写真撮影のためです。」
「写真?」
「有名な宇宙艦隊司令官のデスクを前にした、自分の写真をコレクションしているんです。ああ…いつもはオフィスに忍び込んで撮ってたのに、戦争でそれが難しくなってきたとか。」
「ハ! 物好きな奴だ。」
「すごいコレクションですよ! デソト艦長※16のデスクに、あのピカード艦長※17まで…」
「よーし! わかった。そいつは…写真を撮り終えたら、重力量子安定機をくれるんだな。」
「いえ、彼がくれるのは誘導モジュレーターです。」
「そんな物必要ないじゃないか。」
「U.S.S.ムサシ※18が必要なんです。」
「ああ…じゃあムサシが我々に我々に安定機を送ってくれるのか?」
「彼らがくれるのは、フェイザーエミッター。」
「フェイザーエミッターなんて必要ない!」
「わかってます。でも U.S.S.センチネルが欲しがってて、余分な安定機をもっているんです。」
「じゃあ彼らがくれるんだな? エミッターと交換に。」
「という噂です。」
「噂? お前はそんな噂を元に取り引きを進めているのか?」
「信頼できる情報です。」
「嘘だったらどうするんだ。」
「信じることが大切です。」
「噂を?」
「いえ、物質連続体※19を信じるんですよ。」
「ああ…。誰なんだ、それ。」
「人じゃなくて、この大宇宙を結びつけているパワーですよ。」
「俺はそんな授業、受けた覚えはないなあ。」
「常識です。フェレンギ人なら、最初の耳が生えそろう頃には知っています。」
「フェレンギのおとぎ話を聞いている暇はないんだ。」
「それは実在します。…ああ…あの、いいですか? この宇宙には、数え切れないほどの世界が存在しています。それぞれで、ある物が余ってて、ある物は不足しています。物質連続体は全ての世界を…川のように流れ、必要なところを満たしていくんです。そして自分たちの船を上手に操り、川を進めば…船は望む物全てで満たされるようになっているんです。」
「気が進まないが、今はお前に任せるしか手はない。」
「…川が用意してくれます。」
「フーン、船が沈没しなきゃな。」

リオグランデ。
ウェイユン6 は座ったまま寝ているが、ブツブツ言っている。「…オドー…」 震えながら目を覚ました。
オドー:「…どうした。」
ウェイユン6:「…どうやら夢を…見ていたようで。」
「悪い夢だったようだな。」
「…私は地球にいました。宇宙艦隊司令部に。私は任務報告のためにオフィスに呼び出されているというのに、その場所が見つからないんです。あなたの名前を何度呼んでも、返事がなくて…次の瞬間突然、私はジェムハダーに追われていました。おお…あれはクリンゴン人だったのか?」 笑うウェイユン6。「……おかしいですよね。」
「…そんなことはない。同胞たちを裏切るのは、誰にとっても辛いことだ。…私にも、よくわかる。」
「…オドー。任務報告の時に、あなたにオフィスを案内してもらってもいいでしょうか。」
「……構わんだろう。」
「…それなら安心ですね。」
突然、警報が鳴った。
ウェイユン6:「何の音です。」
オドー:「まずいな。」
ランナバウトが大きく揺れた。
リオグランデに向けて連射する、ジェムハダー船。


※11: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) DS9 "Shadows and Symbols" 以来の登場。声:古田信幸

※12: 他の個所を含め、ヴォルタと訳されています

※13: termination implant

※14: Al Lorenzo

※15: Decos Prime
なお「作戦部長」と訳されているのは Chief of Operations のことで、DS9 におけるオブライエンと同じ役職です

※16: Captain DeSoto
ロバート・デソト (Robert DeSoto)。U.S.S.フッドの艦長。TNG第68話 "Tin Man" 「孤独な放浪者」に登場

※17: Captain Picard
ジャン・リュック・ピカード (Jean-Luc Picard)。現在は U.S.S.エンタープライズ-E の艦長。言わずと知れた TNG のレギュラーで、DS9 パイロット版 "Emissary" 「聖なる神殿の謎」にも登場

※18: U.S.S. Musashi
クラス、番号不明。1944年10月、レイテ沖海戦でシブヤン海に沈んだ日本の戦艦にちなんで

※19: 大物質連続体 Great Material Continuum

ジェムハダー船の攻撃は続く。反撃するリオグランデ。
ウェイユン6:「まさか本当に攻撃してくるとは。」
オドー:「だがジェムハダーだよ。」
「ジェムハダーなら創設者攻撃の命令には背くはず。」
「ついに私を敵だと認識したのかもしれん!」
「…それとも攻撃対象を知らせていないか。あなたが乗っていると知らせなければ。」
「全周波数が妨害されてる。」
「敵と交信しないよう、指令されているのか。」
「ダマールは絶対我々をステーションには帰さないつもりだ。」
ウェイユン6 はオドーに近づいた。「敵の背後に回れませんか。」
オドー:「なぜだ。」
「今は私の言う通りに。」
操縦するオドー。
攻撃を受けながらも、リオグランデは急激に速度を落とし、ジェムハダー船の後ろに出た。
オドー:「どうする。」
ウェイユン6:「背面のシールドジャンクションにフェイザーをロックして下さい。そこが一番弱いんです。」
リオグランデのフェイザーが、ジェムハダーを直撃した。
弱点を突かれた敵船は、崩壊し始めた。爆発する様子を前方の窓から見るオドーたち。
オドー:「……やったな。おめでとう。君のおかげで命拾いした。」
ウェイユン6:「私はドミニオンの忠実なるしもべたちを殺してしまった。創設者よ、私をお許し下さい。」
「…君は一度も疑ったことはないのか。創設者たちを神々だと信じるのは、そう信じ込まされたからだと。創設者はそう遺伝子コードを設計したんだ。」
「それは当然です。神の仕事ですから。結局、崇拝する者がいなければ、神は存在しないのです。」

DS9。
廊下で作業を行っているロム※20
オブライエンが近づく。「ロム。」
ロム:「あっ。」
「ノーグはどこだ。」
「知りません。2、3時間前にランナバウトで出かけました。」
「船の使用許可は誰が出した。」
「チーフでしょ?」
「…許可コードを教えたのが間違いだったなあ。…いつ戻るって?」
「聞いてません。」
「一体どうすりゃいいんだよ。舵もない船に乗せられ、川に放り出されちまった。」
「川ってどの川?」
「あれさ、フェレンギの物質連続体だよ。」
「ああ、あの川ねえ…あまり当てにならないかも。」
「ああ。わかってる。でももう物が消える心配はない。ノーグがいなけりゃあね。それだけはよかった。」

転がったケース。「ブラッドワインのケースはどこに消えたんだ!」 別のケースを放り投げるマートク※21
パッドを持ったウォーフ。「私は存じませんが、直ちに調査してお知らせいたします。」
うなって貨物室を出ていくマートク。

カーデシア。
宙図を見るダマール。「どういうことだ。ランナバウトはどうやってジェムハダー船を破壊した。」
ウェイユン7:「はっきりしています、オドーは 6 の手を借りて船のシールドを破壊したんですよ。」
「どうする気だ。」
「こうなったらジェムハダーの大軍を送るしか手はありません。あのオルメラック※22基地からね。」
「それから?」
「見つけ次第攻撃するよう、念を押しましょう。」
女性可変種※23の声。「誰を攻撃するですって?」 いつものようにジェムハダーに付き添われている。
礼をするウェイユン7。「創設者。何か御用でしょうか。」
「わたくしの質問に答えなさい。」
ダマール:「実は惑星連邦のランナバウトが、オルメラック星系の基地を偵察していました。」
「それしきのことで騒ぐことはないでしょう。」
ウェイユン7:「1時間以内に破壊します。」
ダマール:「大丈夫ですか?」
女性可変種:「…なぜそんなことを?」
「お顔が。」
ウェイユン7 も気づいた。
女性可変種の顔は、いつもとは違って異常な凹凸が目立っている。
女性可変種は一旦うつむくと、再び顔を上げた。のっぺりとした肌に戻っている。「大丈夫です。ですがこれからは、全ての部屋の温度を 15度下げるように。カーデシアのこの暑さには耐えられません。」
ウェイユン7:「同感です。室温を下げろ。」
ダマール:「直ちに。」 コンピューターを操作する。
「ほかにできることはありませんか。」
女性可変種:「ウェイユン6 の居所は見つかりましたか?」
「時間の問題です。」
「そればかりですね。」
「ご安心下さい、創設者。必ず処理を。」
出ていく女性可変種。
ダマール:「あの顔を見たか。ひどい肌だった。」
ウェイユン7:「部屋が暑すぎたのですよ。」
「どうかな。悪い病気かもしれん。」
「君が気にすべき創設者は、ほかにいるでしょう。オルメラックに連絡し、ランナバウトを攻撃するよう直ちに指令を。」

皿に置かれた料理に箸を突き刺し、それをかじるウェイユン6。「うん。うーん。」 ナプキンと皿をどける。「うん。…満腹です。」
オドー:「だろうね。レプリケーターのメニュー全部を試食したんだ。」
「様々な質感を…楽しみました。」
「味わった、だろ?」
「違います。ヴォルタの味覚機能はかなり限定されていて、美味しいと感じる食べ物は…カヴァ・ナッツ※24とリプルベリー※25だけです。」
「ああ…そうか、味覚機能もきっとまた遺伝子プログラムの結果なんだろうね。」
「いえ、我々が過去を忘れないための創設者の配慮なのですよ。創設者たちがヴォルタ人を作るに到った経緯をご存じですか?」
「…いいや。それじゃあ今から君にこれまでのヴォルタの歴史を語ってもらおうか。」
オドーに向き直るウェイユン6。「…現在のヴォルタ人の姿形は、昔と随分変わったのです。元々は森の住人でした。小型で、臆病なサルのような生き物で、住みかは木のくぼみ。」
オドー:「食料はナッツやベリー類か?」
「我々は毎日弱肉強食の世界で、怯えながら暮らしていました。ある日、怒れる固形種の群れから逃げてきた可変種が、怪我をして我々の森に迷い込んできたのです。」
「なぜ追われていたんだ。」
「理由はいいんです。あなたもご存じのように、固形種は可変種を恐れていた。そして、ヴォルタのある一家が逃げてきた可変種をかくまったのです。自分の命を救ってくれた代わりに、可変種は…ヴォルタにある約束をしました。いつの日かきっと、力強い生命体に変身させてやろうとね。我々が銀河中に広がる、偉大な新帝国において、重要な地位を占めるようになったのは、そういう経緯があったわけなんです。」
「可変種は約束を守ったのか?」
「そうです。いいですか、オドー。我々はかつてサルより小さかったんですよ? 今はどうですか。あなた方のおかげでこんなに立派になった。」
「……それを聞いて安心したよ。その話が本当なら、少なくとも私の種は…寛大で親切ということだ。」
「……やはり同胞の存在が気になるようですね。過去にいろいろあったとしても。」
「……そうかもしれん。だが私の同胞は大勢の戦争犠牲者に対し責任があるんだ。」
「オドー。実は大変な事態なんです。偉大なるつながりに病気が広がり創設者たちが…次々と…倒れています。」
驚くオドー。


※20: Rom
(マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第154話 "Take Me Out to the Holosuite" 「がんばれ、ナイナーズ!」以来の登場。声:田原アルノ

※21: マートク将軍 General Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9 "Shadows and Symbols" 以来の登場。声:大山高男

※22: Olmerak

※23: 女性流動体生物 Female shape-shifter
(サロメ・ジェンス Salome Jens) DS9第130話 "Sacrifice of Angels" 「ディープスペース・ナイン奪還作戦(後編)」以来の登場。声:宮寺智子

※24: kava nut
カヴァはベイジョーの特産。DS9第85話 "Crossfire" 「ジェラシー」など

※25: rippleberry

オドーは言葉を失う。
ウェイユン6:「あれは私が女性可変種に会議に呼び出されて軍事配備について話し合っていた時のことでした。突然彼女の手が…震え始めて…ほんの数秒なんですが、この 2、3週間…そういうことが何度もありました。まるで花が枯れるように、生気を失った。」
オドー:「…それで、ほかの可変種も病気に感染しているというのは確かか。」
「つながり全体が感染していると、そう聞きました。」
「……無事なのは私だけか。」
「治療法が見つからなければ、あなたが種の生き残りになる。」
「……なぜもっと早く教えてくれなかった。」
「悲しむ顔を見たくなかったのです。悪い知らせをもたらしたことをお許し下さい。でもともかくあなたは無事だ。ドミニオンは必ず生き残ります。」
「…どういう意味だ。」
「考えてみて下さい、オドー。あなたにはチャンスが与えられている。同胞たちがこれまで犯した過ちを正すのですよ。新生ドミニオンを作り上げるためにね。支配ではなく協調の上に、戦争ではなく平和の上にです。あなたがリーダーシップをとってドミニオンを再び作り上げるのです。」
「その『新しい帝国』での君の役割は何なんだ。」
「仰せのままに何でもやりましょう。私の望みはあなたにお仕えすること。」
また警報が鳴り始めた。
オドー:「…では、早速家来の知恵を拝借しようか。君ならどうやってジェムハダーの攻撃をかわすね?」
ウェイユン6:「名案がおありなんでしょう。」
リオグランデを追う、4隻のジェムハダー船。
オドーはコンピューターの宙図を見た。「近くにカイパー・ベルト※26があるはずだ。彗星の破片の間に船体を隠せるかもしれん。敵は急接近しているので時間的余裕はない。」
ジェムハダー船に追われたリオグランデは、カイパー・ベルトへ入っていく。多数の氷の塊が集まった地帯だ。
ジェムハダー船もワープ航行を終え、カイパー・ベルトへ入る。
前方に氷が見えている。
ウェイユン6:「ただの巨大な氷の塊の間に隠れても、すぐに敵に居場所を察知されてしまいます。」
オドー:「氷に同化してしまえばいい。」
一つの巨大な塊に近づいたリオグランデは、その割れ目から中へ侵入する。
フェイザーを使い、内部の氷を少しだけ溶かしていく。そして停止した。
コンピューターを操作するオドー。「よーし、こうしてランナバウトのパワーを切って船体を氷で覆えば、ジェムハダーのセンサーに感知されるようなエネルギーを発生することはない。」
ウェイユン6:「『我々は、氷に…なったのだ。』 さすが神様のお知恵だ。素晴らしい。」
「凍え死ぬ前に連中が捜索をあきらめてくれることを祈ろう。」
「信仰心で心は熱い。」
「ああ、どうかな。一時間もしないうちに信仰と暖かい毛布を交換したいと言い出すかもしれんぞ。」

白いテーブル。
オブライエン:「これ、どう思う?」
一緒に司令官室にいるベシア。「白いね。」
オブライエン:「そんなことわかってる。上からペンキを塗る。」
「形が違う。…高さも違う。それに幅も。それ以外は完璧だ。デスクが変わったなんて、大佐は気づかないさ。」
「ジュリアン…皮肉はいいから力を貸せよ。」
「今君を助けられるのはノーグだけだ。」
「大佐より早くここに戻ってくればな。」
「あいつ、戻ってこないかも。ずらかりを決め込んだとしたら。」
キラが入る。「前のデスクと違うわ。」
ベシア:「…塗り替えるそうです。」
「…冗談でしょう!」
マートクもやってきた。
キラ:「将軍、私に御用?」
マートクはオブライエンを指さした。「いいや、お前に用がある。」

床に転がったケース。
オブライエン:「ワインが消えた?」
マートク:「16ケース一度にな。妻が贈ってくれた物だ。一体どこにやった。」
「そんな…何で私に聞くんです?」
ウォーフ:「ケースの移動を許可しただろ。」 オブライエンにパッドを渡す。「これは君の許可コードじゃないのかね?」
「ノーグめ…。」
マートクは顔を近づけた。「チーフ、とにかく私のブラッドワインを元に戻しておけ、明日までにな。わかったか。」
笑うしかないオブライエン。

ウェイユン6 は布をまとい、震えていた。「オドー…さっき全システムのパワーを切ったとおっしゃっていましたが…生命維持装置のパワーもでしょうか…。」
オドーも多少辛そうだ。「残念ながら…。」
ウェイユン6:「ああ、それでわかりました。」
「何がだね…」
「息苦しくなってきたわけです…。」
「あと 3時間は生きていられるだけの酸素はあるはず。…もちろんそれまでに凍死しなければの話だがね…。」
「でも…あなたは死ねない…。ずっと生き延びて、新生ドミニオンを作るんです……。」
突然、揺れが伝わった。
オドー:「ん?」
ウェイユン6:「ついに見つかったか…。」
ジェムハダー船は総出で、氷の塊を次々と破壊していく。
ウェイユン6:「どうしますか。」
オドー:「もう隠れてはいられん。」 パワーを復活させた。
「まさか敵機をかわして逃げる気ですか。」
「ほかに方法はない。」
ジェムハダー船の攻撃により爆発した塊。その中からリオグランデが飛び出した。
逃げるリオグランデ。ジェムハダー船のそれた攻撃は、氷を破壊していく。


※26: Kuiper belt
一部の恒星系の外縁近くに存在する、円盤状の領域。通常は星系の惑星軌道の外に位置します。オランダ生まれのアメリカ人天文学者、ジェラード・カイパー (1905〜1973年) にちなんでおり、彼は天王星の衛星ミランダ、海王星の衛星ネレイドのほか、土星の衛星タイタンに大気があることを発見

反撃しながら、氷の中を縫うように進むリオグランデ。
ウェイユン6:「奥が燃えています!」
オドー:「さっさと消化器で消してくれ! ……何モタモタしてる!」
「あなたのためなら命も惜しくない。」
ウェイユン6 は備えつけの消化器を使い、鎮火させた。そしてコンソールを操作する。
オドー:「何をしてる! 何で通信をオンにしたんだ!」
モニターにウェイユン7 とダマールが映し出された。
ウェイユン6:「もういい、船を撤退させろ!」
ウェイユン7:『なぜだ。』
「もう攻撃の必要はないからだ。」
ウェイユン6 はそういうと、手を首元に押し当てた。短い叫び声と共に、体勢を崩す。
ウェイユン7:『正気に戻ってくれてよかったよ。』
近づくオドー。「何をしたんだ!」
ウェイユン6:「あなたの命を救うため、そしてドミニオンのためにです。」
ウェイユン7:『彼は停止インプラントを作動させ、やっと立派なヴォルタだということを証明したのですよ。』
「私が従う相手は創設者のみ…」 まだジェムハダー船の攻撃が続く。「さあ、さっさと船を撤退させろ…!」
ダマール:「オドーに戦略上の秘密を漏らしていたら大変なことに…」
ウェイユン7:「そういう危険はつきものです。」 コンピューターを操作する。「ジェムハダーに攻撃中止命令を出しました。ランナバウトの船体は損傷を受けていますねえ。お力になれること、ありませんか?」
オドー:「さっさと消えてくれ!」 倒れゆくウェイユン6 を支える。
『何かとご迷惑をかけたことを、心より遺憾に思います、オドー。道中お気をつけて。無事帰還されることをお祈りしております。』 礼をするウェイユン7。映像は消えた。
ウェイユン6:「…停止装置は…痛みを感じる間もないと聞いていましたが、どうもそうではないようですね…」
オドー:「今、鎮痛剤を。」
「…いいんです。…それより私の願いを聞いて下さい。」
「何だ。」
「…祝福を頂きたい。」
「…そ、それはできない…」
「お願いです! ヴォルタとして立派に仕えたと、意義ある人生だったと…」
「そうとも。だから私から感謝の念と……そして…祝福を。」
「ああ…。」 オドーを見つめたまま、ウェイユン6 は絶命した。

DS9。
オブライエンは司令室に入った。
ベシア:「マイルズ。大佐が戻った。」
オブライエン:「ああ。呼ばれてる。」
「がんばれよ。」
「…どうも。」
司令官室に入るオブライエン。
シスコの前には、いつものデスクがあった。「ああ、チーフ。」
オブライエン:「このデスクは…」
「ああ、どうだ。ピカピカだろう。今朝戻ったら、ノーグ少尉が磨いてくれていてね。」
布を持っているノーグ。「ちょっと曇ってたんで。」
シスコ:「さて、これがゲティスバーグ※27からのメンテナンスの要求だ。今日着くはずだから。…以上だ。」
オブライエン:「了解。」
「ああ、安定機の件だが。」
「…大佐、ご説明いたします…」
「いや、結構。今朝君が一つ確保したと、ノーグ少尉から聞いてる。」
「…ほんとに? いえ、ええ、そうなんです。」
「それで、修理時間は?」
「ああ…8時間あれば。」
「2時間以内にディファイアントでパトロールに出る。」
「了解!」
2人で部屋を出たオブライエン。「まるで魔法だな。」
ノーグ:「これも最後まで、物質連続体を信じたおかげです。」
「ああ、そうだな。すごい川だ。」
ウォーフと共にターボリフトでやってきたマートク。「チーフ!」
オブライエン:「また川面が荒れ始めたよ。」
近づいたマートクは、ブラッドワインのボトルを渡した。「一本進呈する。詫びの印だ。」
オブライエン:「ワインが戻ったんですか?」
ウォーフ:「戻ったというか、ノーグ少尉が 2309年もののブラッドワインのケースを持ち帰ってくれたんだ。当たり年のね。」
マートク:「女房から贈ってもらった物より、ずっと上物なんだ。」 笑う。
オブライエンも一緒に笑う。「ご満足頂けてよかったです。」
ノーグ:「皆さん、今後ともよろしく。ワインや蒸留酒のお買い物なら、従兄弟のガント※28にお任せを。」
ウォーフ:「よく覚えておこう。」 持ち場につく。
笑うノーグ。
マートクも離れる。「ああ…。」
ターボリフトに向かうオブライエン。「従兄弟のガントだって?」
ノーグ:「流れを操ってる仲間ですよ。」
「ああ…。」
「それより、ガントがソーリアン・ブランデー※29を、10ケース手に入れたそうです。大佐のお気に入りでしょ?」
指示するオブライエン。「レベル5。」 下がっていくターボリフト。「何と交換してくれる。」

オドーは窓の外を見つめている。「いまわの際の顔が、一生忘れられないでしょう。とても満ち足りた…表情でした。」
キラ:「彼は、神と信じる人の笑顔に見取られたのね。…幸運な人生だったと言えるわ。」
「…ネリス、どうか…」
「いえ、よく聞いて。宇宙艦隊にとって、預言者はただのワームホール異星人に過ぎないわ。でも私には、神なの。証明はできないけど、そんなもの必要ない。預言者たちを信じるという気持ちだけでいい。ウェイユンがあなたを信じたようにね。それで満足なの。」
「……だがそろそろヴォルタも、神々に頼らないで生きていく術を学ばなければなりません。」
「わかるわ。」 近づくキラ。「同胞が心配なのね。」
「…可変種が死にかけているのに、私は何もできない。…敵だから。」
「非常に危険な敵よ。いえ、それ以上かも。病気で絶望的になってる。…オドー、難しいかもしれないけど、戦争を始めたというのは彼らだということを忘れないで。」
「そうですね。…私は悟りました。これだけは確かです。どちらが勝っても…私には負けなんです。」


※27: U.S.S. Gettysburg
連邦宇宙艦、コンステレーション級、NCC-3890。TNG第16話 "Too Short a Season" 「大いなる償い」より

※28: Gant

※29: Saurian brandy
アルコール飲料。TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」など

・感想
久々のドミニオンに関する本流エピソードです。ウェイユンの亡命、クローン、そして創設者の病と、驚く内容が続きます。ドミニオンのまさに中枢がやられてしまうとは…。天文ではおなじみのカイパー・ベルトでの戦闘もよかったですね。
ただ重要な割には会話中心で多少地味でしたが、それも嵐の前の静けさということで DS9 らしいと言えると思います。いろんな役で活躍するコムズの演技を 2人分観られるので、彼のファンには欠かせない話になるでしょうね。
サブストーリーは打って変わってコメディ調。原題の 3つの単語「裏切り、信仰、大河」の一つを意味しているわけですが、製作者が「最高の一つ」と評するだけあって面白いです。指揮官のホロ写真を集めるなんて、現実のファンを皮肉ってるようですね。


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