Factory43's Best CD in 2003


2003年は1999年に似ていて、外に出ることが多かったためにMDウォークマンで音楽を聴くことが多かったです。そのためジックリ聴き込む音楽よりも、一発気合いを入れて「今日も暴れるぞオリャア!」みたいに盛り上がれるアッパーなモノをよく聴きました。

またこの年はアニメやゲームのサントラ・イメージアルバムなど、例年ならあまり買わないようなものを結構買ったりした一年でした。 そういうものもフラットに聴いているつもりなんですけど、そこからランクインするようなインパクトのある曲や印象的なアルバムは正直無かったです。残念。
世間的には将来有望な若手バンドのリリースも多かったようですが、年を取るとむしろド真ん中の直球に手が出にくくなるというか、なかなか「UK期待の新星」みたいなのを聴こうと思いにくくなりますなあ(<そんなのにもう何十回も煮え湯を飲まされてるので(苦笑))。


-、BONES BRIGADE 『I Hate Myself When I'm Not Skateboarding』 CD   Fight Fire With Fire recs. FFF-04

Thrashin' USA/All Go No Slow/Real Ultimate Power/No One Gets Out Alive/Adult Crash/Each Waking Hour/I'm Not Alright/Hands Off/Evil Dead/Skate Or Die/King Of The Pit/See Right Through/No Reason

元Youth Of Today/Judge/ShelterのPorcellが立ち上げたold school HCレーベル、FFFからのリリース。速くて短い曲が多いが、いわゆるファストコアのような一本調子ではなく、ショートトラックの中で激しく展開する曲調は'80s USHCの醍醐味満載で、ひたすら熱い。 M-1のタイトル通り、本来はこういう音を「スラッシュ」と呼ぶんじゃないんでしょーか。
新鮮さとか斬新さからは真逆の方向性だが、それが何だウンコプリッていう格好良さですよ(笑)。ラストのMinor Threatのカバーまでテンション高いです。


-、COALITION 『Breaking Point』 CD   Fight Fire With Fire recs. FFF-02

Out Of Words/Sick Of You/Can't Forget/Moving On/My Point/Take/Breaking Point/You'll Never Know/Everyday/Waste Of Time/Powertrip/Thanks For Nothing

これもFFFのバンドだがBones Brigadeよりもnew school寄りの音。メタリックなギターと重い曲調はかなり今風だが、要所に挟まるyouth crewっぽいコーラスや速いパートとスロウダウンする部分の絡みは、ツボを押さえていて良い感じ。 さすがにnew school度の高い曲になるとありがちすぎて個人的には微妙というかイマイチだが、何だかんだでよく聴きました。


-、christ. 『Metamorphic Reproduction Miracle』 CD   Beat(Warp) recs. WAP156CD

Lazy Daisy Meadow/Dianoes Nouveau/Eezeebreez/Medulla Oblongata/Odds,Evens,And Primates/Sunart/Fantastic Light/Always To Play/Mk Naomi/Skylab One/Pylonesque (Broken mix)/A Giant Bird/Ray Breakout/School Is Not Compulsory

日本ではシングル(M-11)リリース時から「元Boards Of Canada」がキャッチコピーとなっていたchrist.(現メンバーは「当時はBOCとは言えない」と否定、まあどっちでもいいですが)。やはりその前評判通りの、内省的で陰鬱だが甘美な音響世界が展開する。
ただしBOCの『Geogaddi』 (Beat BRC-51)程の狂気は感じられず、むしろ理知的に作られた感が強いアルバムだが、初期BOCにあったクールな感覚がトーンとして感じられて非常に気持ち良い。 「炎天下の目眩」というより「晩秋の日没」という感じです(<分かるような分からないような表現)。


-、KRAFTWERK 『Tour De France Soundtrack』 CD   Toshiba EMI recs. TOCP-66224

Prologue/Tour De France Etape 1/Tour De France Etape 2/Tour De France Etape 3/Chrono/Vitamin/Aero Dynamik/Titanium/Elektro Kardiogramm/La Forme/Regeneration/Tour De France

もはやオレごときが説明するのもおこがましい、Godfather of Technoの17年振り新作。 本作の凄さは、「いつもながらのKraftwerk節」であるのと同時に「最近のTechnoシーンと同じ範疇に存在する」ということだ。先行シングル『Tour De France 03』(Capital 552-690-2)やこのアルバムを最初聴いた瞬間は、音色や音の広がりにエレクトロニカや'80リバイバルを通過した近年のテクノに近いものを感じたのだが、曲の構造や要素の使い方は「まさにクラフトワーク」としか言いようの無いのが凄い。
無機物を並べただけで情緒の無い、似たような曲名群もイカス。

ちなみに、このアルバム買うならCCCDの海外盤ではなく、日本盤にしましょう。「Tour De France 03」のPVも観られるし、全然お徳です。


-、MONDO GROSSO 『Next Wave』 CD   Sony Music Assosiated recs. AICL-1480

Blaze It Up/Motormouth/Waitin' For T/Intermezzo Cosmo/Everything Needs Love/Intermezzo Earth/Fight For Your Right/Dancefloor Combat/Graceful Ways/Next Wave/Tornado/Intermezzo Sun/Shinin'/光

大沢伸一のプロジェクトMond Grossoの、3年ぶり通算5枚目のアルバム。
前作『MG4』(SMEJ Associated AICT1245)は自らが手がけたBirdを起用しての制作だったが、本作では様々なミュージシャンとコラボレーションを行っており、その相手もArmand Van Helden(M-8)からBoA(M-5)、師匠のテイ・トーワ(M-10)、Dragon Ashの降谷(M-13)、UA(M-14)等と多彩。 W杯公式アルバム『Fever Pitch』(Epic EICP88)収録のM-1から、ダンストラックとしてもポップミュージックとしてもクオリティの高い楽曲が並んでいる、極めて優秀なアルバム。全編を通じて、メジャー感がありつつもコマーシャルになりすぎない絶妙のバランス感覚が素晴らしい。
圧巻はM-14。ダークでアッパーな四つ打ちキックのハウスにドロドロとした情念が渦巻くようなUAのボーカルが絡む、非常にテンションの高いトラック。アングラなことをメジャーにやってる姿勢が面白いです。


-、NO MOTIV 『Lola』 CDs   Vagrant recs. VR384-2

Grey Notes Fall/Independence Day/Set Fire/Keep It Going(demo)

新アルバム『Daylight Breaking』(Victor Entertainment VICP-62615)からの先行シングル。カットされたM-1・M-2は前作『Diagram For Healing』(VR355)の延長線上にあるギターロック。ダイナミックな曲調とドライブするギター、憂いのあるメロディ。特にM-2は彼らの最高傑作と言っていい名曲だ。未発表トラックのM-3はちょっとGreen Dayっぽいポップパンク、M-4はアコースティックギターを前面に置いたミディアムナンバーと、バラエティ感でもまったく隙のない一枚。素晴らしい。
2003年9月発売とアナウンスされていた新アルバムの方も2003年の大本命だったが、2004年1月(国内盤は2月)に発売延期でした。ガックシ。


-、STRIKE ANYWHERE 『Exit English』 CD   Bigmouth JPN(Jade Tree) recs. BIGMJ0022

Amplify/Blaze/Infrared/To The World/New Architects/Lights Go Out/Fifth Estate/Modern Life/Aluminium Union/Extinguish/In The Fingernails/'Til Day Shall Be No More

Richmondの5ピースVegan HCバンド、Strike Anywhereの2ndアルバム(ミニアルバムとデモ集を入れると4枚目)。
先に謝ってしまうと、完全に偏見なんだけど「Jade Treeのバンド」というとEmo系の先入観があってどうも苦手なイメージがある(実際レーベルコンピとか相当辛かった)のだが、このバンドはBrian McTernanプロデュースということもあって「まあメロコアみたいだし聴いてみるか」ぐらいの気持ちで購入。これが大当たりでした。

前作『Change Is A Sound』(BIGMJ0016)では詰め込んだアイディアの中でキャッチーなメロディやコーラスが部分的に光っているものの、全体としては「やりすぎ」感の強い一枚だった。本作では過剰な転調や目先だけのアレンジを抑えた結果、とっちらかった感じが無くなり、曲の完成度が飛躍的に向上。 特にシンプルだが小技の利いたM-7(ミディアムテンポで短いのがイイ)、。主張の強い歌詞も地味にグッド(Vo.のThomasはex.Inquisition、G.のMattは好きなバンドにMinor ThreatやGorilla Biscuitsと併せてThe Smithsを挙げている)。
メンバーが成田で入国を拒否されて(<マラドーナかいな)流れた来日ライヴだが、無事入国できた際には観てみたいっす。


-、THE NEW BLOCKADERS 『Gesamtnichtswerk : 20th Antiversary Antiology 1982-2002』 4CD+2Booklet   Hypnagogia recs. TNB20

Disc1:Changez Les Blockeurs/Reductio Ad Absurdum
Disc2:Live Offensives
Disc3:Simphonie In X Major/Simphonie In O Minor/Die Stunde X
Disc4:20th Antiversary Wreckordings

偉大なる虚無集団・TNBの活動20周年記念4枚組CD(限定500セット)。音楽だとか創造性を越えて、人間存在を否定するかのようなニヒリズムを表現し続けたその足跡には、新聞社説レベルの生温い諧謔やヒッピー的な脱社会性を許さない強靱さを感じる。タイトルも含めた”記念盤リリース”という皮肉は、録音時期とそこに鳴る音像の関連の無さにもっとも強く表されていると思う。
まさに”Totally Nothingness”、すべては完全に不毛だ。その救いの無さを直視せよ。

タイトルが対になっている最新作『20th Antiversary Offensive』(Hypnagogia GIA01:限定500枚)は2003年6月のライブを収録した、38分1トラック。近年のマテリアルは無音に寄っている印象があったのだが、こちらはハーシュノイズ中心。ただしメタパーや金属擦音はあまり目立たず、Chop Shopを思わせる粒子状の音と接触不良雑音、そして低周波音像による構成。明らかな電子音のモアレが、自然音や体内音を想起させるという矛盾。所在の無い不安感を煽る中盤のカオティックな展開は、まさに彼らの真骨頂だろう。機会があれば是非。


-、THIRD EYE BLIND 『Out Of The Vein』 CD+DVD   Warner Music Japan(Elektra) recs. WPZR-30001-2

Faster/Blinded/Forget Yourself/Danger/Crystal Baller/My Hit And Run/Misfits/Can't Get Away/Wake For Young Souls/Palm Reader/Self Righteous/Company/Good Man/My Time In Exile/(Another Life)

ひさびさ3年半ぶりの3rdアルバム。疾走感やハードロックっぽいギターによるダイナミズムは後退し、全体としては1stに近い印象だ。ただし内省的だった1stよりも「抜けた」感覚は2ndに近く、その意味では両者の中間に位置するアルバムといえるだろう。
もっとも大きな変化は、前作で目立った「いじりまわしたような変化球の曲」が減ったこと。よく聴くと細かいアレンジは凝りまくってるのに全体としては随分スッキリした印象で、その分メロディの良さが際立っている(前作もメロディは十分に良いんだけどアレンジで判りにくくなっていた感が強いんだよな)。歌詞は冒頭からセックスと女の話でどうなんだコレと思ったが(苦笑)、それ以外では漂泊と失望を淡々と語るStephan Jenkins節が染みる。

爆発力はないが、とにかく良い曲を書くバンドということを再確認できたアルバムだ。
名作すぎた1stアルバム以降は必ずしも100%満足している訳じゃないのだが、やっぱり好きなんだよなあ、このバンド。


-、VA 『Things You Own End Up Owning You 2』 CD   Too Circle recs TCR-010

01. Vitamin X - (You're So Fucking) Blind
02. Vitamin X - Vitamins
03. Vitamin X - What You See Is What You Get
04. Vitamin X - Yeah, Yeah
05. We Must Burn - There Is No Difference
06. We Must Burn - Against What?
07. We Must Burn - Struggle
08. Let It Burn - Kick It In, Kick It Out
09. Let It Burn - Tomorrow Is?

オランダ(ユトレヒト)/日本(愛知)/アメリカ(ニュージャージー)の3バンドによる、スプリットCD。
VXはHavocからの音源に比べると正直テンションは低いが、まずまずの出来。We Must Burnは直球raging HC。悪めの音質も迫力。Doughouse recs.のLIB(ex-FULL SPEED AHEAD)はハードコアというよりノリノリR&Rな感じでカッコイイです。
収録バンドのバランスが非常に良い、好サンプラー。こういうのが何気に国内レーベルから出てるのが素晴らしいと思う。


番外、VITAMIN X 『Ramdom Violence』 CDs   Good Luck recs. GLR-011

Random Violence/Shoutdown/Beat My Head/Tell Me Why/Fall-out/Land Of The Free//Pissed Off/Got A Reason/Your War/In My Head/Ego Trip/People That Bleed/The Bigger, The Better/Too Close To Call/No Comply/Locked In, Locked Out/Stab (Me In The Back)/Material Existence

オランダのThrash SxEバンド、国内レーベルからリリースのシングルCD。ギターが太めに押し出された新曲もなかなか良いが、ボーナストラックとして丸ごと収録されている『People That Bleed』12"EP(M-7〜M-18)が、とにかく素晴らしすぎる。路線としては2ndアルバム『Down The Drain』(Havoc HC5007)と同じく、突っ込み気味の速さで1分前後のショートチューンが次々繰り出される小気味良いファストコアで、曲単位にキャラが立っていて変化に富んでいるのが強力な特徴。 一曲一曲に極端なオリジナリティがあるわけではないが、この引き出しの多彩さが、この手のバンドとしてはありそうでなかった特殊さだと思う。また、いわゆるファストコアと一線を画す独特な音の隙間やロックンロールなギターリフは、速く短くなっているがYouth Crewスタイルを踏襲していることの名残りなのだろう。
ちなみに、傑作シングル『We Came Here For Fun』7"EP (Underestimated recs.)もレアながら必聴なので見掛けたら是非。

それにしてもCommitment recs.から1stEP(COM12)を出した頃のダサいB級NYCHCフォロアーバンド(でした)から、今の姿を予想できた人はほとんどいないでしょう。最初は同名異バンドだと思ってましたよ。


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