Factory43's Best CD in 2004


2004年の最大の特徴は、一年を通じて記憶に残った音源が少なかったこと。それなりに数は聴いたつもりだったんですが、とにかくグッとくるものが例年よりも圧倒的に少なかったです。
よって残念ですが、遂にベストを10枚挙げることが出来なくなってしまいました。無理矢理10枚にしようとも思ったんですが、そこまでしても仕方ないかなあという気もするので、あえて今年のベストは5枚のみとしたいと思います。


1、FUTURE KINGS OF SPAIN 『(s/t)』 CD   Toshiba EMI(Gmt.Aozora/Red Flag) recs. TOCP-66290

A Place For Everything/Your Starlight/Venetian Blinds/Hanging Around/One Look/Simple Fact/Meanest Sound/So Wrong/Face I Know/Traps/Upside Down/Kick It

アイルランドの4人組ギターバンドのデビューアルバム。国内盤は2004年だが、オリジナルは2003年のリリース。プロデュースはFugaziの『Repeater』『In On The Kill Taker』を手掛けたTed Niceley。
M-1,2はファーストシングルからの曲で、シングルでは荒い音質もあってもろ2nd〜3rdアルバムの頃のダイナソーJrみたいだったが、アルバムではプロダクションもスマートになって再収録。全般的には往年のシューゲイザー的な暗さや線の細さも感じられる音だ。

一聴ではこれといって特徴のない地味なギターロックという趣きだが聴き込む程に、端正なメロディと練られた構成、ダイナミックな轟音ギター、そして徐々に胸に迫る情感に心が揺さぶられる。 '04年は個人的にいろいろ気が滅入ることの多かった一年だったが、このバンドの曲で本当に救われた思いがした。よって本年のベストアルバムとしたい。

'04年にリリースされたシングル『Le Debemos EP』(Red Flag recs. RF010CDS)も全曲素晴らしかった。
Finchの代役としてSONICMANIA'04で初来日ライヴ(しかもアルバム国内発売前)という、とてつもなく地味すぎる日本デビューだったが、再来日の際には是非観てみたいです。たぶん地味だろうけど。


-、STRAIGHTENER 『Lost World's Anthology』 CD   ToshibaEMI recs. TOCT-25271

A Song Runs Through World/Traveling Gargoyle/Tower/Don't Follow The Light/Mad Pianist/奇跡の街[Radio Freak Edit]/Stained Android/Freezing/DJ Roll[Video Addict Edit]/Magic Words

ギター/ボーカルとドラムスの2人組ロックバンド、ストレイテナーのメジャーデビューアルバム(インディーを含めると通算4枚目)。
スタジオ収録やライヴではサポートメンバーとして、元ART-SCHOOL・現ZAZEN BOYSのベースが参加している。

ロックのクリシェを多用してひたすら喪失感を綴った歌詞、直情的なギター、線の細めなボーカル。Asian Kung-fu Generationのような図太さや逞しさも無く、Ellegardenのように肩の力を抜いて戯けて見せる余裕も無い。 だが、この蒼臭さやヒリヒリするような切迫さに感じ入る部分は多かった。「空を飛べる君にはわからないだろう/風のない日の淀んだ水の臭いを」(M-7)、「逃げるのにはもう疲れた/戦うよりはマシだってんだろう、わかってるよ」(M-9)。まさに直球。 ロック好き中学生のようなタイトルセンスや正直恥ずかしい言い回しが目立つ歌詞がダメな向きもいるだろうが、これはこれで味わい深いというか個人的にはアリだろうと思う。

過去の音源でのメンバー写真ではイケメン風に移っていた彼らが、ビデオクリップのライヴでは汗でドロドロになって取り憑かれたように演奏していたのが象徴的だったように、根底では、スタイリッシュさとは無縁の泥臭さや格好悪く足掻くような姿が持ち味なんじゃないかと思う。
やっぱりどこかのバンドみたいに「一所懸命すぎて笑えるけど本当はマジなのよ」みたいな逃げを打っていちゃイカンと思うのですよ。


-、ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ソルファ』 CD   Ki/oon recs. KSCL737

振動覚/リライト/君の街まで/マイワールド/夜の向こう/ラストシーン/サイレン/Re:Re:/24時/真夜中と真昼の夢/海岸通り/ループ&ループ

アジカンの3rdアルバム。
1st>2nd>このアルバムと、正直どんどんテンションが落ちているように感じる。 前作からしばらくシングルが続いたが、個人的にはM-7を境に方向性を模索(悪く言うと迷走)しているように思えた。 M-7は彼らがアレンジレベルでは取り入れていたEmoを楽曲レベルで持ち込んだトラックであの時点での最高傑作だと思うが(もの凄い曲ですよ)、どうもファンの間でも必ずしも評価は高くなく、明らかに肩の力を抜いたM-3やM-12の方が高評価。 それはそれで悪くはないのだろうが、1stの闇雲な潔さからすると近年は小手先で勝負しているようにしか思えないのが辛いところ。

とまあ、いくらでも批評めいたことは言えるのだけれども、なんだかんだで一枚のアルバムとしては良かったし聴いた回数も多い。だが、もっと凄いものが作れるバンドだと思えるだけに、非常に微妙な気分は残る。次も期待してます(偉そうで申し訳ない)。


-、HERESY 『1985-'87 Discography Pt.1』 CD   Speed State recs. SSR-007

Never Healed/Deprived/Mentally Conned/Blinded By Power/Heresy (Instrumental)/Cries Of Want/Intro.../Disfigured World/Never Healed/Despair/Deathbiter/Anguish Of War/More Blood Is Shed/Dead/Visions In Fear/Path To Decadence/Make The Connection/Trapped In A Scene/Network Of Friends/Acceptance

UKノッティンガムが世界に誇る伝説のスピードコアバンド、ディスコグラフィーのパート1。
1stFlexi『Never Healed』+1stEP『Thanks』EP+未発表音源をメンバーのKalv監修でリマスターしたのが今回の内容で、Kalvの詳しい解説ライナーまで付いて\1500! SpeedState頑張りすぎ。
この後にリリースされた1stアルバム『Face Up To It』を含め、もともと当時からHeresyの初期音源は録音に難のあるものが多く、Lost&Found recs.の海賊盤『Voice of Fear』でも勝手にミキシングし直されてたぐらいだが、今回の公式リマスタリングで再評価の裾野が広がりやすくなったと思う (当時リアルタイムで1stを聴いた時にはその音質のショボさに本気でビビリました)。

Flexi音源ではメタリックでノイズコア色の強いReevesyのギターリフが前面に出ているが(曲も微妙にクラストっぽい)、それでも当時のUKHCとはニュアンスの違う爆発的スピード感とミッドテンポの織り交ぜ方に特徴があり、この時点である程度スタイルが出来ていた印象。 まあこの時期を最も評価している人もいるくらいで、正しく「スピードコア」と形容できるのはこの辺という気がする。そういった初期スタイルの魅力も『Pt.1』の聴き所だろう。
ギターがMitch(Unseen Terror/Napalm Death)に変わってからの音源はKalvのベースが前面に出てきて、曲も力押しだけでないフックの効いた展開になる。これ以降は『Pt.2』で、という感じか。

しかしやはり格好いいバンドだよなあ。最高です。


-、M.B. 『Archeo M.B.1』 5CD box   EES'T recs.(no-number)

Disc1: Symphony for a Genocide (ArcheoMB1/2MB002)
  Treblinka/Auschwitz/Maidanek/Auschwitz (Reprise)/Belzec/Chelmno/Sobibor/Accop (6) Ehte/Sordide Sentimental/Anesthesie Total
Disc2: Menses (ArcheoMB2/3MB003)
  YRA/SCENT/Milan Bruits/Industrial Murder/Menstrual Bleeding
Disc3: Neuro Habitat (ArcheoMB3/4MB004)
  Morder Unter Uns/Neuro Habitat/Plutoniometrio
Disc4: Regel (ArcheoMB4/5MB005)
  1/2/Acido Prussico
Disc5: Mectpyo Bakterium (ArcheoMB5/6MB006)
  Fetish Pinksha/Sterile Regles/Placenta/Untitled

イタリアのノイズアーティスト「M.B.」ことMaurizio Bianchiの、1981年から82年リリースの初期5作を集めたボックスセット。限定500セット。
各アルバムにはオリジナル音源の他、Broken FlagやCome Orgなどのコンピレーションに入っていたトラックが追加収録されているが、オフィシャルリリースということで当然ながら例の『Triumph Of The Will』『Weltanschauung』音源は収録されていない。

コラージュテープの回転数を転調させながら奇怪な音がループしつつも変化を続け、音像によるモアレが不安と安堵の間を行き来させる。ノイズと言うよりもサイケデリックな感触も多いその作風は、表面的な攻撃性よりも内部から腐り瓦解していくようなダウナーさを漂わせている(特に後期)。
中低音を中心としたアナログノイズの不穏当な響きは、現在のラップトップで作られたクリアなデジタルノイズとは明らかに異なる、心理的作用をも含んだ澱みを帯びている。それが初期M.B.の特色だろう。 知名度のわりには流通の良くなかったM.B.の音源が、数量限定とはいえ、熱心なノイズ愛好者でもない僕レベルまで入手できるようになったことは、いち音楽ファンとして嬉しく思う。

この他、ボックスセットのパートII『Archeo M.B.2』(「Das Testament」「Endometrio」「Carcinosi」「The Plain Truth」「Armaghedon」の1983年〜84年リリースのアルバム5枚を収録:限定500セット)、'98年以降の作品のボックスセット(Maurizio Bianchi名義になってからの「Colori」「First Day/Last Day」「Dates」3枚を収録:限定135セット)も併せてよく聴いた。
各ボックス自体は生産限定だが、それぞれのアルバムCD個別は特に限定無しで販売されており(収録トラックもまったく同じ)、流通も意外と悪くないと思う。興味があれば聴いてみて欲しい。


番外、VITAMIN X 『We Came Here For Fun EP』 7"EP Underestimated recs. (no-number)

The Poor Remain/Political Prisoners/Stab Me In The Back/Pull The Plug/People That Bleed//Wind Highway(instrumental)/Why Should I ?/My Rules/(I Don't Need Your)Bullshit

オランダのThrash HC combo、2001年春のUSツアー会場のみ販売で500枚限定の7インチEP。
入手が2003年末なので番外とするが、2004年もよく聴いた一枚。

side Aが2000年7月、side Bが2001年2月と、名作『People That Bleed』セッションの直前の音源で(別テイクですが2曲被ってます)全編テンションが高く、とにかくカッコイイとしか言い様がないドライビングHC。 特にB-4の凶悪RN'R展開は最高で、イントロのリズムから始まってギターが割り込む所で血圧が上昇して周りの人を無意味に殴りたくなる(笑)。『People That Bleed』と並んで、VX最高傑作と言い切っていいでしょう。ひたすらイカス!


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