Factory43's Best CD in 2007


2007年は、前半が'90sユースクルーリバイバル、後半は横田進やBurialなどのエレクトリックサウンド、一年を通じてAbout The FireとPerfumeをよく聴きました。
また、Birthday PartyやPop Groupなどの'80年代ニューウェーブ再発もの、Sound Horizonから志方あきこ・片桐烈火・霜月はるかなどのインディ女性ボーカルもの、It PrevailsやDance Gavin Danceなどのエモメタル、PinchやCyrus、Bruno Pronsato等のダブステップものなど、いろいろと聴きました。
Podcastは今年もよく聴きました。昨年は音楽の間の箸休め的な聴き方でしたが、今では生活の一部に「Podcastを聴く」という行為が完全に加わり、そのぶん音楽を聴く時間が目減りしたのも事実。Podcastより興味深い音楽でないとローテーションに入らない、と自分の中の敷居が一段高くなったように思います。

そんな2007年のベスト10+α。3位以降は順不同ということで。


1、About The Fire 『Six Anthems From The Comfortably Jaded』 MCD   Happy Couples Never Last recs. HCR042

So Close/To The Bone/Rise & Fall/Brookes Was Here/Make Yourself/Hitting Bottom/On The Way Back Up

カオティックハードコアのBURN IT DOWN、グラインド・デスメタルのHARAKIRI、同じくデスコアのUPHEAVALのメンバーによるサイドプロジェクト。
メンバーの物凄い経歴とは裏腹に出てきた音は、なんと男汁溢れる哀愁のエモロック。 LEATHERFACE meets CREEDというかニュースクール・メタル化したMOTORHEADというか、やたら音のデカいダイナミックなギターと凝った展開にハスキーな泣きのボーカルが乗る、渋パンク好きには堪らんサウンドです。 このミニアルバムの前に出た1st『Rites Of Passage』(HCNL040)では出来の良い楽曲の間にやや冗漫なトラックも散見されたが、こちらは捨て曲無しでコンパクトにまとまった素晴らしい一枚。
たぶん音楽的にはギターのRoss Neuの貢献が大きいだろうが、本職のSEVEN DEGREES FROM CENTER(エモハードロックバンド:こっちもかなりイイです)よりもメタル度は低く、パンクっぽさはボーカルのFat Sammy(ex. BETTER OFF DEAD)の持ち味だろう。 ちなみにバンドのビジュアルも、デブ+ハゲ+ジジイ+冴えない若者2名で最高に素敵です。

これは年中通して本当によく聴きました。いやホント、マジメに格好いいですよ。


2、Burial 『Untrue』 CD   Ultra-Vybe (Hyperdub/Cargo) recs. OTCD-2160/HDBCD002

(untitled)/Archangel/Near Dark/Ghost Hardwear/Endorphin/Etched Headplate/In Mcdonalds/Untrue/Shell Of Light/Dog Shelter/Homeless/UK/Raver

UKダブステップの雄、満を持しての2ndアルバム。
セルフタイトルの1st(FAEC/Rough Trade Japan(Hyperdub)recs.POCE-15004)では抑えた中に垣間見えるギラギラとした暴力性が特徴的だったが、本作ではメロウで愁いに満ちたストリングスと、切り刻まれピッチを加工されたボーカルフレーズが全編にフィーチャーされ、アルバム全体のトーンを形作っている。 そのダンスミュージックと圧倒的な内省性の同居が、スタイルとしての新しさが薄れたダブステップというジャンルの中でもBurialを特別にしている点だと思う(恐らくメディア等でMassive Attackと比較されるのもこの部分だろう)。
細かくチョップされたボイスとミニマルなフレーズが折り重なりエレクトロニカに近い音楽性を感じさせるM-5/12、同じくビートレスの歪んだメランコリーM-7/10、前作に近いM-3/11、そして胸を締め付けられるようなM-2/9/13。それらのバリエーションを支えるヘヴィなベースライン。
控えめに言っても、図抜けた名盤であることは間違いない。限りなく1位に近い、2007年の2位。オススメです。


-、Battery 『Whatever It Takes...』 CD   Revelation recs. REV:65

What I'd Give/Brand-new Place/Throughout/Leave It Behind/Part 2/Another Reason/Half My Time/You Can't Win/To Want/Retrace/Who Are You?/Whatever It Takes

ワシントンDCのYouthcrewバンド、3rdにしてラストアルバム。
(解散後にギターのKen Oldenがスペインのレーベルから出したベスト盤あり。『Final Fury: 1990-1997』(Soulforce recs. FORCE01-02/009)、1st『Only the Diehard Remain』・2nd『Until The End』とEP『We Won't Fall』『Let the Past Go』等から収録)
世間的には”あのBrian McTernanがかつて在籍したバンド”という認識以外にことさら音楽的に顧みられることの多くない存在だと思うが(正直僕もそうでした)、これがなかなか良かった。

2007年は前出のように'90ユースクルーリバイバルものをよく聴いていて、中でもノルウェー人脈(Onward〜Sportswear〜Damage Control/Death Is Not Glamorous、あとEyeball(半分ドイツだけど)〜Common Cause/Soulfireの流れ)とUSものが多かった。 で、USものでは基本中の基本In My Eyes(正直2nd『Nothing To Hide』が最高)とこのBatteryが双璧だったが、個人的にはIn My EyesのストレートさよりもBatteryの、特にKen Oldenのギターを中心にフックの効いた変化球気味の楽曲により惹かれました。
初期の、クラストっぽい堅いギターリフにリズムチェンジを導入して変化を付けるという独特の技に比べて、このアルバムでは若干ハードロック的なメロディックさが加わり、楽曲バリエーションが増えた印象。 このある意味聴きやすさよりも以前のハードさが好きという人も多いだろうが、曲ごとのメリハリが付いたことでアルバムの完成度は非常に高くなったと思う。 いずれにせよYouthcrewというある種のテンプレート感が存在するシーンの中で、独特な音楽性のバンドだった。

このアルバムリリース後、Brian McTernanはプロデューサーに転身して数多くのハードコアとエモ/メロコア/ギターバンドを手掛け、Ken OldenはWorlds Collide〜Damnation AD〜Better Than A Thousand(〜ツアーのみYouth Of Todayにも参加)、Ben ChusedはTen Yard Fightに参加。


-、capsule 『Sugarless Girl』 CD   Contemode/ヤマハミュージックコミュニケーションズ recs. YCCC-10008

Welcome To My World/Starry Sky/REALiTy/Sugarless GiRL/Catch My Breath/Spider/MUZiC/Melting Point/Sound Of Silence/Secret Paradise/Star Sniper (bonus track)

中田ヤスタカとこしじまとしこのハウス/テクノユニット、8枚目のアルバム。
前作『FRUITS CLiPPER』(YCCC-10005)からのエレクトロ路線に加速が掛かり、ハードな曲が増えた一方で今回もこしじまとしこのボーカルが減少。リリース直後は昔からのファンから賛否両論だったアルバムだが、これが個人的には結構良かった。 中田ならではの華麗でセンスある上モノ、キレのいいサウンドワーク、あくまで本格フロア路線には行かないポップセンスのバランスが絶妙で、VitalicやDigitalismがどうにもピンと来なかった自分もこれにはハマった次第。
神曲との誉れも高いM-2(12"EPも良かった:YCJC-10004)とM-9、口ずさめるM-4/6/10、中田スタイルのエレクトロチューンM-5/7/11(iTunesのみのボーナストラック)と、全くスキのない作り。

Perfumeがブレイクした今後、capsuleとしてどっちに向かっていくかに興味が集まるが、『FRUITS CLiPPER』とPerfume『リニアモーターガール』CDs(TKCA-72902)が同時期だったことを考えると基本はあまり変わらずに行くのだろうか。 正直エレクトロ〜テクノの文脈としては興味が薄いが、ポピュラーミュージックとしては注目していきたい。


-、D-Day 『Heavenly Blue』 CD   salaD-DAYs recs. SALA-003

Heavenly Blue/隠れ家/HERE I AM/あなたの宇宙/HALF MOON/Phoe'be/Kiss Me At The Garden Gate/虚っぽの世界/甘い予感 〜bitter sweet〜/HELLOw SORROw/MEMORY/Forget Me Not

永遠のカリスマ・D-Dayの、昨年出た16年ぶりのベスト盤『Crossed Finger』とソロ名義での2枚のセルフカバーCD-Rシングル『SEED CAKES』『SEED CAKES with icing』に続く、まさかまさかの新録音フルアルバム。
本作では完全に川喜多美子のソロユニットとなり、夫の成田忍(ex.Urban Dance/4-D)の全面バックアップで制作されている。なんとマスタリングは、ゆらゆら帝国やギターウルフなど轟音オルタナロックを中心に手掛けている中村宗一郎(ピース・ミュージック)が担当。どんな人脈だ。

M-3/6/7はベストにも収録された幻の2ndアルバム曲のリメイクトラックで、エレクトロポップを意識していた2nd版よりもロック的な輪郭がハッキリした新アレンジになっている(歌詞も若干変更あり)。 またM-11はあの名曲中の名曲のリメイクで、決して悪くないのだが個人的に元曲に思い入れが強すぎて、さすがにこれは感想保留という感じ。
(ソロの『SEED CAKES』もD-Dayカバー集なんだけど、あっちはソロライブからの流れからそういうコンセプトで演ってるわけなので、ほぼ同じメンバーとはいえ基本は別物だと捉えてます)

しかしこの声の破壊力は凄い。とても『Grape Iris』から20年経っているとは思えない瑞々しさだ(しかも微妙に巧くなっている)。 ささくれ立った印象のニューウェーブ・インディロック然とした初期の音から打ち込みメインのポップスにシフトしており(正確には未リリースだった2ndアルバムからだが)、 ともすれば普通に聴けてしまいそうな楽曲群に揺らぎを与えているのは川喜多のボイスであり、それを逆算して展開される楽曲とプロデュースがそれを成立させているといえる。
とはいえ、初期ニューウェーブ路線にも未練がある人間としては、今後はそういった楽曲のリリースも期待したいです。これはもう本格的な活動再開だと思うので。


-、Dead Stop 『I Just Want To Take A Walk』 7"EP   Six Feet Under recs. SFU001

In Hell/Hate Your Guts/Leave Me Alone/Take A Walk/Bullshit/Dead Stop/Stupid Fool/Get Lost/The Flex/My Life

ベルギーのオールドスクール・ハードコアバンド、あのSix Feet Under recs.からの1stEP(レーベルの初リリース作)。2005年リリース。
近年盛り上がったEarly'80-USHCタイプのスタイルで、ハードパンクを加速したようなラフな荒々しさとクレイジーなボーカル、短い楽曲は暴力性に満ちていて思わず暴れたくなります。
特にこのEPでは、アルバムよりもキレと破壊力のあるトラック満載でハードコアファン感涙の出来。特にバンドと同名曲M-6の凶暴さは最高です。

この後1st『Done With You』(Deranged recs. DERA58)、2nd『Live For Nothing』(Havoc recs. HC1229)と必聴のアルバム2枚をリリース後、2006年に残念ながらバンドは解散。
ギターはBetween The Lines参加後、現在White Circle Crime ClubとCreature with the Atom Brianで活動中(どちらもギターエモバンド)。ドラマーはex.JusticeのボーカルやTrue ColorsのメンバーとLoud and Clearを結成。 ベースはあのViolent Minds加入との噂(未確認)。
ちなみに似たような芸風の同郷Nothing Doneの2ndは不発でした…。こういうバンドはテンションを維持させるのが難しいのかなあ。


-、JUJU 『Wonderful Life』 CD   Sony Music Associated Japan(SME) recs. AICL1860

奇跡を望むなら.../Rush Hour/Song For You/あこがれてた関係/Lost & Found/笑顔の残像/Mis/Me Against The Material World/キミに会いに行こう/ナツノハナ/Sayonara/Open Your Heart〜素顔のままで〜/Wonderful Life

日本人女性ボーカリスト、デビューシングルから3年掛かっての1stフルアルバム。
昨年末から音楽番組などでよく耳にするようになり、6月のミニアルバム『Open Your Heart』(AICL1826)に続き短期間でのアルバムリリースとなった。 ロングランヒットのM-1、古典的洋楽テイストのM-2/13、アニメ「モノノ怪」EDでも使用された名曲バラードM-10と、粒よりの楽曲が収録されている。 前作ミニアルバムが別バージョンやカバー曲が多かったため(ちょっと売れてきたんで急遽作ったんだろうなと想像)、そのぶん本作の満足度は結構高いと思う。

この人の良さは、R&Bベースのシンガーでありながら過剰な歌い回しが無いこと。この手の女性ボーカルにありがちな、これ見よがしに暑苦しいテンプレートな歌唱法(またそれがネイティブっぽくて巧いとされてるんだよな)が大の苦手なので、こういったサラッと聴ける方がむしろ巧いと思います。 楽曲も初期こそはダンスチューン+ソウルという感じだったが、ここ最近の音源はどれも70年代にラジオで流れてそうなポップス感覚で統一されていて(この辺の音作りは完全に意図的だと思う)、前出の歌い方や声質も含めて、ちょっと国内では似てるシンガーがいない、独特の立ち位置に居る人だと思う。 またカバー曲の多さも特徴だが、DebargeやJanet Jacksonといったベタなものや、Billy Joel('70sラジオポップス的センスだ)からEurythmics、さらにDaft Punk(!)までカバーする選曲センスのヘンさが非常に面白い。
ライブも観たが(OLだらけで肩身が狭かった…)、フリートークのぶっちゃけ具合やグダグダな進行とか、本人も相当面白い感じでした。

他ミュージシャンへのフィーチャリングも多いのでどの辺を狙ってるのかが見えにくい人なのも確かだが、この取り留めの無さが逆にオリジナルな味だと思う。イイです。


-、Perfume 『Fan Service -bitter-』 DVD+book   徳間ジャパン recs. TKBA-1102

エレクトロ・ワールド/おいしいレシピ/コンピューターシティ/リニアモーターガール/モノクロームエフェクト/スーパージェットシューズ(by. Peachy)/OMAJINAI☆ペロリ〜ビタミンドロップ〜イミテーションワールド〜カウンターアトラクション〜彼氏募集中〜ジェニーはご機嫌ななめ/(backstage document)/パーフェクトスター・パーフェクトスタイル/コンピュータードライビング/スウィートドーナッツ/Perfume/Twinkle Snow Powdery Snow/wonder2

よく分からないうちに大ブレイクしてしまったPerfumeの、2006年12月21日に行われたXmasワンマンライブ「Perfumeがいっぱいサンタ呼んじゃいました♪」のDVD化。
2007年もリリース音源はすべて良かったが、やはり彼女たちの魅力はライブパフォーマンスにある訳で、楽曲の良さもさることながらあのダンスと妙なMCがセットでないとなあ(口パク上等ですよ)、と思って敢えてCDではなくDVDを挙げた次第。 忙しないカットワークや中間のドキュメント部分などは賛否の分かれるところだが、個人的には許容範囲。妙なテンションの帯が目立つブックレットも、のっちが可愛いので全てOK。ただDVDにチャプター画面を付けてくれよ、と。雑誌の付録だって今日びチャプター画面ぐらいは付いてますがな。

実際に行ったライブ(代官山UNIT・2007/07/05「ひこぼし☆募集中」:掟ポルシェも来てました)でも、冒頭の「チョコレイトディスコ」〜「コンピュータードライビング」〜「コンピューターシティ」の3連発で最前列辺りはハードコアのライブ並みのモッシュピットと化して、ブレイク前夜の凄さを500人規模のライブハウスで肌で感じられたのが印象的だった。 このDVDのM-6はカバー曲だが、当日も企画ものコーナーでHALCALIやTommy february6、「ムーンライト伝説」のカバーも(半分ギャグで)歌ってました。ブレイクした今じゃ演らないだろうなあ。
個人的には、ハレンチ☆パンチや嘉陽愛子たちも出演したアイドル合同イベント「Girl's BOX PREMIUM 01」(2007/01/07)でのパフォーマンスが本当に最高だったので(3人とも物凄く可愛いのよ)、当時ネット限定で配信した映像をDVDで発売して欲しいです。

あとcapsuleのアルバムでも思ったんだけど、中田ヤスタカの一部の音の使い方にYMOリスペクトを感じるのは僕だけでしょうか。「ファンデーション」の音色やSEとか『Technodelic』の頃のYMOみたいだし。まあピコピコ繋がりで初期YMOはよく言われてる気がしますが、後期YMOって渋すぎだろうと。


-、.point at others 『(s/t)』 CDs   Crashlanding recs./dp-(or not) dp recs./Shield recordings. SLD006/CR007,5SH

And I Like It/My Love/Point At Others/Too Close/Well/Innocence For Sale

オランダの激情ハードコアバンド、多分1stシングル。 メタリックでドライヴするギターと叫ぶボーカル、バカテンションで突っ走る楽曲というとRivalry recs.あたりの芸風だが、微妙なポップさや彼の地伝統のロックンロールっぽさもあって、これがなかなか良い塩梅。
このシングルリリース以降のバンド動向がまったく掴めない(というかバンド情報が公式HPにもあまりない)のだが、次の音源も待ってますので早まって解散しないように。


-、横田進 『Love Or Die』 CD   Skintone recs. STR-13

For The Other Self Who Is Far Away That I Can Not Reach
/A Slowly Fainting Memory Of Love And Respect And Hatred
/The Lonelines Of Anarchic Beauty Achieved By My Ego
/A Heart-Warming And Beautiful Flower Will Eventually Wither Away Become Dirt
/The Sin Of Almighty God, Respected And Beileved By The Masses
/That Persons Hearsay Protects My Free Spirit
/The Things That I Need To Do For Just One's Love
/The Scream Of A Sage Who Lost Freedom And Love Taken For Granted Before
/A Song Produced While Floating Alone On Christmas Day
/The Now Forgotten Gos Of Rocky Mountain Residing In The Back Of The North Woods
/The Sacred Ceremony Concieved By Chance Frim An Evil Lie
/The Destiny If The Little Bird Trapped Inside A Small Cage For Life

横田進の通算27枚目(ミックスとコンピを入れると33枚目)のアルバム。三拍子ダンスミュージックシリーズの三作目にして最終作。
一枚目の『Wonder Waltz』(Skintone STR-11)では三拍子に流麗なメロディを加え、さらに曲ごとにゲストボーカルを起用し、リスニング重視のポップミュージック的な仕上がりになっていたが、 二作目の『Triple Time Dance』(Skintone Sports Koplat-01)は一転してミニマルかつ極めて抽象性の高い音で構成されており(曲名も「3D1」など完全に記号)、ある意味で田中フミヤ的な、ダンスフロアを強く意識した内容だった。
この三作目ではピアノやストリングスによる美しいメロディが際立つリスニングアルバムとなっている。長文で意味性の強い曲名、確信犯的なアルバムタイトル。 耳に付くのはワルツのような三拍子感よりも、全体に漂うロマンティックさ。それも暗さや諦念の漂う、'80年代ニューウェイヴのような感覚だ。
(M-1では、ちょっとだけAPHEX TWIN『Selected Ambient Works Vol.II』を彷彿としました。いや全然似てないんだけど、曲への引き込まれ方が近いというか)

とにかく多作かつリリースペースが速いことで知られる横田進だけに(活動15年でアルバム26枚・一年でアルバム4枚リリースも有)、今はもう次のスタイルに移っていることだろう。彼の変遷の中で生まれた美しい一枚。



次点、Wrecking Crew 『Balance Of Terror』 CD   I Scream recs. 88.854.02

Out Of Touch/Always Talk/Guts & Glory/Straight Trough/Right Or Wrong/Nothing For Me/Too Late/Why Must They/Balance Of Terror/Old Enough/In Your Head/Holding Back/What Can I Do?/Confusion/My Mind's Diseased (by. Battalion Of Saints)

Boston's Legendary Hardcore、最高のアルバムの再発盤。 満を持して出たベスト盤『1987-1991』(Bridge Nine B9R-58:オマケEPが欲しくて直接Bridge Nine recs.に注文しましたよ…CD収録曲と同テイクの内容で爆死しました)が、リマスタリングという名目で原曲をいじり回した、あまりにも酷いリミックス具合で絶句し涙も枯れ果てた訳ですが、 こちらは「そのままの音」で非常にグッド。大阪の中古盤屋で\6,000払ってオリジナルを買った人間にとっては感涙のリイシューでした。VA『Boston Hardcore 89-91』に収録されていた2曲(M-13/M-14:Batsのカバーが最高)もボーナスで入って至れり尽くせり。 これでHawker recs.のライヴコンピに入っていた曲も入ってたら完璧でしたが、さすがにそれは無理か。
とにかく、未発表ライヴ以外に聴き所のないベストよかこっちの方が一万倍は良いです。必聴。


次点、井上麻里奈 『ビューティフル・ストーリー』 CDs   Aniplex recs. SVWC-7443
ビューティフル・ストーリー/変な恋/ビューティフル・ストーリー(オリジナルカラオケ)/変な恋(オリジナルカラオケ)

アニメ「月面兎兵器ミーナ」エンディング曲。プロデュースは中田ヤスタカ。
曲自体はボーカルを除けばPerfumeやMEGのアウトテイクと言っても違和感の無いテクノポップで、ピコピコSEと意外に泣ける歌詞が高ポイント(You leaded, I'll followなエモい歌詞がNew Order"Here To Stay"とシンクロすると思ってるのは、多分オレだけでしょうなあ…)。

梶浦由記プロデュースの1stEP『宝石』(SVWC-7319)や2ndEP『Energy』(SVWC-7325)では声域使ってかなりしっかりと歌っているように、声優としては歌が巧い方の彼女だが、Perfumeや嘉陽愛子、MEG、鈴木亜美などの中田プロデュース作と同様、 この曲では感情の起伏や歌い上げるニュアンスは封印されてフラットで淡々としたアイドル唱法(例のごとく軽くボイスエフェクトが掛かっていて、しかもややアニメ声)になっている。だが、むしろそれが良い。(ここ重要)
PVの変な踊り(苦笑)を見ても明らかなように狙いは「ひとりPerfume」だったのだろうが、結果的にこの路線は今のところこれ一枚で、ライヴでもアコースティックアレンジで歌われていることを考えると、もうこういうのはやらないんでしょうか。残念。


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