Factory43's Best CD in 2008


あくまで結果的にですが、2008年は世間で流行った(&流行りそう)なバンドや音源をよく聴きました。何気なくネットなどで耳にして良かったバンドを聴いていたら、実はすでにブレイク前夜で注目が集まっていたり、ということが多かったです。反面、そういうパターンで聴いて自分的にダメだった音源が、後に世間的に評価が高かったりもしました。(GlasvegasとかMichiとかMGMTとかHercvlez And Love Affairとか)
今年はこれ!という強力な一枚はありませんでしたが、その分、聴いた音源全体のアベレージは非常に高かったと思います。

ベストとして並べてみるとハードコア度が低い感じになりました。20〜30枚は聴いた筈なんですが、最終的にはあまり残らなかったというか。仏UPxRIGHTS、フィンランドTurn The Tide、独HOODSxUP、ポーランドHundred Inch Shadow(解散しちゃいました…)とかの欧州モノが良かった印象。
あとインダストリアル系の再発・再々発が多く(Einsturzende NeubautenやNocturnal Emissions、Throbbing Gristle、Esplendor Geometrico、Test Dept、初期Cabaret Voltaireなど'70年代末〜'80年代前半ぐらいのもの)流通もそこそこ良く入手しやすかったので、その辺も結構聴きました。

例年同様、Podcastは変わらず聴きました。Podcastのオリジナルの大半はラジオ放送ということで、Podcast版でカットされた部分を聴くために今年はラジオレコーダーも購入。出掛ける時は録音したラジオ番組かPodcastを聴いていました。いやラジオ面白いっすよ。

そんな2008年のベスト10+α。今回は順不同ということで。


-、2562 『Aerial』 CD   Multiverse Ltd./Tectonic/Baked Goods recs. TECCD004

Redux/Morvern/Moog Dub/Channel Two/Techno Dread/Basin Dub/Greyscale/Enforcers/Kameleon/The Times

オランダ人のDave HuismansによるTechno/Dubプロジェクト、この名義での1stアルバム。
Pinchのレーベルからのリリースということからの分かるように、いわゆるダブステップと呼ばれる音楽性だが、リバーブの効いた音数の少ないミニマルなサウンドは(世間でもよく言われるように)Basic Channelが最も近いだろう。ただし、ヘヴィなボトムとリバーブの効いた上モノ・ミニマルな展開に加えて、ダンサブルな2stepリズムやトラックによってはハウスっぽい抜け具合もあって、そのハイブリッドさ(幾つかの曲名にも表れている)がユニークで聴いていて非常に楽しめる。
久々に国内盤(ボーナストラックあり)が出るのをどうしても待てずに輸入盤で買ってしまった一枚。かなり聴きました。


-、Friendry Fires 『Friendry Fires』 CD   Warner Music Japan/Beggers Japan(XL recordings) recs. WPCB-10085

Jump In The Pool/In The Hospital/Paris/White Diamonds/Strobe/On Board/Lovesick/Skeleton Boy/Photobooth/Ex Lover/Your Love (by.Frankie Knuckles)/Bored Of Each Other

UKロンドン出身の3人組ロックバンド。デビューアルバム。
ダンスロック系の中でもエレクトロ/ハウスの影響をかなり強く受けているのが特徴のバンドで、最近多いTalking Heads風ホワイトファンク・ロックのバンドとはひと味違った音楽性がユニークだ。時としてギターのファンクネスよりもエレクトロの陶酔感が曲の中心に置かれており、それでいてリズムは四つ打ちキックのハウスにはならないという軸足ロックっぽさも残っていて、非常に面白い。曲の構成や音の質感も練られていて、効果的なテンポチェンジや何気にボーカルや楽器を弄ってあったりとよく作り込まれている。
特にM-1・M-3の群を抜く名曲さはガチだろう。ポップなメロディライン、煌めくエレクトリック、ヒプノティックかつ高揚感あふれるリフレイン、「ここではない何処か」の歌詞。まさにハウス的なスタンスが魅力的に溢れている。そんなバンドのスタンスを象徴するFrankie KnucklesのカバーM-11は実はちょっと微妙な出来(地味だし面白みに欠ける感じ)だったりするが、このロックバンドとしての独特の立ち位置、そして出来の良い楽曲の数々を評価したい。

最初聴いた直後は「今年のナンバーワン決定か?」とかなり盛り上がったのだが、まあ他もレベル高かったということで。でも素晴らしいアルバムだと思います。


-、Does It Offend You, Yeah? 『You Have No Idea What You're Getting Yourself Into』 CD   EMI Music Japan recs. TOCP-66765

Battle Royale/With A Heavy Heart (I Regret To Inform You)/We Are Rockstars/Dawn Of The Dead/Doomed Now/Attack Of The 60ft. Lesbian Octopus/Let's Make Out/Being Bad Feels Pretty Good/Weird Science/Epic Last Song/Like The Way I Do

2006年から活動する、英国4人組バンドのデビューアルバム。
Daft Punk的エレクトロのM-1・M-3、Franz Ferdinand風ディスコパンクM-2、ギターロックM-4(名曲)・M-5と、冒頭からトラックごとに芸風の異なった曲調が並べられ、それは一枚を通じて変わらない。 パンクやエレクトロやファンクなど、複数の音楽性に影響されてそれらのクロスオーバーが伺えるバンドというのは近年極めてありがちだが、ここまでハッキリと多様な要素が混じらずに出ているバンドも珍しいだろう(どうも当初は音楽性をまとめようとしたらしいが、M-4が出来た時点で開き直ったらしい(笑)。ちなみにその辺を語ったインタビューもボンクラ発言連発で、個人的にはかなり好印象)。各々の曲のオリジナリティは皆無だが、この何らまとめる気のない投げっぱなし感が、むしろ数多いこの手のバンドとの差別化になっているというのが逆説的で、ある意味凄いと思う。インテリジェンスを全く感じさせない素敵な曲名にも注目したい(笑)。
なぜわざわざ買ったのか自分でも不思議なほど覚えていないCDだが、多分まったく期待してなかったのが良かったのかもしれない。シリアスな音楽に疲れた時に気楽に聴けて、気の利いたメロディとポップ感、曲ごとのバリエーションを楽しむということでは重宝したアルバム。


-、The Troubadours 『The Troubadours』 CD   BGM Japan(Mod Art Sounds) recs. BVCP-24142

Where The Rain Falls/(I'm Not)Superstitious/Still Waters/Surrender/Gimmie Love/The Scene, It Keeps Changin'/Con Edison/Deep Devotion/God Given Grace/All The Kings Men/Windfall/Gimmie Love(Video)

リバプールのギターポップバンド、デビューアルバム。
まさに現代に甦ったThe LA'sの1stとしか言いようのない音楽性だが(Vo.もリー・メイヴァース先生に似てる気がする)、曲自体の完成度とポップさではこちらが完全に上。 日本でもオンエアされまくったシングル2曲・M-2とM-5は「いかにも」な感じながら飽きの来ない出来だし、とにかく圧倒的に良く出来た曲が多い。
(ちなみにアルバム先行の日本企画シングルコンピ『The Troubadours EP』(BVCP-28097)ではM-5はアコースティックテイクで、その出し惜しみぶりにイラつきました)
オープニングトラックM-1の「始まる」ワクワク感、レトロな雰囲気を出しながら捻りもあるM-4・M-7、気の利いたブリッジ曲M-3・M-8などなど、どの曲もシングルで出せそうな感じ。所々でThe Stone Rosesの1stを思い出したりして。いやーなんか久々な感覚ですなあ。

出身地や芸風からThe LA'sと比べてしまったが、まあ音楽性のルーツは確実にThe Beatlesなわけで。もちろんアレンジや音作りに現代ロックを通過している感覚はあるが、奇をてらったギミックや過剰な激しさは一切無しで演奏と曲の良さで勝負する、近年あまりない至極真っ当なギターバンドだ。
最近は「UKの新人バンド」というと一定範囲の音楽性を指すことが多いが(偏見?)、そういう食傷気味の中から、まだこういうバンドが出てくるあたりはさすが英国だと思う。UKギターポップの底力を感じた一枚。


-、Last Of The Believers 『Paper Ships Under A Burning Bridge』 MCD   Adrenaline (self) recs. 37

Dissent/Throwing Matches/Workhorse/You Get What You Get/Fists Up/A Long Time Coming/Throwing Matches (Acoustic)

元REACH THE SKY〜RISE AGAINSTのG.のChris ChasseとIGNITEの現役B.のBrett Rasmussenが、元SPARK OF LIFEのボーカル&ギター(Steve JenningsとNick Piscitello)と合体して出来た4人組バンド(後に正式にDr.が入って今は5人組)。これは2007年に自主レーベルから出た5曲入り1stシングルにM-6とM-7の2曲を加えたリニューアル盤(ジャケットに"version2"の記載あり)。
メロディック・ハードコアとエモの中間を行くサウンドで、所謂LIFETIME〜STRIKE ANYWHERE以降のパンクサウンドだが、ハードなギターとキャッチーなメロデイの完成度は非常に高い。ベタなパンクサウンドの他にUSインディロック風のギターバンド曲もあり、今後どちらに振れるのかは微妙なところだが、M-6のエッジの効いたギターリフとエモいメロディはとにかく絶品なので、個人的には今ぐらいの路線を突き進んで欲しいところ(と言いつつ、なんかギターロック方面に行って平凡なバンドになりそうな気が…)。


-、Reach Up To The Universe 『You & Me』 CD   Excite Music Entertainment/Evol recs. XQCZ-1102

Hand In Hand/SUNSHINE/Sweet/How Long?/Faster, Mistake/Nothing But You/S.T.A.R.S/小さな音楽会/Save Me/Wonderful World

チェロを含む、日本の5人組ロックバンド。前作ミニアルバム『Reach Up To The Universe』(XQAF-1003)までの外人Vo.から交代し(日本人の初代Vo.が出戻り)、2曲入りシングル『Sweet Stars』(XQCZ-91001)発表後のこれが1stフルアルバム。
以前はチェロやホーンの入れ方が面白くありつつも、端正なメロディとネイティブ英語Vo.が故に、単に「地味な洋楽ギターエモポップ」という趣だったが(Last Days Of Aprilのカバーアルバムに参加してたのが象徴的)、本作では一皮剥けた印象。以前からの楽曲構成はベースに残しつつも、ドライヴするロック感とポップなメロディ、日本人としては馴染みやすいVoスタイル、さらにはエレクトロも持ち込んで、本来持っていた良い意味でのキャッチーさが爆発した感じだ。以前の音源での、難しい顔でエモっぽい音を出していたイメージから比べると、解き放たれたような自由さすら感じられる出来。
シングルやコンピなどで既発表の曲が多い(M-3/5/7:前作ミニアルバムも半分が既発表曲でした)が、正直外人Vo.時代より今の方が良いので過去曲の新バージョン収録はむしろ望むところ。

今後は、フル英詩でどこまで行くのか(今のサウンドとVo.なら日本語詩の方が良いと思う)、このギターロック路線と渋エモ路線をどう折り合うのか、に注目したい。
ちなみにタワレコで買うとボーナスCD『Small Concert』が貰えました。弾き語り風で地味だがいい曲でした。


-、Perfume 『Game』 CD+DVD   Tokuma Japan Communications recs. TKCA-73320

【CD】
ポリリズム/plastic smile/GAME/Baby Cruising Love/チョコレイト・ディスコ/マカロニ/セラミックガール/Take Me Take Me/シークレットシークレット/Butterfly/Twinkle Snow Powdery Snow/Puppy Love
【DVD】
ポリリズム(live at LIQUIDROOM Nov.8 '07)/Seventh Heaven(live at LIQUIDROOM Nov.8 '07)/マカロニ(Original Version)/セラミックガール(Drama Another Version)/マカロニ(A-CHAN Version)/マカロニ(KASHIYUKA Version)/マカロニ(NOCCHI Version)

'07年の『ポリリズム』でブレイクし始めたPerfumeは、'08年頭の『Baby Cruising Love』で完全に世間に認知され、その後のCDランキングやテレビでの快進撃は皆さんの知っての通りなわけです。もはや国民的アイドルという感じでしょう。
以前の、僕は好きだけど周囲の一般人には勧められなかった(正直キモ恥ずかしいし、「音楽的に良い」とかマジメに主張するほど余計にドツボな感じで…)ような存在から、フツーにみんなCD持ってるしカラオケでも歌える状況にあっという間になったことは、個人的にまさに「衝撃」と言っていいようなインパクトがあった。「えぇ、みんなOKなのコレ? マジで? なんだよ〜え〜!?(半泣き)」みたいな。いやホントに大ショックでした。
そんな1年の象徴として、このアルバムを挙げておきたい。

プロデューサーの中田ヤスタカ自身はインタビューで「ポップなことは全てPerfumeで行う。面白いと思うことはcapsuleでやる」と宣言しつつも、圧倒的にPerfumeだけが評価されていることに戸惑いと若干の不満を表明していた。その中田ヤスタカのアンビバレンツさは、常々「関わる気はない」と公言してきたPerfumeライヴへの関与、そして'07年11月のリキッドルーム2daysでのPerfumeメンバー不在でのインストMIX20分攻撃などに現れていたが(誰も喜ばんだろコレ)、本作でもサビ以外ポップさを抑えたエレクトロなトラックM-3を敢えてアルバムタイトルに持ってくるあたりにその辺の気分が出ていると感じるのは考えすぎだろうか(capsuleでも一番エレクトロなトラックを毎回タイトルにしてるけど、同じセンスでPerfumeも行くのか〜という違和感もあるし)。

いずれにせよ、ちょっと尖りつつも歌謡アイドルポップスのフィールドで収まりよくやっていた時期とは変わってきたことは確かで(アルバム内でのM-5とM-11の浮きっぷりを見れば瞭然だ)、シングル『Love The World』(TKCA-73330/TKCA-73315)はオリコン1位でありながら収録の両曲とも危ういバランスで成立していたと思う(「Edge」は露骨トンガリ、「LTW」は隠れトンガリ)。2008年を締めた『Dream Fighter』(TKCA-73390/TKCA-73395)の分かりやすさ重視というのも含め、今後どういう立ち位置のサウンドでPerfumeは行くのか。その時にcapsuleとMEGはどこに向かうのか。もの凄く興味があります。


-、Stupids 『Complete Peel Sessions』 CD   Disk Union(Boss Tunage) recs. BTCRS-034

Layback Sessions/Jesus Do You Have To/Rootbeer Death/The Memory Burns/Slumber Party Massacre/Inbred Zombies/Gimme Donuts/Hot Babes/We're Gonna Eat/John Peel/Life's A Drag/Heard It All Before/Shaded Eyes/Dog Log/Stupid Monday/You Die/You'll Never Win/Pasta Boy/Your Little World/You Don't Belong

降って湧いたような2008年のStupids再発祭り。過去何度かあった再リリースと今回が異なるのは、各音源ともバンド監修でリマスタリングされていること、国内盤には全アルバムにTommyやEdのコメントがライナーで付いていること(これは嬉しい)、無かったこと扱いだったVinyl Solution recs.時代の音源も復刻されたこと(国内盤は出てませんが)、そしてアルバム初回盤のみ付いていたボーナスEP等のかなりレアな音源までも収録されていることだ。
特にPeel Sessionについては12インチ・7インチともかなり以前に廃盤になっているうえに、Frankfurter名義(7 Secondsの替え歌やってます(笑))や番組後期の音源も入っていて(第3回目のPeel Sessionを聴いたことがあるのは現地人以外はほとんどいないのでは?)、個人的にはかなり感動しました。
まあ、ほとんどのアルバムをアナログLP&CDで持っているのに今さら買い直すのも厳しいが(結局、全部買い直したよ…)、この『Peel Sessions』はCD未発表度が高いので、ファンなら是非。最高です。


-、 『寝・逃・げでハレ晴れ!セーラーふく』   *no-label. *no-number.

2008年に個人的に盛り上がったのがニコ動のマッシュアップもの。Youtubeなどの普通のマジメな洋楽マッシュアップと違い、ニコ動のものはアニメネタやアイドル・お笑いなど「普通は考えてもやらない」系がやたら多くて非常に楽しんだ。 特にインパクトがあったのは一連の「らき☆すた」ネタで、中でもこの「らき☆すた」〜「ハルヒ」をマッシュアップしたMADは素晴らしいの一言。
元は、福原香織『寝・逃・げでリセット!』、平野綾/茅原実里/後藤邑子『ハレ晴レユカイ』、平野綾/加藤英美里/福原香織/遠藤綾『もってけ!セーラーふく』『かえして!ニーソックス 』の4曲をマッシュアップしたもので、一部「CLANNAD」からと、ハルヒお約束ネタの「WAWAWA忘れ物〜」も入ってます(笑)。 原曲を聴いた人なら分かるとおり、どれもピッチも曲調も全く違う音源(『かえして!ニーソックス 』なんかギターバリバリのアイドルパンクだし)なのを、 まったく違和感なく1曲にまとめた上に、しかも「これは元々こういう曲」と思い込みかねない完璧なレベルで成立させているのが凄すぎる。いくらツールや環境が進んだとはいえ、これが元音源を持たない一般人が後付けで制作した物なんだもんなあ。センス・テクニック・労力とも、本当に凄いです。

ちなみにマッシュアップのベースとなっている『寝・逃・げでリセット!』(Lantis recs. LACM-4406)は中田ヤスタカ風のアイドル・ライトテクノポップで、編曲のnishi-kenは実際に中田ヤスタカ人脈の人(アイドル方面のアレンジャーでよく見かける)だったり。単体としても非常に名曲なのでオススメです。もちろん僕も買いました。
この他、半分のピッチにした「らき☆すた」OPとBeastie Boys(「Triple Trouble」など4曲、しかも冒頭はRUN DMC)をマッシュアップしたモノ、Goldfrapp「Utpia」のHardfloor mixとNew Order「Blue Monday」をマッシュアップした上から中島愛「星間飛行」を混ぜるという荒技ネタなど、なんというか凄すぎる逸品もありました。ニコ動職人、恐るべし。


-、Bonnie Pink 『鐘を鳴らして』 CDs+DVD   Warner Music Japan recs. WPZL-30098/99

鐘を鳴らして/Pump It Up!/A Perfect Sky (Bjorn remix)/鐘を鳴らして(instrumental)/Pump It Up!(instrumental)

Bonnie Pinkについては正直そんなファンでもなかったのだが、このシングルはかなり良かった。特に、2008年は短期で渡米していたのだが、その期間は非常によく好んで聴きました。
魅力的だと思うのはボーカル。独特の節回しと発音が妙に特徴的で、時として日本語ネイティブの人だと思えない辿々しさ(英語が堪能だとかいう比較抜きに日本語単体でそう思う)すら感じるが、それがむしろ官能的に聞こえて個人的にかなり好きだ。
曲もスエディッシュポップに向いていた頃よりも近作の方が、'80年代的なキャンプさや表面的には作り込んでない感じ(実際は音の抜き方などかなり計算してやってると思う)がアレンジの幅として面白く出来ている。M-3はヒットシングル曲の3バージョンめで、チープなキーボードリフやラフなコーラスの導入などは、オリジナルバージョンやシンフォニックバージョン(アルバム『Thinking Out Loud』(WPZL-30060/61)収録)が好きな人には評価低そうだが、このアレンジの巧みな力の抜け具合は個人的に相当良かった。いいセンスしてます。



次点、H.D.Q. 『You Suck !』 CD   BIG BEAT recs. CDWIKM193

You Suck/Grey World/I Will Not/Those Remembered Times/Have Faith/I Try/Trust/Positive Attitude/Redneck/Tombstones Of Blasphemy/Race Riot/Believe/There Comes A Time/Falling/Through My Eyes/Love Alone

'80sUKメロディックパンク・レジェンド、H.D.Q.=Hung, Drawn & Quarteredの、1987年リリースの2ndアルバム。
オリジナルのLP版はあのMeantime recs.から出ていたもので、CD化にあたり、1988年のEP『Believe』(M-12〜15)、および1989年のコンピレーションLP『Underground Rockers Vol.2』収録曲(M-16)が追加されている。
Stupidsと同じく、2008年はBoss Tuneage recs.がH.D.Q.音源をボーナス付きで相次いでCD化して話題になった。3rd『Sinking』(BTRCRS008)はPeel Sessions1回目とカセットテープで出ていた「Life Is Change」デモセッション、4th『Soulfinder』(BTRCRS011)にはPeel Sessions2回目と「Sinking」未発表デモテイク(Dr.がLaineyのバージョン)、さらに未発表ライヴ曲まで収録。まさにここまでやるか!という感じで、凄すぎるよBoss Tuneage。
そんな中、知らないうちにCD化されていたのがこの2ndで、リリース元のBig Beat recs.はLink WrayやThe Crampsなどガレージパンク〜サイコビリー系や'60sポップスを数多く出しているレーベル。なぜBoss Tuneageじゃなくてここから出たのか理解に苦しむが、すでに無かったことにされてレア化している1stアルバム(汗)のことを考えれば、容易に聴くことができるようになったことを素直に喜びたい。

この15年以上、世間的には3rdか4thが素晴らしいということになっているが、僕としてはあえて2nd最高!と言いたいと思う。後期ほど凝ったメロディと良いサウンドプロダクションにはなるが、一方でダイナミックさやストレートに響く感じが減少し、「軽く」なってる気がして仕方ない(Dag NastyとかDown By Lawとかもそうなんだけど)。その面で2ndはシンガロング出来るメロディとガツンと来るギターが本当に格好いいし、馴染みが良いと感じる。M-11は3rd、M-4とM-12は4thで別テイクが聴けるので比較してみると分かりやすいと思う(M-16は3rdにも同テイクが収録されているが、リマスタリングされて若干サウンドが変わっている)。ちなみに、同じ理由でPeel Sessions音源も両方ともかなり良いです。オススメ。

実は個人的にH.D.Q.自体は、当時はあまりにメロディック過ぎて正当に評価する気がしなかったのだが(だってHeresyとかNapalm Death聴いてた時期だし…Snuffとかも聴いてたけど)、改めて聴くとかなりハマりました。ドライブするギター、ポップすぎないメロディ、どことなく微妙にヘタレた感じ(褒めてます)も味わい深いです。


次点、中島愛 『星間飛行』 CDs   JVC Entertainment (Flying Dog) recs. VTCL-35029
星間飛行/ねこ日記/愛・おぼえていますか(デカルチャーエディションsize)/私の彼はパイロット(Miss Macross 2059)/星間飛行(without Ranka)/愛・おぼえていますか(デカルチャーエディションsize without Ranka)

『7』にも『2』にも『PLUS』にもハマりきれなかったオッサンにとって、『F』は久々の「俺たちのマクロス」だったわけで(今となっては、やや過去形)。
この曲はそのテレビアニメ『マクロスF』第12話に挿入歌として使われ、第17話ではOPとしても流された曲で、ヒロインの片方:ランカ・リー役の中島愛のデビューシングル。作詞は松本隆、作曲は菅野よう子。

個人的には、CDを10枚以上持っていながらも菅野よう子を微妙に評価していない部分があって、どんなジャンルでもクオリティ高く曲作りする反面、どの曲も本人の思い入れや感情が薄く、完成度は高いが熱量の低い作曲家という印象が強い。出来栄えや器用さよりも情念や没入感が好きな僕としては、それが原因で曲自体は結構好きなわりには自分が菅野ファンだとはあまり思っていなかったりします。
そんな姿勢ではあるものの、年間を通じて印象に残った曲としてこのCDは挙げておきたい。アニメ本編同様、初代の「私の彼はパイロット」をオマージュした歌詞と曲調は古式ゆかしい典型アイドルポップスなれど(でも実際こういう曲歌うアイドルって居ないよな)、サウンドプロダクションは現代ポップスっぽいし、大御所・松本隆による可愛らしいんだけど一抹のネガティブさをまとった歌詞も本当に素晴らしいの一言(中川翔子の作品でも良い仕事してました。やっぱ凄えよこの人)。
ちなみにもう一方のヒロイン、シェリル・ノーム starring May'n『ダイアモンド クレバス/射手座☆午後九時Don't be late』(VTCL-35025)もグッドでした。

しかしアニメ本編に関しては、正直「1クールめは素晴らしかった」というのが偽らざる心境だったりします…。後半はちょっとマジメにやりすぎたというか。あくまで「軽み」あってのマクロスだと思うわけで。まあいいや。


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