その21 離陸直前で降ろされそうになる!?@1997年5月
そ |
れはHoustonでの長期出張中に一人でPortland(オレゴン州)とSeattle(ワシントン州)にある客先訪問をしたときのことだった。
実はこの出張、米国内で初めて一人で出張したデビュー戦だったのである。
最初の目的地であるPortlandへはHoustonのIAH空港からPhoenix空港(アリゾナ州)を経由した。
Houstonでのチェックインは何の問題もなく、夕方にPhoenix空港からいざPortland空港行きの飛行機に乗り、搭乗券に記載されている自分の席に座っていた。
すると離陸少し前にある女性が私の席のところへやって来て、“ここは私の席よ”と言う。
そんなことはないだろうと思い、搭乗券のシート番号を見せた。
するとその女性も私と同じフライトで且つ同じシート番号の半券を持っている。
あれっ?と二人とも困った顔をしながらも、その女性は“航空会社の人に聞いてみる”と言ってその場を去った。
まぁ、アメリカ人は結構いい加減だから、よくある何かのミスだろう?と思い、雑誌を読んでいた。
10分くらい経っただろうか、今度は航空会社の女性とさっき話をした女性の二人が私のところへ来た。
そして“このシートは彼女の席です。”なんてことを言い出した。
“はぁ?“と言いながらも私はさっき見せた搭乗券の半券を航空会社の人に見せたが、彼女がその半券を見ながら乗客名簿と照らし合わせた後にこんなことを言い出した。
“あなたの名前はこのフライトの乗客名簿にない。
このフライトは満席なので、次か何かのフライトに搭乗してください。
まずはこの飛行機から降りて!”
いきなりの展開に私は絶句した。
でもここで降りるわけにはいかないので、反論する。
“私はどうしても今晩中にPortlandへ到着して、明日朝一から仕事で客先訪問しなければならないんだ。
だからこんなところで降りる訳にはいかない。
大体、この搭乗券は一体何なんだ!
一旦はこのフライトでの搭乗を認めて、いきなり降りろとは一体何なんだ!
何がともあれ、席を確保してくれ!!!“
と必死に言った。
実はこのときはまだ英語なんて全くといってよいほどしゃべれる状態にはなかった。
しゃべるにしてもたどたどしい、しかも単語を一つ一つ思い出しながら文章を頭の中で成立させてからしゃべる状態だったのだ。
しかし、人間切羽詰まるとどうにかなるものだ。
というのは、このときだけは何故かペラペラとしゃべれたんです。頭の中で文章を組み立てずに・・・。
すると航空会社の女性は改めて他の同僚と話をし、別のシートを用意してくれて何とかそのフライトで目的地へ行くことができた。
あぁ、良かった、良かったとほっとしてホテルへと向かった。
翌朝の6:00、まだホテルで寝ていた私の部屋にうるさい電話の呼び出し音が鳴り響いた。
“ううううん、何だよ〜っ! 朝っぱらから電話が鳴りやがって!
大体いこの時間にオレに用事のある人間なんているわけがないだろう? 誰だ?“
と思いながらもしぶしぶ電話に出る。
するとHoustonのトラベルエージェンシーからだった。
彼女の最初に一声は
“COBRAさん、このホテルに泊まることができたんですネ!
よかった、よかった。”
“は〜っ?(What?)”と言った私。
すると彼女は
“昨日PhoenixからPortlandへのフライトで何かなかった?”
物忘れの早いというか、まだ寝ぼけている私は
“特に何もなかったけれど・・・。”
と答えると、
“実は何故だか分からないんだけれど、あなたのPhoenix〜Portland間のフライトが誰かによってキャンセルされていたのよ!”
“えっ? ・・・・・・・・・・・・。 あれっ、そう言えば乗客名簿に私の名前がないって航空会社の人が言っていたけど、あれって本当なんだ?”
と今度は私がびっくりした。
“そうだったの、でももう大丈夫。これから先のフライトは間違いなくちゃんと予約されているから。 ところで今何してた?“
“いやぁ、まだ寝ていた。”と答える私。
“あら、そう。 それはゴメンナサイ。 じゃぁ、Have a good day!”
と言って、彼女は電話を切った。
あぶね〜、あぶね〜。 やっぱり自分が正しいと思ったらきちんと自己主張しないとこの国ではどうなるのかわからんな・・・・・・。
と改めて思い、再び寝始めた。
当然その出張はその後何のトラブルもなく、無事にHoustonに着くことができた。