その25 初めての海外旅行?@2003-9-30


の中にはスゴイ人がいるものだ。

前の章でも話したが、バンコク行きの飛行機に乗り遅れそうになったが、何とか間に合って自分の座席を探した。

すると私のシート(A席→窓側)に綺麗な女性が座っていた。

あれっ?と思いその女性に確認してみると、どうやらその人が前のシートと間違えていることが分かった。

しかし隣のB席もC席も空いているし、ひょっとしたらお話ができるかもと淡い期待を込めて、

“いや、いいですよ。私はC席に座りますから・・・。”

と調子よく言いながら自分の席でないC席へ勝手に座った。

飛行機が離陸してからしばらくすると機内サービスが始まった。

タイ航空と全日空の共同運航便だったがスチュワーデスは白人の女性で、

“何か飲み物は?”

と英語で聞いてきたのでトマトジュースをお願いした。

そしてそのスチュワーデスは次にA席に座っている女性に同じ質問をした。

すると、

“冷たいお水をお願いします。”

と何の動揺もなく、いかにも丁寧な日本語でしかも堂々とゆっくりと返答した。

というか、びっくりしたのは逆にスチュワーデスと私。

 “???”

と一呼吸おいた後にもう一度英語でスチュワーデスは同じ質問をする。

するとどうだろう、A席の女性も全く表情かつ表現で全く同じ答え。

“冷たいお水をお願いします。”

明らかにスチュワーデスは思いっきり動揺して困った顔をしている。

が一方、A席の彼女は相変わらず堂々としていて何の動揺も見えない。

仕方がないので、“冷たい水と言っている“と話してあげて彼女は水をゲットできた。

すると彼女はこれまた日本語で、しかも丁寧でゆっくりと

“どうもありがとうございます。”

と微笑みながらスチュワーデスへ言った。

 しばらくしてから今度は機内食サービス直前のドリンクサービスが始まった。

さっきと同じスチュワーデスが来て、再度同じ質問を英語で彼女にする。

しかし、答えさっきと全くいっしょ。

“冷たいお水をお願いします。”

相変わらず丁寧な日本語でしかも堂々とゆっくり返事する。

さすがに私も次は、

“冷たいお水をくださいと丁寧語で言っている”

と伝えてあげた。

するとスチュワーデスはにっこり微笑んで水を彼女へ渡す。

すると彼女は再び

“どうもありがとうございます。”

と。

しかしこれがきっかけでA席の女性と話をすることができた。

 

“海外は初めてですか?”

と聞くと彼女は、

“はい、初めてなんです。修学旅行を除いて一人で自分の意思で静岡を離れたのも生まれて初めてなんです、もう25歳なんですが・・・。”

聞くとこの方は静岡の出身で静岡以外の県に行くのが初めてとのこと。

つまり当然千葉の成田へ来たのも初めてだし、飛行機に乗るのも初めてだと。

“それはスゴイですね。で、どこへ行かれるのですか?” と聞くと、

“はい、ローマなんです。安いチケットを探したらバンコク経由になったんです。

ローマに友人がおりまして、その人に会いに行くことになっているんです。“

そうか、英語はダメでもじゃぁ、イタリア語はきっと大丈夫なのかな?と思い聞いてみると、

“いいえ、英語もイタリア語もまったくわかりません。”

と言うばかりでなく、

“ローマの空港には誰も迎えに来ず、一人でその友人宅まで行くんです。”

“そのローマの友人の連絡先は分かっているんですか?”

“分かりません。”

“・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。”と絶句した私。 同時に目も点になった。

“それは、本当にスゴイですね〜!”としか言えなかった。

これまでのやりとりを見てお気づきの方もいると思うが、彼女は田舎かもしれないが、どう見てもとっても育ちの良いお嬢さんって感じ。

そして話題をちょっと変えて、

“バンコク発ローマ行の飛行機はいつなんですか?“

と聞くと、彼女はボーディングパスを見せながら

“よく分からないんですけれど、今晩の夜中の0:30らしいんです。”

と言った。

今度はそのボーディングパスを見て再度ビックリ。

なっなっなっ、何とバンコクについてから次のフライトまで24時間以上もあるではないか?

“今日は9/30で、次のボーディングタイムは10/1の23:50って書いてあるから24時間以上もあるけれど、バンコクでホテル予約しているんですか?”

“いいえ、旅行会社の方はいらないというので予約していないんです。”

私は自分の目を疑ってもう一度ボーディングパスをよく見る。でも確かに10/1の23:50と書いてある。

“これって間違いなくバンコクで一泊する形になりますよ! 空港に24時間以上いる形になるけれど大丈夫ですか?”

“えっ、それは困りました。どうしましょう?”

さすがに彼女もかなり不安そう。

そこで一応世の中では紳士で通している私は純粋なる親切心から、

“私仕事でバンコクへ行って今晩市内のホテルに泊まるんですが、一応それなりのきちんとしたホテルなので、そこへ頼み込んであげるから部屋を取って泊まっては?”

“そうですか? ではお願いしても良いですか?

スミマセン、海外は初めてなので何も分からなくて・・・。” 

と彼女は言う。

“無鉄砲もさすがにここまで来ると危ないなぁ”

と思いながらそこで一旦会話は途切れた。

 

5分位して私は再び彼女に

“念のためオリジナルのチケットを見せていただけますか?“

と話しかけチケットを見せてもらった。

するとどうだろう、オリジナルは彼女の言うとおり、10/1の0:30発になっている。

“???????”

今度は私の頭がおかしくなったかと思った。

“あれっ、おかしいナ。 これ、ボーディングパスの記載が間違っている!

オリジナルが多分正しいを思うので、バンコクで一泊しなくても大丈夫ですヨ!

一応、バンコクに着いたら必ず係員に確認してみてください。“

と言うと、彼女もうれしそうな表情で “ありがとうございます” を連発していた。

 そうこうしているうちにバンコクへ到着し、私はBaggage Claimへ、彼女は別ターミナルへと別れるときが来た。

“何かあったら必ず周りの人に聞くんですよ! それじゃぁ、私はこっちなのでこれで・・・。 良い旅を!”

と言い、彼女は

“いろいろとありがとうございました。”

と笑顔で頭を下げる。

何だかとっても心配だが、いっしょについていくわけにもいかない。

というか、

“何で私がそんなに心配性になるんだろう?”

と思いながらも空港の外へ出て行った。

彼女はちゃんとローマ空港から友人宅までたどり着いたのだろうか?

私もインドやカンボジアで結構無鉄砲な旅をしたが、上には上がいるもんだなぁ、と感じた。

しかし、いくら安いとは言え、こんなわざわざ難しいチケットを取らなくても良いのになぁ、とも思った。

何せローマへは成田から直行便が出ているんだし・・・。


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