その3 北京空港での出来事@2004-12-2
仕 |
事で11/28〜12/2まで北京経由で天津へ出張した。
今回は先生役だったため、朝から晩まで通訳を介してしゃべりっぱなし。
でも普段は一人で出張して何とか英語を使わなければならないのですが、通訳付しかも日本語使用の出張は本当に楽。
そして仕事も無事に終わり、北京空港でタバコの吸い溜をしていた。
すると二人組の中年男性が私のところに寄ってきて、火を貸してくれのジェスチャーと共にそれらしき言葉をかけてきた。
北京語、上海語、広東語、台湾語の違いは分からないが、しかし彼らの話す言葉は明らかに俗に言う中国語ではなくハングル語っぽかった。
それにどこから来たの?という感じの話もしてくる。
最初は英語で話したのだが通じず、次は日本語(といってもニホンという単語を言っただけ)でもダメ。
う〜ん、と考えニッポンと言ったら通じた。
すると二人は親指を立ててニッポン、ニッポンと思いっきり喜んでいるではないか。
相手が何を考えて何を言おうとしているかをじっくり見て聞くと、実は言葉は分からなくても意外と意思の疎通ってできるものなんです。
今度は私がKorea?と聞くと、なっなっなんとNorth Koreaとの返答。
おぉ、まさか北朝鮮の人と出会うなんてスゲーってびっくりしていたら、“千円、千円”という単語を連発して自分の財布からお金らしきものを出してきた。
きっと紙幣交換しようって言っているんだな?と思い、北朝鮮の紙幣なんて手に入れるチャンスなんて普通ないと思い、私も千円札を一枚出して交換した。
交換した北朝鮮のお札を思われる紙幣単位を見てみる。
あれっ、100ウォン札2枚じゃぁね〜か!、これじゃぁ、20円の価値もねぇじゃねぇか!
でもまぁいいっか、久しぶりに出張中のエピソードとしてのビッグなネタになるし、しかもピン札だし・・・と思い紙幣交換は成立した。
すると今度はもう一人の人のためにも千円ないか?的なことをジェスチャーと共に言ってきて、ウォン札をもっといっぱい出してきた。
彼らの言葉とジェスチャーによるとどうやら日本円はとっても人気があり、北朝鮮では交換レートも非常に良いので酒がいっぱい飲めるらしい。
でも彼らの出してきた金額があまりにも低く(細かい単位の紙幣、確か200ウォンはなかったと思う)、最初は拒んでいた。
すると、一人がなにやらポケットをゴゾゴソし始めて私にコインみたいなものを手渡した。
それが下の写真。どうやら何か軍の勲章みたいでいかにも年期が入ったような汚れ方をしている。
陸軍の勲章なのだろうか、しきりに銃を構えるジェスチャーをしている。また表柄は銃を持った兵隊さんの後ろに戦闘機と戦艦が小さく描かれている。
そして裏にはハングル語で何か書いてある。
本物かどうかは分からなかったが、大切なもののように見えたし、こんなの手に入れることなんてできないしなぁ、と思いもう千円出してあげた。
そうこうしているうちに彼らは旅人によくありがちの質問攻め(ニッポンのどこ?、仕事で来たの?など)にあった。
そして答えを得るたびに彼らは大喜びで勢いよく親指を立ててニッポン、ニッポンと言う。
正直最初私が日本人だと彼らが分かったとき、敵対心をむき出しにする反応を示すと思って怖かったが、喜んでくれたので一安心したと同時に結構うれしかった。
国レベルでは確かにいろいろと問題を抱えている、特に拉致の問題は絶対に許しがたい行為で一日も早く解決すべきと考えている、もちろん武力以外の方法で。
しかし一方でシェムリアップ(アンコールワット→カンボジア)へ行って分かったことの一つに、国際的に批判を浴びるような武力でひどいことをしている人たちは実は極一部なんだということがある。カンボジアの場合は訪問した当時(1998年のGW)はまだポル・ポト派による内戦が激しく、カンボジアの人々みんなが戦っているのかと思い込んでいた。
しかし実際は違った。ほんの極少数の人たちが武力による権力を振りかざしているだけで、一般の人は決してそれを望んでいないということ。
このことを現地の人たちといろいろと話をして初めて知った。
今回も同じようなことが北朝鮮にも言えるのだろうか?
それに日本に親近感を持っていての喜びなのだろうか、それともお金(日本円)目当てで喜んだふりをしているのかも知れない。
どうしても確かめてみたくなり、彼らに聞いてみた。
“US$も持っているけれど、いる?“と言って20ドル札を出してみた。
すると、嫌そうな表情をして“いらない、アメリカ嫌い”みたいな感じで全く無関心だった。
では、次にEUROではどうだろう?最近のニュースで北朝鮮ではEUROが高レートで扱われていると言っていたので、20ユーロ札を見せてみた。
若干は喜んだものの日本円のときの反応よりはかなり悪い。
じゃぁ、ここは中国だからRMB(中国人民元)はどうだろう?と200元を出してみる。
すると二人は“持っているからいらない”的に受け取る気配は全くなかった。
結局今回のブツブツ交換は彼らからは600ウォン程度の紙幣と勲章、私は3000円とEUR20。
つまり現金だけ見ると50円くらいに対して7000円くらいの交換だから、かなり損したような気もしないではない。
しかしこの勲章は今私の中で一番の宝物である。
こうして彼らとは別れて帰国した。
翌日は韓国からお客さんが来社し、夕食もいっしょに取ったため、早速この話と北朝鮮紙幣!?と勲章を彼らに見せた。
すると韓国のお客さんたちもびっくりして食い入るように手にとって見ていたが、たぶん紙幣も勲章も本物だろうとのことだった。
当然韓国で北朝鮮の紙幣なんて流通していないし、普通の人が北朝鮮紙幣を見る機会なんてないとのこと。
さらに韓国では北朝鮮の紙幣を持っていると警察に没収されるとのことらしい。
お客さんの一人がどうしても韓国ウォンと交換してほしいと言われたので北朝鮮200ウォン程度を渡したら韓国10,000ウォンとをくれた。
北朝鮮も韓国も通貨単位は同じウォンだが、実際の貨幣価値は現地の物価も考慮すると北朝鮮ウォンは韓国ウォンの50-80%程度ではないかとのことだった。
ということで他にも米国人やHoustonの駐在者など、12月は海外からの来客が多かっただけでなく、忘年会シーズンともあって飲み会がある度にこの話をして酒のつまみネタにできた。
ところで今でも一つの疑問がある。何の目的で彼らは北京空港にいたのだろうか? 特に手に入れた北朝鮮紙幣はどれもピン札だったし、偽札でもなさそうだし・・・・・・。
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