その6 ヒューストンで歯医者に行った@1998-8-16
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張を含めた海外旅行中で困ることの一つに怪我や病気で病院へ行くということ。
しかも病院でどんな感じの痛みなのか?と聞かれたときにどういった表現をすればよいかいう点。
このときばかりはさすがに日本語が恋しくなる。
例えば、
ズキズキ痛むときはgrindingとかthrobbingを、
シクシク痛むというときはgriping、
チクチク痛むはprickingとかprickling、
それぞれの単語の後に痛みというpainをつければ良いし、もちろん他にも多々言い回しは当然ある。
でもネイティブではないので、はっきり言ってそんなのいちいち覚えていられないのが現実。
上記の表現でさえも普段あまり使うことがないので覚えにくいのみならず、痛くてしょうがない切羽詰ったときにそんな単語や表現を思い出せというのも酷。
怪我人や病人が本人ならまざしも、自分の小さい息子や娘がもしそうなった場合はきっともっともっと大変だと思う。
(残念ながら私には現時点でヨメさんやコドモがいないので、余計なお世話と言われそうな気がするが・・・・・・。)
実は私、長期出張中に歯医者さんへ行ったことがあるんです。 それはもう大変でした。
ある日歯の詰め物が取れてしまい、大きな穴があいてしまったんです。
帰国まであと一ヶ月を切ったので我慢しようとも思ったのですが、穴がむき出しになったおかげで四六時中その歯が痛い。
そこでその銀の詰め物を持って行って歯医者さんでつけてもらおうと思ったのですが、どうも予約システムが日本の場合と異なるんです。
日本では最初に気が向いた歯医者へ予約なしに行って、少し待てばその場で治療をしてくれ、そこへ通えばよい。
しかし米国の場合は何故か誰々さん(つまりその歯医者さんへ通っている患者さん)の紹介だと言わないと予約を受け付けてくれない、もちろんその紹介者とはどういう関係なのかも。
まぁ、面倒っちぃ。 じゃあ、紹介者が誰もいないときはどうするの?
話が少々外れましたが、何がともあれ職場の人から紹介してもらって歯医者さんを予約しました。
先生や看護婦さんは当然日本人ではないので、英語で説明することになります。 というか日本語が・・・なんて正直そこまで考えていませんでした。
で、歯医者へ出かける前に取れた詰め物を洗面所で洗っていたら、よくありがちなのですが誤って落としてしまってそのまま排水溝へと消えてしまいました。
こうしてすべての悲劇がここから始まりました。
予約した時間に勤務時間中ではあったものの、車でその歯医者さんへ出かけて一応これまでの状況を説明しました。
そこの歯医者さんは雰囲気や治療台、そして治療方法も日本とあまり変わりはありませんでした。
つまり治療台に座って台が横に倒れ、先生がライトを照らして治療対象の歯を覗き込む。
そして新しい詰め物を入れることとしよう、まずは麻酔を・・・・・・、とここまでは良かった。
ところが、実は私は麻酔が効きにくい、もしくは効くまでに人よりも時間がかかるという体質なんです。
これは酒を飲んだときも同じで、昔は酒が強いなんて自慢はできたけど、今は酔うまでに時間とお金がかかる不幸な体質なのです。
で、これまで行った歯医者ではこの麻酔でことごとくトラぶっているのです。
例えば、麻酔は必ず人の2倍使用する、本当はそれでも痛いので先生が親切心で3本目を打つと、後で麻酔液が患部に残って炎症を起こすといった具合で・・・・・・。
案の定、今回も同じような状況にめぐり合ってしまったのです。
そして最も大変だったのは、どのように痛むのかということを先生に伝えることができず、ただ“う〜っ、う〜っ、うげ〜っ”と、うなっているかもがいているだけだったのです。
先生も看護婦さんもさすがにとっても困った表情でやさしく話しかけるのですが、何を言っているのかさっぱりわからないので、返答のしようもない。
さらに先生はしきりに“クラウン、クラウン”って言っているのだが、私の頭の中は“王冠?”という単語しか思い浮かばない。
歯医者さんたちもきっと大変だったろうと思うけれど、私もこれ以上ないくらい大変でした。
このときほど言葉が分からないことの恐ろしさを味わったことはありません。
そうこうして何とか新しい詰め物(クラウン)をつけてもらい、無事に治療が終わりました。
が、うんっ?何か変だぞ?と治療が終わって待合室で待っている間に一つ気づきました。
新しい詰め物のサイズがどうやらアメリカ人!?サイズ、つまり自分の歯のサイズより二周りくらい大きいのです。
幸い左上の一番奥の歯だったので、あまり支障はないだろうし、もう面倒なので後は帰国して何とかしよう!と思い何も言いませんでした。
ところが、びっくりしたのはその後の出来事でした。
歯の詰め物をただ一つ入れただけで費用が何とUS$2,000-!
はぁっ?、そんなお金持っているわけがない。
あまりにもびっくりした表情を私が見せたので、看護婦さんが“クレジットカードは持っているの?”と聞く。
“Yes”と答え、あっ、そうか、そういう支払い方法もあると思い、何とか支払いを済ませることができました。
当たり前の話なんですけれど、米国で保険証というか保険に入っていないので全額負担だったんですネ!
クラウンのこともそうだが、いかにもマヌケな私。
それにしてもUS$2,000はべらぼうに高い。 当時のレートはUS$1=\120、つまり24万円もする。
次に思ったのは、誰がこの費用を負担することになるのだろう? ということ。
まさか自腹かなぁ? でもそんな大金なんて持っていない(当時はとってもビンボーで、全財産をもってしても24万円なんて持っていない)・・・・・・、
本当に困ったことになったゾ、と思いながらもとりあえず持参した診断書に記入してもらった。
帰国後、早速会社へ相談したところ、そこはとっても人に優しい会社。
かかった費用の半分は会社負担、残りの半分は組合負担となり、自腹額はゼロで済んだ。 あ〜、本当に助かった。
でも歯医者で味わった、あの激痛はPriceless。 この出来事は一生忘れることはないでしょう。