インターネットのアクセス状況を測定する
このセクションでは、WWWのアクセス履歴分析と広告媒体としての効果測定の試みを取り上げます。メディアとしてのWWWを考えると、利用者のアクセスが履歴として記録に残せることは、他の媒体にはない特徴です。これはサイト運営者にとっては利用動向を直接把握する貴重なデータとなりますし、さらに今後広告媒体としてますます注目されていけば、こういった測定指標や具体的な測定方法の標準化は不可欠の課題となります。
現在は、それらの指標やログ分析の基準はまだきちんと統一がとれているわけではありません。日本はまだまだこれからの話ですが、米国では大学研究者や広告業界団体を中心にして、自主的な標準化、統一化への試みがなされています。以下は、こういった試みを行っている複数の情報ソースから1)アクセス状況を把握するための測定単位、および2)広告効果指標に関して、それぞれの定義と測定方法をまとめたものです。おそらく日本でもこれらがベースになると思います。
IAB (Internet Advertising Bureau) はバナー広告などを掲載するサイト、メディア、広告主、ウェブ測定調査会社などによる業界団体。CASIE (The Coalition for Advertising Supported Information and Entertainment) は、全米1200の広告会社をメンバーとするThe American Association of Advertising Agencies (AAAA) と、最も歴史の古い広告主団体であるThe Association of National Advertisers (ANA) との広告効果測定の標準化を目指すタスクフォースで、インターネット利用者測定に関するガイドラインも公表しています。
WWW測定単位の定義と測定方法 (文責筆者)
Hit(ヒット) | ●ユーザーのリクエストによって、サーバーから送りだされるオブジェクト1つが「1ヒット」として記録される。 ●HTML文書、画像・音声ファイル、Java applet 等も1ヒットと数えるので、例えば1HTMT+3GIF で構成されるページが読み出されたら4ヒットである。 |
Page (ページ) Page View(ページビュー) |
●ユーザーの1回のリクエストによってブラウザー上に表示される1画面が「1ページ(ページビュー)」。通常は1HTML文書。 ●フレームの場合は複数のHTML文書となるが1画面を構成するものまとめて1ページと数える(1クリック=1ページ)のが望ましい。 ●ただし実際には読みだされたHTML文書の数=ページとしてカウント、公表するケースも多いようだ。そうすると単純な2画面分割なら、1クリック=3ページビューである。 |
Visit(ビジット) Session(セッション) |
●ユーザーが行う特定のサイト内における一連のリクエスト(a
sequence of requests)をまとめて「1ビジット(セッション)」という。 ●リクエストとリクエストの間が一定時間以上あけば(time out)、同一ユーザーでも新しいビジットとしてカウントされる。この時間については、代表的なウェブ測定会社である米 I/PRO社が採用している「30分」が業界標準となっている。 |
User (ユーザー) Visitor (ビジター) |
●特定のサイトを訪問した個人(unique individual)が「1ユーザー」または「1ビジター」である。 ●これをサーバー側で正確にカウントするには、ユーザーがサイトに登録するなど何らかの個人認証システムが必要。またクッキー(cookie)でリクエストが再訪問かどうかはわかるが、正確にはユーザー個人ではなくユーザー端末(ブラウザー)の認識であることに注意。 |
Access (アクセス) | ●英語では測定単位として定義している例はほとんどない。 ●日本語としても便利でよく使われているが使い方はまちまちで、測定単位というよりは日常語。「アクセス」カウンターの使われ方から言えば「ページビュー」に近いわけだが。 |
個人的な印象ですが、日本ではヒット数、ページビュー数、アクセス数ということばは、みんな聞いたことはあるけど、共通の定義で理解されているとはあまり思えませんね。
特にヒット数については(「ヒット」という言葉のイメージのせいでもありますが)、自分のクリックでめくったページをイメージしているユーザーは多いのではないでしょうか。自分でHTMLを書いたことがなければ、上記定義の理解さえ困難かもしれません。極端な話、サイトの訪問者数と思っている人もけっこういるかも...。というわけで、公表するアクセス数の指標としては使うべきでないと思っています。
では、日本のサイトはどのくらいのアクセスがあるかについては、例えば電通系インターネット広告専門の代理店サイバーコミュニケーションのホームページでは、取り扱いサイトのボリューム(わかりやすくするためか、GRPという言葉が使われている)が広告料金とともに公開されています。単位は1日あたりのページビュー平均値で統一されています。
しかし、ページビューで満足しない広告主が、バナーが実際に読みだされた回数や、バナーがクリックされて自分のサイトに来てくれた人数を基準にしてくれー、というのは当然の流れでしょう(新聞広告やテレビCMでは望むべくもないが、これぞインターネットならではの特性ですから)。そのための指標も以下のような形で定義されつつあります。
広告効果指標に関する定義と測定方法 (文責筆者)
Ad Request (アドリクエスト) | ●ユーザーのアクションによって、サーバーから広告オブジェクト(バナー広告画像など)が読み出されると「1リクエスト」として記録される。 |
Ad View(アドビュー) Ad Impression (アドインプレッション) |
●定義から言えば、ユーザーのブラウザにバナー広告などの広告オブジェクトが実際に表示(View,
Impression)あるいは露出(Exposure)された回数をカウントする指標。 ●ただし今の技術ではサーバー側で正確な把握はできない。ブラウザが画像読込みオフであったり、読込み前に「中止」ボタンが押される場合もあるし、またリクエストされた広告バナー画像がローカルキャッシュやプロキシサーバーにあれば、そこから供給されサーバーには記録が残らない。 ●従って実際には「リクエストがあればユーザーに転送、参照されると仮定」して上記「ad request」の定義・測定法を使う例も多く見られる。 |
Ad Click(アドクリック) Click-Through (クリックスルー) |
●ユーザーが広告オブジェクトをクリックしたことで、サーバーから広告のリンク先URLが読み出されると「1クリック(クリックスルー)」として記録される。 ●実際にユーザーが画面にリンク先サイトを表示させたかどうかを保証するものではない。 |
Click Rate(クリック率) Click-Through Rate (クリックスルー率) |
●概念としては、広告が表示された回数のうちクリックで目的サイトに飛んだ回数の比率。サーバー側で把握できるのは「クリックスルー数」÷「アドリクエスト数」 |
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日本では97年に入って、視聴率調査会社のビデオ・リサーチがインターネット効果指標データの開発や広告効果測定の標準的な基準や指標の確立のため、メディアや広告業界を含めた研究組織を発足させたほか、米アイプロ社と提携して日本でのサービスを提供する計画が発表されましたが、こちらは実現には至らなかったようです。
ただ、米アイプロ社が米国でのテレビ視聴率最大手のニールセン社と共同ブランドで視聴率レポートや認証サービスを行なったり、米ネットカウント社(プライスウォータハウス系)が出版物の発行部数監査機関BPAインターナショナルと提携するなど、WWW効果測定でも権威ある測定機関、監査機関が求められることはまちがいありません。
REVIEW and COMMENTARY
WWWアクセス測定調査、バナー広告効果測定調査などの研究などを紹介予定です。