スイング・ジャーナル97年12月号

作編曲に卓越した才能を示すJジャズの新星 

マイ・フエイバリツト・カラーズ/守屋純子 

 ピアニストと言うだけではなく作編曲へ強い関 心を寄せる,これまでにないタイプの実に興味深 い新人だ。NY時代に「演奏だけでは勝ち目がない」 と悟って独学でやり始めたということだが,しか し,この5管編成のアルバムを聴いて.その動機 はもっと深いところに根ざしていたように思えて ならない。というのはこのサウンドは.独学とい うこともあるかもしれないが,すでに自分の言葉 で自分の感覚がしっかり語られているからだ。タ イトルにあるように,それは様々な独特の淡いカ ラーとして伝わってくる。女性的と言えばそうな んだが,ただそれですむことではなく,その色使 いの中から徹妙な情感の響きが伝わり,感受性の 豊かさが伝わる。たとえばEの明るさ,Fの情感 の柔らかな広がりなど,いずれも軽い味わいだけ ど,逆にそんな何気ない世界から披女の才能の確 かさがしっかり伝わるのだ。
 さて,この作品の成功は,プロデュースを担当 したドン・シックラーの力に負うところも大きい。 この完璧なアンサンブルなくして彼女の微妙な色 彩の世界がこちらに伝わってこなかっただろう。 彼らの腕前を堪能するだけで,このアルバムは一 聴の価値がある。ここで秋吉敏子と秋吉バンドに 似た素晴らしい関係を思い出すが,しかし,守屋 は第二の秋吉ではない。予想がつかない新しい可 能性。それに向かって,これからも走り続けて欲 しいと願わずにいられない。

(青木和富)

スイング・ジャーナル97年12月号 P.153<ディスク・レビュー>より

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