ISDN

Monday, November 2, 1998


 前回執筆してから、随分と時が経ってしまったが、 この5月から、自宅に ISDN を導入している。 大変快適なので、この文書を読んでいて未導入の方、特に家族のある方には、 条件つきではあるがお薦めしたい。


 導入の直接のきっかけは、家族の一人が友人との長電話をしたために、 別の重要な電話がかかって来なかった事からである。

 相手からかかった長電話なのでこちらに電話代はかからなくても、 当然その間は別の電話が受けられない。 かと言って、相手のいる事だから無闇に切ることもできないだろう。 ではキャッチホンか? キャッチホンは別名ブッチホンとも言われ、 通信が突然切断されてしまう欠点があると聞いている。 キャッチホン2という改善されたサービスもあるらしいが、 いずれにしても一方の相手を長々と待たせる事に変わりはない。

 そこで考えたのが ISDN ( NTT では INS64 と称している) の契約である。 インターネットサーフィンが高速になるという効果はもちろん知っていた。 が、いろいろ調べて行くうちに、 むしろ 1回線で同時に 2つの通話ができるメリットの方が重要である事に気がついた。 つまり、直接の動機はあくまで複数通話の同時使用である。 もちろん、「電話をしようと思ったのに、パソコン使ってて…」 という冷たい視線も解消できる事は言うまでもない。


 さて、 ISDN には、 ターミナルアダプタ ( TA ) という機器が必要である。

 従来の電話は、各戸から電話局まで、 アナログ 1回線ずつ独立したケーブルがひかれている。 電話局から先は、デジタル回線網で日本全国に接続されているらしい。 ところが ISDN にすると、 電話局までは物理的には 1回線であるが、 信号的にはデジタル回線網の真っ只中にあることになる。 TA を接続しなければ、 普通の電話を直接つなげなくなる。 しかし、TA からは、 独立した2つの電話が同時に使用できる。

 私の感覚では、TA とは 「電話局の出張所」 のようなものだ。


 さて、その TA だが、 市場で最も売れているのは、N社の製品だそうだ。 実は私はあまりN社の製品を信頼していない。 昔買った電子手帳は、液晶接続部がすぐ壊れた。 それを修理に出したら 4週間もかかって、実に腹が立った。 家族の買ったパソコン (私は DOS/V 機を薦めたのだが、友人のゲームを借りるためには…という事で) は、 CD-ROM のコネクタが買った時から外れかけていた。 修理に出すのも馬鹿馬鹿しいので、私が直したが、 品質管理がいい加減だという印象を強くした。 偶然にスカを引いただけだとは思うが、そう言うわけで、 N社の製品は候補として最初から外した。

 そこで、何度か店に通ったりカタログを調査の上、 二番手の A社の製品が、価格の割に高機能でもあったので第一候補とした。 が、4月中旬、意を決して店に行ってみると、なんと在庫切れである。 そこで、モデムで実績のあるO社の製品を選ぶ事にした。 外箱には 「24時間電話サポート」 とある。


 NTT への申し込みをしたのも同時期であった。 もちろん私の事だから、 TA 接続は自前で行う、 最低料金のサービスを申し込んだ。 が、工事が混雑している事と、立ち会いが必要という事で、 実際に開通したのは5月の連休明けになってしまった。

工事自体は、担当者が電話局と通信しながら 30分ほどで終わった。 あとはこちらが TA を接続するだけである。 一応、担当者がいるうちに接続して、たしかに通話できる事を確認した。 インターネットの接続を確認したのは担当者が帰った後だったが、 特に問題なくあっさりと接続できた。


 しかし、しばらく使ううちに気がついた。 2回線使えるアナログポートのうち、1回線が不調である。 通話自体は出来るのだが、オフフック・オンフックを全く認識しない。 つまり、受話器を取り上げても通話が開始できないのである。 TA の初期不良である。 これは困った。

 先に書いた通り、もはや回線に直接電話を接続できないのだから、 取り外して修理するわけにはいかない。 取り外せば電話が一切使えないのだ。

 そこで「24時間サポート」のフリーダイヤルにかけてみた。

「実は、 TA の初期不良のようなのですが‥‥‥」
「では、代用品を送りますので、届き次第、故障品を送って下さい。」

 私は少々驚いた。 まだサービスカードも送っていないのだから、 こちらがたしかに製品の購入者であるどうかは、サポートにはわからない。 それなのに、直ちに代用品を送ると言っている。 こちらの住所を告げると、宅配便で即日発送するとの事である。 実際、翌日の午前中には代用品が届いた。 しかも封も切っていない、全くの新品である。 実にすばらしいサポートだ!! 私はこの時点で、てっきり「新品交換」だと思った。


 ところが、2週間ほどそのまま使用していると、 サポートから「製品が直りましたので、代用品をお返し下さい。」と、 宅配便で修理品が送られてきた。 修理票を見ると 「メインボード交換」 とある。 要するに、外側以外は新品なのである。 「新品交換」 ではなかったのか?? 疑問に思って、サポートに電話をしてみた。

「どうせ交換するなら、そちらの言う代用品を使いつづける方が合理的でしょう?」
「申し訳ありませんが、品質管理の関係で、お客様ごとに製品番号を登録していますので、ご了承下さい。」

う〜む。

 品質管理は、いわばメーカーの都合である。 こちらの立場としては、不良品を買わされた上、 二度も返送の面倒をかけさせられて…とは思ったが、 私も実はメーカーの人間なので、相手の立場もわかってしまう悲しい性。 一応納得して、代用品を返却する事にした。 もちろん送付は当然、二度とも受取人負担である。


 その後、 TA は一応快調であるが、一度だけ機能が凍結したことがあった。 たぶん、何かサージでも入ったのだろう。 私が帰宅後気がついて、電源オフ・オンで復帰するまで、 約半日間、電話がかけられない状態になってしまった。 災害の時には、きっと困る事だろう。 バックアップ電池は 6時間程度しか持たないらしい。 万一その時になれば、恐らく公衆電話に頼らざるを得ないと状態だろうと思う。


 そういう不安を除けば、 ISDN は非常に快適だ。 もちろん、副次効果の方も十分満喫している。 接続はほとんど瞬間的で、 モデムのようにプロトコルを確立するための待ち時間も一切ないし、 通信速度はもちろんモデムの及ぶところではない。 家族の電話を気にする事もない。 もし同じ通信量なら、速度が向上する分だけ、電話代も安くつくだろう。 ただ、あまりに快適なため、どうしても通信量が増えてしまうけれども。

「56Kモデムで十分」 と考えている人は、ぜひ考え直すべきだと思う。 自宅で使う限り、 ISDN の方が、 メリットがはるかに大きい。


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