SPEED解散

Sunday, October 10, 1999


   10月5日(火)、 「SPEEDが2000年3月31日で解散する」 という話題が日本中を駆け抜けた。 私は「あ、やっぱりね」という程度の感想しか持たなかったが、 スキャンダル大好きなスポーツ紙はもちろん、 グループのデビューに関係深い日本テレビ も、 あろうことか天下の NHK も、翌朝のトップニュースに、 小渕新内閣の2000円新札発行と同列に取り上げるなどの大騒ぎ。 それほどまでに、この沖縄出身の少女4人組の解散が、日本の一大事なのだろうか。

   私は SPEED に特別の思いはないが、これほどヒット曲を連発されれば、 嫌でも耳に入ってくる。 自腹を切ってCDを買おうとは思わないが、解散ということで、 少しは正当に評価してやろうと、 SPEEDの公式ホームページを覗いてみた。 解散記者会見の様子が RealPlayer で見られるのは、問い合わせの多さへの対応だろうか。 シングル盤のビデオクリップも見られるので、ついでに4年間の軌跡を辿ってみた。


   改めて、SPEED の歌はどこか変だな、と思った。 妙に大人びていて、子どもらしい溌剌とした感じがない。 その割に発声は子供っぽく、キャンキャンとしていて聴きづらい。 ハーモニーを聴かせる「コーラス」ではなく、 あえて言えば島袋・今井の 「ツイン・ソロ」 だ。 二人のソロが交互に現れる時は面白いが、一緒に歌うと音楽性が合わないのか、 きれいな斉唱にならないのだ。 この傾向は、後の作品になればなるほど強く感じられる。

   新聞やテレビは「電撃解散」 と騒ぎ立てるが、 冷静に作品を聴いてみれば、既に音楽的には島袋・今井が一緒に歌うメリットは少なく、 歌わせてもらえない上原・新垣に至っては何のメリットもないだろう。 彼女らの解散記者会見の通り、それぞれがソロ活動を開始した昨夏あたりから、 解散へ向けてのシナリオが徐々に進行しつつあった、と見るのが正しいと思う。


   さて解散後、各メンバーは将来どうなるのだろうか。 あまり週刊誌を参考にせず、私なりに独断と偏見で勝手に予想してみた。

上原多香子(16)
美少女的な風貌と、踊っている時に 『胸の谷間が見えた』 という写真で人気が出たらしい。 SPEED ではほとんど歌っていないし、実際歌は下手だが、 ソロCDが一番売れたのは彼女なのだそうだ。 人気ミュージシャンのЯK(河村隆一) がプロデュースした事もあるが、 普段歌わない分癖がなく、それが却って新鮮に感じられた、要するに素人っぽさが受けた、 というのが理由のようだ。 解散記者会見では「もっと歌や芝居を勉強したい」と言っているが、 人気の理由を本人がどれだけ理解し、今後努力できるかが、彼女が新鮮でなくなった時、 芸能界に生き残っているか否かの分岐点だろう。
島袋寛子(15)
彼女の特徴のある高音が、SPEED の音楽的魅力であった事は間違いない。 デビュー当時は非常に不安定で、 変声期前の少女が無理して歌っているという印象が拭えなかったが、 最近のソロ活動を見れば一皮むけた感がある。 日刊スポーツ紙によれば、 ニューヨークに行って、 マライア・キャリーやホイットニー・ヒューストンなどと同じ発声法の指導を受けたとの事で、 今後ソロで大成するなら彼女以外にないだろう。 しかし芸能人として振る舞うのに疲れたようで、 解散記者会見の通り 「もう二度とテレビに出ることはないと思う」 になるのではないか。
今井絵理子(16)
私は、彼女の身の振り方が一番難しいのではないかと思う。 SPEED の音楽のベースは彼女のヴォーカルであり、歌は最初から一番うまい。 しかし、優等生的でやや面白みに欠ける。 また、4年の間にあまり歌い方が変わらないのも、却って気になる。 ソロ活動にしても、SPEED の時と音楽的にどう違うの? という出来で、印象が薄い。 解散記者会見では「歌を続けたい」と最も熱心だったが、 今と同じフィールド〜ヒットチャートを賑わす人気歌手〜よりは、 NHK歌のおねえさん的な健全さを活かし、 少し別のフィールドで活躍した方が成功するような気がする。
新垣仁絵(18)
グループとしてデビューした事で、一番得したのは彼女だろう。 立場的にはバックダンサーに過ぎないが、奇抜なヘアスタイルや踊りのセンスで注目され、 現在ではイラストの才能も評価されている。 ソロデビューは一番遅かったが、SPEED とは全く異なるジャンルで意欲的なところを見せた。 解散記者会見では「英語や好きなイラストの勉強をしたい」と言っているが、 将来アメリカあたりで活躍することを考えているのではないだろうか。 メンバーの中では一番エンターテインメント精神を持っており、 大化けする可能性もあるが、ファンが付いて行けるかが課題かも知れない。

   ところで、解散記者会見では、 左から上原・島袋・今井・新垣の順に並んでいた。 必然的にこの順序になったのであろう。 右側の二人の解散に対する前向きな姿勢に対し、 左側の二人の困惑した表情が何か象徴的だった。


   マスコミの対応で驚いたのは、 写真週刊誌 「FOCUS」 のあまりの対応の速さだ。 翌水曜日の朝には、既に 「SPEED 解散!」 のトップ見出しが電車の中吊りにあった。 記者会見の結果を受けての記事なら、物理的に不可能である。 内容を確認してみると、9月23日のコンサートツアー終了後の写真とともに、 あるメンバーの 「異変」 について書かれたもので、当然解散記者会見より前だ。 しかし、すでに 「来年3月末解散、3か月間休養のシナリオが進んでいる」 とある。 金曜日発売の 「FRIDAY」 誌には、さすがに解散記者会見に絡めた記事があったが、 「FLASH」 誌など、呑気に 「2000年 SPEED カレンダー」 など取り上げている。 どうやら 「FOCUS」 誌得意のスッパ抜きのようだが、恐るべきタイミングの良さだった。

   それにしても、一部の週刊誌やスポーツ紙の取り上げ方は実に興味本位であり、 「男と同棲」 とか、「未成年なのに飲酒喫煙」 とか、 特に思い入れのない私でも、無神経な取り上げ方には腹が立つ。 仮に事実だったとしても、彼女らが児童福祉法などで保護されるべき年齢であることを、 完全に無視している。 最年少の島袋などまだ中学生、普通なら 「一人前の判断は出来ない」 と扱う年齢ではないか。 いくら芸能人は特別と言っても、いささか度が過ぎる。 マスコミは彼女らの人権をどう考えているのだろうか。 「報道の自由」 にも節度が欲しいものだ。


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