バージョンアップ

Sunday, February 27, 2000


    昨年後半から、 私の持っているソフトウェアのバージョンアップの案内が相次いだ。 どれも「画期的な改良」とか「今なら特別価格で」という文面が私を誘惑したが‥‥‥。


    真っ先に無視したのが 「Windows98 Second Edition」 。 私のマシンの OS はいまだに 「Windows95」 である。 もっとも「OSR2」であるから、 FAT32にも対応している。 この OSR2 に Internet Explorer 4.0 以降に付属する「アクティブ・デスクトップ」をインストールすれば、 操作性も外観も、Windows98 とほとんど変わらないものとなる。

    Windows98 が出た時も、発売直後の種々の不具合を見て、 バージョンアップを見送ったが、 「不具合を解消した」 Second Edition という話なので、興味を持っていた。 しかし、発売直前、各種の情報が流れてくるようになって、興醒めした。 Windows98 の不具合は 「Service Pack」 という形でまとめられ、 既存ユーザーに CD-ROM で頒布されるが、 Second Edition は不具合の解消 「プラス新機能」 になるという。 これはまずい。

    新OSが、最初から全く問題もなく動作することは滅多にない。 プレインストール機ならメーカーで検証されるから、大きな問題は起こらないだろう。 しかし、過去のハードウェアは状況もまちまちで、何が起こるかわからない。 たとえ Microsoft が「徹底検証した」と主張しても、 思わぬ不具合が発生することは珍しくない。

    思った通り、発売直後から、 ニフティ の関連フォーラムやインターネットのニュースグループで、 「インストールがうまく行かない」 「動作がおかしくなった」 「一部のハードウェアが使えなくなった」 などの報告が相次いだ。 そのため、発売間もなく Second Edition 用の修正モジュールが発表されている。

    Windows98 Second Edition に対する私の判断は、 「高い金を出して不具合を買い込むようなもの」。 もし買うなら、「Windows98 オリジナル版 + サービスリリース」だ。 しかしオリジナル版は、Second Edition の発売とともに店頭から姿を消した。 それとともに、私のハムレット的な悩みもすっかり解消してしまった。 現用のパソコンが元気な限り、Windows95 で行こう。


    次に無視したのは、「Microsoft Office2000」。 私は一応、Microsoft Office97 のオフィシャル・ユーザーだ。 しかし西暦2000年を目の前にして、Office97 は、 修正モジュールが少なくとも3回リリースされている。

  1. Service Release 1‥‥‥1997年8月 (CD-ROM)
  2. Service Release 2‥‥‥1999年2月 (CD-ROM)
  3. 西暦2000年修正モジュール‥‥‥1999年6月 (CD-ROM)

    Office97 の初期版は、互換性の問題や、動作の不具合が連発し、 ユーザーから非常な反発を食らった。 ユーザーの怒りを少しでも鎮めるためか、「Service Release 1」は、 1枚で完全にインストール可能な CD-ROM として提供された。しかし後の2枚は違う。

    Office97 をインストールしてから、 西暦2000年問題に完全に対応するためには、 どのような操作が必要か。

  1. Office97 「Service Release 1」を、CD-ROM からインストールする。
    オリジナル版のCD-ROMは、全く必要ない。
  2. Office97 のいずれかのソフトを起動し、バージョン番号を確認する。
  3. Office97 「Service Release 2」を、CD-ROM からインストールする。
    その際、先に確認したバージョン番号を、手作業で入力しなくてはならない。
  4. Office97 「西暦2000年問題修正モジュール」を、CD-ROM からインストールする。
    その際、先に確認したバージョン番号を、手作業で入力しなくてはならない。

   「Service Release 2」以降の CD-ROM には、 修正が必要なモジュールしか記録されていないので、 何かの事情で PowerPoint だけ後からインストールする、などという場合には、 そのたびに「Service Release 1」へ戻ってインストールし、 さらに修正のための CD-ROM を次々と適用しなくてはならない。

    西暦2000年問題は天災ではなく、明らかにソフトのミスである。 Microsoft は、1枚で完全にインストール出来る CD-ROM を提供するのが筋であろう。 しかし、まさに「千載一遇」のチャンス、ユーザーに面倒な思いをさせて、 Office2000 へのバージョンアップを煽ろう、という魂胆が見えてくる。

    それに、Office2000 に対する私の評価は、 「個人ユーザーにはほとんどメリットなし」 である。 少なくとも私にとって、追加機能で使えそうなものは何もない。 企業でもそんなにメリットがあるとは思えない。 Office95 から Office97 への移行で、多くの企業ユーザーは、 ファイル非互換の問題を抱え込み、さんざん泣かされているOffice2000 は互換性を重視した、言っているが、 「もう騙されないぞ。」という企業が多いのではないか。


    私が唯一バージョンアップしたのは、 画像処理ソフトの「Paint Shop Pro 6」 である。 バージョン4の頃は、Windows のペイントブラシより多少いいかな、程度のものだった。 しかしバージョン5で操作性の大幅改善、レイヤーのサポートが行われ、 非常に使いやすくなった。そして今回のバージョンアップである。

   軽快な動作が定評の 「Paint Shop Pro」 だが、バージョン 6の魅力は、 ベクターレイヤーのサポートだろう。 バージョン5では、たとえば写真にコメントを付けたり、 矢印を入れたりすることは出来るが、 一度入れた文字や図形を微調整することが出来なかった。 今回はそれが自由に修正できる。無制限のアンドゥ機能も便利だ。 その他にも、サムネール (画像の一覧) のサイズが自由に設定できたり、 ツールパレットが自動的に伸び縮みしたりと、 ユーザーインターフェースが大幅に改善されている。

    さらに、これらの機能を30日間、一切の機能制限なく、 無料体験できる試用版が提供されていた。 さらに驚いたのは、 30日間が過ぎた時に 「試用期限が過ぎました」 のメッセージは出るものの、 さらにしばらくの間、プログラムが起動できたことだ。 これは開発メーカーである米国 JASC と、日本代理店の P&A の良心と言ってよい。 そこまでサービスしてでも、絶対に買ってもらえる自信があったのだろう。 店頭バージョンアップ価格の 9800 円も安価でお買い得だ。


    かなり悩んだのは、MIDI シーケンサ 「XGworks V4.0」 だ。 バージョン2の頃に購入したが、バージョン3の発売直前だったため、 無償でバージョンアップの CD-ROM が送られてきた、という経緯がある。 バージョン2では1パートしか出来なかった楽譜での編集が、 バージョン3では同時に数パートを編集可能になるなど、 かなり改善されていた。

   バージョン4では、 各種の発想記号 (Allegro とか Crescendo とか) に対応した、とある。 その他にも、ユーザーインターフェースの向上もあるようだ。 バージョン2から3への経験を踏まえると、かなり期待してよいだろう。 しかし私は 「Pentium 166MHz以上を推奨」 の一言に不安を覚えた。 私のマシンは Pentium 150MHz だ。バージョン3でさえ、 複雑なデータでは処理能力が不足し、テンポが乱れる場合がある。 アップグレードは嬉しいが、まともに再生できなくなっては困る。 さんざん悩んだが、見送ることにした。


    そもそもコンピュータのソフトウェアは、 ハードウェアと一体となって、初めて真価を発揮するものであり、 単独での機能がいかに優れようと、ハードウェアがそれに伴わなければ効果は減少する。 極端な場合、ソフトウェアが必要とするスペックをハードウェアが満たさなければ、 動作さえおぼつかないことがある。

    そこまで行かなくても、 新たに増えた機能が非常に複雑な処理を必要とし、 高速な CPU ・大容量のメモリでなければ実用的な速度にならず、 いらいらすることもよくある話だ。 いらいらしたくなければ、結局ハードウェアも買い替えることになる。 資金が潤沢なら結構なことだが、こちらもそう金持ちではない。 結局 10 種類位あった案内のうち、バージョンアップしたのは1つだけだった。 メリットや使用頻度を考え、必要なものだけバージョンアップするのが、 賢い消費者の取るべき道だろう。


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