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14.新宿三越南館

三越南館全景

老舗のデパートである三越。しかし日本最大の商業地域にある新宿店は、 第二次大戦前からの古く小さな店舗。新宿通りで対峙する伊勢丹には床面積で負け、 駅と一体化した小田急・京王には便利さで負け、 若者むけのファッションでは丸井にさえ負けている状況だった。

1991年10月10日、三越は、新宿店から少し離れた旧松竹第一劇場跡地に、 ファッションを中心とした南館をオープンした。時あたかもバブル経済の絶頂期。 建造物はご覧のように贅を尽くした仕上がりだった。

しかし、やがてバブル経済は崩壊した。百貨店は軒並み減収減益、 例のお家騒動の後遺症やら、バブル期に手を出した不動産の損失やら、 三越の経営は赤字続きで特に苦しかったようだ。 どこからも遠いという南館の立地条件の悪さも災いした。

南館に引導を渡したのは、おそらく高島屋タイムズスクエアであろう。 甲州街道の向かい側、旧新宿貨物駅跡地にオープンした巨大な建物は、 JR新南口やエンターテインメント施設と合体して、 新宿駅南東側の客足を完全に奪ってしまった。

1999年7月31日の閉館が決まり、6月22日から売りつくしが始まった。 かつてないほどの客を集め、最後の輝きを見せる南館は、間もなく、 8年に満たない歴史を閉じることになる。

正面入口の賑わい

南館は「美術館のある百貨店」が一つの売りだったが、規模はともかく、 新宿地区では伊勢丹美術館、小田急ギャラリーよりも後発である。三越美術館最後の催し物は『ダリ展』。20世紀の巨匠の風変わりな作品を集めた展覧会は、 閉館後も8月20日まで続けられた。

甲州街道側入口の大理石の柱華美な電飾

曲面を多用した余裕たっぷりの建物。大理石の柱にシャンデリアの装飾は豪華絢爛。 見方によっては、かなり悪趣味で不経済とも言える。閉館ともなると、 この豪華さが虚しく感じられる。閉館後は大塚家具のショウルームに貸し出されるそうだが、私の予想では、 このシャンデリアは取り去られるだろう。

道路を行き交う人々「あぶらがみ」販売ワゴンにも人が集まる

本館とは離れ、地下道もつながっていないから、とにかく地上を歩くしかない。入口のワゴンは京都から来た業者。 閉館セールの時期でなければ、人影はまばらだっただろう。

入口脇で人を待つ若い女性大理石の柱にもたれて人を待つ女性

多くの人が買い物に訪れ、待ち合わせ、そして去って行く。この賑わいが恒常のものであれば、閉館などあり得なかっただろう。


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Original pictures were exposured on July 28, 1999 by Konica Q-M100V.

This page was updated on Tuesday, May 02, 2000

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