積ん読書庫


賭博黙示録カイジ

福本伸行・著
講談社・刊
1996年10月現在単行本2巻まで
『週刊ヤングマガジン』連載中
パソコン通信・PC−VANでaMIさんから教えてもらった漫画である。今月中に単行本第3巻が出る予定。

主人公の伊藤開司(カイジ)は東京へ出て3年たつ自由労働者。アルバイトで稼いだ金をギャンブルでむしられ、腹いせに高級外車を傷つけてうっぷんを晴らす日々を送っていたが、借金の保証人になったバイト仲間が失踪したために、元利合計385万円の負債を負うことになった。まともに働いても全額返済するには11年はかかってしまう。

ところが、借金の取り立てに現れた遠藤と名乗る男が、「エスポワール(希望)」という船でギャンブルの参加者を募集していると教える。カイジのような行き詰まった若者を集めて一夜限りのギャンブルクルーズを行い、うまくしのげば10年分を1日でチャラにできるというのだ。負ければそのまま船で連れていかれて1〜2年はシャバに戻れないが、勝てば1千万、2千万を蓄えて船を降りることもできる。毎回参加者の半分は無事に船を降りるらしい。

遠藤の巧妙な誘いでカイジはエスポワールに乗る。船内では最初に軍資金の貸付が行われ、ついでギャンブルのルールが説明された。内容は最初に星形のバッジ三つとグー・チョキ・パー各4枚、計12枚のカードを与えられ、カードジャンケンの勝負で星を奪い合うという「限定ジャンケン」だった。勝負に使ったカードはすべて回収され、どのカードが残り何枚かが常時掲示板に表示される。勝負時間は4時間。手持ちのカードがすべてなくなっていてなおかつ星を3個以上持っていれば勝ち、終了時にカードが手元に残っていたり星が2個以下の時、そして時間内でも星をすべて失ったら負けになる。

「今回のギャンブル……星は寿命……カードは機会(チャンス)……こう考えていただければ大筋間違いではございません」(本文、ホールマスター・利根川の言葉より)

「限定と聞いて……すぐある予感が走った……この勝負運否天賦じゃない……おそらくは……愚図が墜ちていく。勝つのは智略走り他人出し抜ける者……!」(本文、カイジのモノローグより)

だが始まってものの20分で、カイジは船井という男の口車に乗せられて星二つを失って残りカード1枚という状況に陥る。果たしてカイジにこの窮地から逃れる道はあるのか?

てなところが単行本第1巻の途中までのあらすじ。

話は単にジャンケンでの勝ち負けと引き分けなのだが、それに至るまでとひとつの勝負の前後の智略・駆け引きがすごいすごい。知恵と策謀、心理や経済まで渦を巻くとんでもないジャンケンだ。一瞬先がどうなるかほとんど読めず、ましてや主人公・カイジがほんとにこの勝負で救われる結末を迎えられるのかどうかさえ、まったく保証の限りでない展開がすばらしい。近頃これほど緊張しながら読んだ漫画は少ないと思う。

話の展開を智略戦・心理戦に限定しているというのも話を面白くしている理由だろう。これについてはホールに常駐している黒服サングラスの番人たちが重要な役割を果たしている。彼らが、ホールマスター・利根川の説明したルールを厳重にチェックし、それ以外の無用な争いごとを押さえているため、勝負に腕力や暴力が介入せず、純粋な頭脳戦になっているのだ。

また、勝負の合間合間にかいま見える登場人物たちの人生観も含蓄が深いような浅いような。とにかく、当分目が離せない漫画である。

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