とぜんそう2000年1月分

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00/01/05

御題

みなさま、キリスト生誕二千と四年目といわれている新春、いかがおすごしでしょうか。

本欄はこれまで思いついたり感じたりしたことを適当に書いて参りましたが、年頭に当たり気分を改める意味もあって、たまには適当な題というか主題というか見出しみたいなものを付けてみることにしました。

え、素直に「タイトル」といえとおっしゃる? だって「選手権」も「タイトル」だし、天竜に奪われて外部に流出したらどうしましょ(意味不明)。


下種の勘繰り

 ↑ うーん、ATOK13はこゆのも変換しないのね。

ATOK12 げすの/勘ぐり 下司の/勘ぐり
ATOK13 下/巣の/勘ぐり
IME95 4.0 下衆の/勘繰り 下司の/勘操り 下種の/勘操り
MS-IME2000 下種の/勘操り 下衆の/勘繰り 下司の/勘操り
NECAIIME95 2.0 下衆の勘繰り
松茸 Ver.4.1 げすの/勘操り 下種の/勘操り 下衆の/勘繰り ゲスの/勘操り
WXG4.0 下衆の/勘繰り 下司の/勘操り 下種の/勘操り

それはともかく、大晦日にエリツィン大統領の辞任が報じられたとき、まさかコンピュータの西暦2000年問題の責任をとりたくなくてやめるんじゃなかろーな、待てよ、となるとロシアからミサイルが飛んでくる可能性がかなり……てなことを考えたのは私ぐらいでしょうか。

00/01/07

『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』(山本夏彦、文春新書)読了。

『室内』というインテリア専門誌(工作社刊、山本夏彦が創刊)に連載されている(いた?)、工作社に勤める若い女性との対談をまとめた本。さまざまな問答を通じて、戦後にゆがめられ、忘れられた「戦前」を浮かび上がらせようとしています。

惜しむらくは話が尻切れとんぼになっていること。この本が売れたら続編が出るそうなので、みなさまご協力くださいまし。とてもおもしろい本です。

実際のところ、ほんのちょっと前に山本夏彦を知った私には、この人のこれまでの本はなかなかに取っつきにくいところがありまして。

同じ話が繰り返されるのはそれがこの人の主張の眼目なのでおくとして、気になるのはいささか文章の省略が過ぎるきらいがあること。わかる人にはこれだけでわかる、というのはお説ごもっともで、かんでふくめるようにやさしく説いて理解させたからといってそれが身につくかどうかは別問題、苦労して読み解くか、いっそひと目でわかってしまう人だけが読めばいい、というのもわかるような気はします。

でも、せっかくいい話が書いてあるのにそれではもったいないじゃありませんか。こういうのはもっとたくさんの人に読んでもらわなくちゃ。

などと思っていたところにこの本です。相手をしている女性は山本翁の教育のよろしきを得て多少語彙や感性を磨いたとはいってもしょせんは現代の娘っ子、すでにして基礎が違います。ただし、頓知や切り返しはなかなかのもので、若い女性のそこはかとない色気さえ漂わせつつ、溌剌とした受け答えで山本翁の「戦前」語りの狂言回しをつとめているのです。

おかげでおつむのできのよろしくない私にも、翁の話や現代人がなにをどう勘違いするのかが実によくわかる。へたな漫才よりもおもしろいやりとりを楽しみながら山本夏彦の世界の精髄が理解できる仕掛けになっていて、山本夏彦入門にうってつけの一冊ではないでしょうか。

「戦前」がどんな時代だったのか正しく理解したい人だけでなく、自分が何者なのか忘れつつある日本人全員が読むべき本かも。

ちなみに、タイトルで連想したのは「上海帰りのリル」の方でした。

00/01/14

ちょっと前の朝日新聞の記事より。

■埼玉“新生”はまず名前から――10日から公募
 浦和・大宮・与野3市合併、まだ足踏み 
 合併による100万人都市実現を目指す埼玉県の浦和、大宮、与野3市が10日から新市名を募集する。「ダサイタマ」返上を狙う県は、「イメージチェンジのきっかけに」と期待する。しかし、当初今春の予定だった新市誕生が、3市による協議の難航で、今ではその時期も不透明。新市名が宙に浮く可能性もあり、関係者からは「かえってダサイ姿をさらすことになるのでは」と心配の声も出ている。(略)


関東に新しい大型の都市ができるなら、ここは一番「新東京市」はどうでしょう。

で、次に千葉か茨城あたりに「第2新東京市」、そしてなんとか西暦2015年までに「第3以下略。


同じ日の朝日新聞より。

■00年代を、どう呼ぼう
 ゼロズ?ノーティーズ?未決着 
 【ロンドン9日=沢村亙】1980年代、1990年代に続く「2000−2009年」を「何年代」と呼ぶか、英米など英語圏の国で静かな議論になっている。世論調査やインターネットを用いた人気投票では「ゼロズ(Zeroes)」「ノーティーズ(Naughties)」が有力候補だが、決め手はまだ見つかっていない。
(略)


これもまあ気になるといえば気になりますけど(どっちでもいいといえばどっちでもいいけど)、こればかりでもありますまい。

去年の終わりごろ、マスメディアが「1900年代最後」と繰り返すのに対して、「1900年代」は1900〜1909年なのではないのか、それともダブルミーニングなのか、などと批判している人がおりました。

実際問題、「1900年代」だけでは1900〜1909年と1900〜1999年を区別できないような。どっちがどっちか簡単にわかる呼び方ってあるんでしょうかね。

で、今度はさらにめんどうな時代でして、「2000年代」はいったい2000〜2009年か、2000〜2099年なのか、はたまた2000〜2999年のことなのか。

はたして2000年代のうちに結論はでるのでしょうか。って、この場合の「2000年代のうち」は十年間か百年間かそれとも千年間なのか。


さらに同じ日の朝日新聞の「天声人語」より。

 むずかしい文字だらけの古文書の中身をコンピューターに移す試みが、アジア各国で関心を集めている。膨大な漢字や特殊な甲骨文字をパソコンで使えるようになったからだ。
 もちろん、こうした文字はふつうは必要ない。だから用意されていない。そこで、一つひとつについて字体を作り、おのおの番号を割り振るという面倒な作業が要求される。日本でこれをやり遂げたのが、横浜市の古家時雄さんだ。ただし専門家にあらず、本業は中華まんじゅうの製造である。
(略)
 仕込み後の本業は家族らにまかせる。土、日、祝日なしに励んだ成果は「今昔文字鏡」と名づけられ、2年前から無償で公開されている。加えて甲骨文字、梵字(ぼんじ)を採り入れ、ベトナムの国語学会の依頼で数千のベトナム漢字も収録。これらをふくめ、計13万字を自在に使えるようにしたソフトが、さきごろパーソナルメディア社から発売された。

 「企業も政府もやらない。競争相手はありませんでした」。中華まんじゅうのもうけをつぎ込む古家さんを、家族は半ばあきれながら応援して、一つの文化財産ができあがった。


うーん、古家さんのご苦労はご苦労として、なんだか「今昔文字鏡」が13万字を扱えるようにも読めるし(今後文字数を増やしていけば扱えるでしょうけど)、ファイル名などにも13万種類の字を使える BTRON 準拠の「超漢字」という OS の話がアプリケーションソフトみたいな印象を与えかねない書き方ですね。

実際には、「今昔文字鏡」から約77000文字、ほかにJIS第1水準・第2水準、JIS補助漢字、韓国語、中国語簡体字、中国語伝統字、漢字以外のUnicode基本多言語面の文字、点字などをあわせて約13万字だそうで。

ということで、ようやく「超漢字」パーソナルメディア)をインストール。マニュアルを頭から読みつつぼちぼちいじり始めたところです。

理屈がよくわかってないので DVD-ROM ドライブで大丈夫かと心配しつつ CD-ROM から直接インストールしたのですが、まったく問題なく入ってしまいました。NEC の LaVie-NX(PC-LW450J/14DV)で動作確認です>パーソナルメディア様(だからここで書いても以下略)

多漢字環境といえば、新JIS漢字が1月20日制定の予定でしたっけ。

一足早く第3・第4水準のフォントがこちらで入手できるようです。


新しいパソコンにデータを移すために LAN 接続。ことのついでに LAN 接続先のパソコンのキー入力やマウス操作ができるというどこドアも試してみましたが、いやー、これはおもしろい。データを移し終えたあとも LAN を使い続けるようならレジストしなくちゃ。

ただし、ひとつ弱点を発見。古い方のパソコンは NEC の PC9821 シリーズで、不精者の私は WIN95 のコントロールパネルのキーボード設定で [XFER] だけで IME のオン・オフが切り替わるようにしてたのですが(PC9821 特有の設定らしい)、「どこドア」は [Ctrl]+[XFER] は受け付けても [XFER] だけだとむこうの IME のオン・オフができないんですね。

でもよくできたソフトだと思います。すごいすごい。

00/01/19

日本の標準の今回のテーマは「三重県の所属」。三重県が近畿地方か中部地方かを多数決で標準的考え方として決めようというお遊びです。

地勢的には紀伊半島にあって木曽三川で愛知や岐阜と隔てられ、行政的にも近畿地方なのですが、すくなくとも伊勢湾岸沿いあたりは中部圏というのが三重県の志摩半島出身・愛知県名古屋付近在住者としての実感なんですけどね。

たとえ定められているといっても絶対的なものでもなくて、たとえば自動車を運転しているときに完全に道交法に則って運転するのではなく、状況を見ながらある程度は流れに乗って速度超過しているようなものでしょう。要は原則重視か実状重視か、ということですね。行政区分だと日本最南端の沖の鳥島も関東地方じゃなかったっけ。

もっとも、大幅な速度超過で捕まったものの、取り締まりの警官と話しているうちに仲良くなって点数が以下略なんてのは論外ではありますが。

それより気になるのは近畿地方。三重や和歌山、兵庫、滋賀などが「近畿」なのはともかく、畿内であるはずの大和・山城・河内・摂津・和泉を含む地域までひとくくりに「近畿」地方と呼ぶのはいかがなものでしょう。

などといいつつ、三重県が近畿地方であろうと中部地方であろうと実はどうでもいいんです。朋輩もいってるように三重県には神宮(通称「伊勢神宮」)もあるしモデルといわれる伊勢神宮別宮・滝原宮もある。志摩にはこれも伊勢神宮別宮の伊雑宮、熊野には熊野本宮に熊野新宮も。ほとんど一人勝ちなんですから(意味不明)。

とはいえ、熊野で牛王ごおう宝印を買ってきたなんて話は最近あんまり聞かないですね。牛王の使いの鴉の絵が描いてあって、裏に約束事を書くのに使い、約束を破ると鴉が死ぬんだそうで。

年季ねんが明けたら夫婦になろうと遊女と約束して牛王宝印に起請を書かせたものの、調べてみたら三人の男に同じ内容で書いてることがわかった。三人が問いつめると、遊女の約束なんて反故にするためにするようなもので、「遊女が起請を一枚書けば、熊野で鴉が三羽死ぬ」というじゃないか、あたしゃ世の中の鴉を全部殺して朝寝がしたいのさ。

というのが落語「三枚起請」ですけど、初めて知ったときにはオチが弱いなあ、なんて思ってしまいました。あとで高杉晋作だっけ、

三千世界の鴉を殺し ぬしと朝寝がしてみたい


を知って、ああこれだったか、と胸落ちしたものです。


「超漢字」パーソナルメディア)のほうは一日3センチぐらいのペースでぼちぼちと進行中。

ようやく少しだけつかめてきました。


年が明けてからちょっとばたばたしてるせいか、まとまりがないなあ。

00/01/20

東海地方各地で明日は雪の予報。出張があるのに(しくしく)。


昨年暮れに買った『「豆朝日新聞」始末』(山本夏彦、文春文庫)がどうしても見つかりません。部屋の中で行方不明になったみたいです。

かわりに、先日読み終えたばかりの『世は〆切』(山本夏彦、文春文庫)がもう一冊出てきました。

この世は謎と驚異に満ちているようです。

00/01/21

今日の朝日新聞の記事より

■暴行の迷惑、働いて償います
 サポーターの男性がJ2仙台に申し出 
 仙台スタジアムで昨秋行われたプロサッカーJリーグ2部(J2)の試合後、グラウンドに飛び降りて審判に暴行した宮城県内の男性サポーター(35)が、3月から始まる新シーズンの期間中、同スタジアムでの無償奉仕を申し出た。応援していたベガルタ仙台の運営会社がJリーグから制裁金300万円などの処分を受けた「おわび」といい、球団側は主催ゲームの警備などを担当してもらう予定だ。


こういうのを適材適所というのかも。まあこちらにはかなわないでしょうけど。


『栞と紙魚子 殺戮詩集』(諸星大二郎、朝日ソノラマ)
『石神伝説(3)』(とり・みき、文藝春秋)
『虚無戦記(5) 羅王編【壱】』(石川賢、双葉社)
『別冊宝島487 インターネット事件簿』(宝島社)

を一挙に捕獲。ちょっと幸せな気分です。

00/01/22

asahi.comの記事より。

ドリームキャストのチャットに有害発言自動削除システム

 家庭用テレビゲーム機「ドリームキャスト」(ドリキャス)を製造販売するセガ・エンタープライゼスグループは来月、ドリキャスの所有者向けに運営するチャット(インターネットを通じて会員同士が文字で会話できるサービス)に、ひぼう中傷などの有害発言があればそれを自動的に削除するシステムを導入する。チャットの利用者には小中学生も多いため、健全な会話の場にしようという狙いだ。
(略)
 システムには、ひぼう中傷にあたる用語のほか、わいせつな言葉や差別語など約500の有害語が登録されている。有害語を含む文を掲示板に書き込もうとすると、コンピューターにはねつけられる仕組みだ。有害語は今後追加していくこともできる。(略)


ということは、「ふりむけばかなたに青い海」とか「たゆまぬけいこのたまもの」とか「丸目蔵人(まるめくらんど)という剣豪がいた」とか「ちょっとした行きちがいです」なんてのもはねられるのでしょうか。だとしたらあんがい不便かも。

そもそも「ひぼう中傷」をどうやって判断するのでしょう。「わいせつな言葉や差別語」を使わなくても問題発言をすることはできるんだし。ほめ殺しにはちゃんと対応できるのでしょうか。

もしできるんなら、女性をオークションに登録するなんていう人身売買まがいのことが起こらないようなシステムも作ってほしいですね。そういうことができていたらくだらないことで菜摘さんが心を痛めることはなかったのに。


『トランジスタ技術』の今月号はモータ制御の特集でした。

で、編集後記を読んでいたら、自分の車はときどきエンストを起こすが、とたんにパワステが効かなくなる、こんなところにまでモータが使われているとは思わなかった、とか書いてありました。

ふつうパワーステアリングとかブレーキのブースターは、エンジンからベルト伝動で回したポンプの圧力を使って動きを補助してます。エンストでパワステやブレーキが重くなるのはこのため。ほんとにモータを使っているとしたらこの人の車はちょっと特殊かも。

というより、エンストした時点ではイグニションは入ってるんだから電装系は生きいるということに気づいてほしかったりする。


『石神伝説(3)』(とり・みき、文藝春秋)読了。

はて、以下続刊か、と思ったら、今週号の『週刊文春』に作者の近況が書いてありました。終わらせるつもりだったのに全然終わりませんでした、だそうで。早期再開を望みますとっととつづきをかくべし

ところで、この作品は「いしがみでんせつ」と読んぢゃいけなかったんですね。三巻目にしてようやく気づきました。

00/01/23

とあるスポーツ新聞で韓国映画「シュリ」を紹介していたのですが、ストーリー紹介の中に「多発している暗殺事件の裏になぞの女スパイナーの影」という記述が。

うーん、たぶん「スナイパー」を間違えたんでしょうけど、『ウルトラセブン』第28話「700キロを突っ走れ!!」に「スパイナー火薬」というのが登場した影響でしょうか。それともたんにスパイ映画だからそれに引っ張られただけでしょうか。


『栞と紙魚子 殺戮詩集』(諸星大二郎、朝日ソノラマ)読了。明るい怪奇スプラッタ不条理漫画として独自の世界を築いてますね。ますますおもしろい。以下、本筋には関係ないけどちょっとネタばれ。

くすぐりとしては、輸入雑貨の店にいろいろ怪しげなものが並んでいる中に「通ひ公人形 手がのびます」とか、「刹笑園」という庭園の地下にある古墳を解説する小説家・段一知先生がいきなり黒いスーツに黒ネクタイ、総髪のりりしい顔になって紙魚子が「先生、顔が違ってます」。

以前にも「紙魚子、妖怪ハンターみたい」とか、別の漫画でも「俺は20年前からこの髪型だ」とか、稗田ネタギャグにはますます磨きがかかってるようです。

00/01/26

NEC のパソコンに発煙や異臭の恐れがあるとして、VALUESTAR NX 省スペースモデル 該当確認ページなんてなものまでできてるようで。

asahi.comには「パソコンにはきわめて珍しいトラブル」なんて書いてあるけど、なんか10年ぐらい前にもどこかのパソコンでほぼ同じ不具合があったような。

まあ半年に一度新製品が出る商品で10年に一度が珍しいかどうかというのは判断の分かれるところかもしれませんが、ほかの家電製品に比べるとどうなんでしょう。


『別冊宝島487 インターネット事件簿』(宝島社)をざっと読み終えたところに、この本でも紹介されていたDVDの暗号解読プログラム「DeCSS」に関して、同ソフトを作成してインターネットを通じて配布した容疑で16歳の少年をノルウェー警察が逮捕したというニュースが。

ちょっと前にニューヨーク連邦地裁で「DeCSS」の掲載中止を命じる仮処分がでているし、関係者はかなり慌ててるようで(あたりまいだ)。

DVDといえば、新しいパソコンでDVD-ROMビデオを再生しようとしたらいきなりエラーでソフトウェアDVDプレーヤーが起動しない不具合が。

結局、ディスプレイの設定を32ビットカラーにしたのがいけなかったみたいで、出荷時の16ビットカラーに戻したら動くようになりました。

ということで、追加情報ありがとうございました>某氏

00/01/28

今はなき『月刊コミック・トム』(潮出版社)に十数年にわたって連載していた歴史漫画「風雲児たち」(みなもと太郎)の続編「雲竜奔馬」(「月刊トムプラス」連載)の単行本も、はや三巻。

第二巻の幕末の日米領土交渉に続いてこの巻では日露領土交渉が始まります。北方領土返還交渉の際にいわれる「北方四島は歴史的に見ても日本固有の領土である」という説の根拠になっている日露和親条約に向けての話し合いです。

日米領土交渉の際には、小笠原は危うくアメリカの領土になるところでした。それをなんとか覆したのが「風雲児たち」でも活躍した林子平の『三国通覧図説』の翻訳本。また、今回のロシアとの領土交渉にも「風雲児たち」の主要人物が関わってきます。

これだと「雲竜奔馬」から読み始めた人にはぴんとこないんじゃないのかなあ。先日も友人と話していたのですが、こういう展開になるのならどうして「風雲児たち」を終わらせちゃったんでしょうね。ほんと、もったいない。


これも『月刊コミック・トム』に連載していた『西遊妖猿伝』(諸星大二郎、潮出版社)のほうは今度で15巻め。14巻での紅孩児に続いて今回もまたなじみの顔が……。

まあ16巻で第二部完結と書いてあるから収束には向かってるんだろうけど、主要登場人物全員で天竺に向かうわけにもいかず、寂しくはあるもののまあこれが物語の宿命かも。

しかし、作者はすでに飽きつつあるような話も聞くし、第三部は望み薄かな。


『杉田玄白 蘭学事始』(片桐一男全訳注、講談社学術文庫)の原文の部分だけ読了。総ルビなので読むだけなら簡単なのです(えっへん)。

さっきも紹介した『風雲児たち』(みなもと太郎、潮出版社、全30巻)を読んであると、『風雲児たち』に出てこない話もあるし『風雲児たち』の方が詳しく描いてある部分もあって、さらに楽しめます。

ところで『蘭学事始』に書いてある「フルヘッヘンド」翻訳の一件ですが、私も小学校だか中学校だかの教科書で読んだことがあります。が、のちに『解体新書』の原本『たあへるあなとみあ』の該当部分には「フルヘッヘンド」なる単語は出てこないと知りました。杉田玄白の記憶違いだろう、というのですね。この本の注にはさらに詳しく解説してあります。

にしても、『解体新書』翻訳の話しか書かれてないというイメージがあった『蘭学事始』ですが、読んでみると『解体新書』以前や以後に蘭学を始めたり広めたりしたさまざまな人が紹介されていて、なかなかにおもしろい内容でした。


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