とぜんそう2003年4月分

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03/04/06

昨年一番おもしろかった漫画は秋口に読み始めた今市子の『百鬼夜行抄』(朝日ソノラマ)という妖異譚ですが、早くも今年一番と思えるものに出会ってしまいました。

『月刊アフタヌーン』連載中の「もっけ」(熊倉隆敏、現在2巻まで)がそれで、これまた妖異譚ですけど(というか基本的に妖異譚が好きなんですね。「墓場の鬼太郎」「妖怪ハンター」「ミスター仙人」「陰陽師」等々)、あっちの世界のものが見えてしまう中学生の姉とものに憑かれやすい小学生の妹が日常の中で怪しいものたちと出会い、自分たちの運命について悩みつつも明るく生きていくという、なんというか「ゲゲゲのちびまる子ちゃん」とでも呼びたくなる話です。登場人物の表情にもときどき「ちびまる子ちゃん」から影響を受けたとおぼしき部分がみられますし。

資料もよく調べているようで妖怪蘊蓄漫画としても楽しめそう。「クダンノコト」にはしっかりと小松左京の「くだんのはは」のことも出てくるし。またそれぞれの怪異の解釈や話への組み込みかたもよくできていてなかなか楽しめます。


先日とある掲示板で名古屋方面の交通マナーについてやりとりしていたのですが、まとめてみると自己中心的であきらめが悪く、とにかく損をしたくないと考えて運転している人が少なくないみたいだというような結論でした。

ところで先週土曜日の中日新聞「こちら編集局デスク」というコラムに、東京新聞と同じエイプリルフール記事を載せてみたら中日新聞にはかなりの数の抗議や苦情が来た、と書いてありました。とりあえず「堅実な県民性」などとフォローしておりましたが、要はしゃれがわからない石頭というか余裕のなさで、この余裕のなさが愛知県の運転マナーの悪さにもつながっているような気がしてしまいました。


きょうのぐーぐる。

バグダッド:30700、バクダッド:8010、バグダット:2370、バクダット:1500

03/04/07

朝日新聞の土曜版「be on Saturday」で「言葉の旅人」という企画が始まりました。記念すべき第1回は天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言へりで、この言葉についての随筆を書いているのがあの「ポリティカにっぽん」でおなじみの早野透センセ。

しかし、この文章を読む限りではこのお人は福沢諭吉がアジア諸国の人に対して差別感情を持っていたことはご存じないみたいですね。諭吉の「人」に奴隷や女性は入っていてもアジアの人々が入っていなかった可能性があることには考えが及ばなかったようで。

だからといって、福翁をけなすつもりはありません。当時にあっては「脱亜入欧」といわれていたとおり欧米は進歩的で見習うべき対象であり、アジアが一段劣ると考えられるのも致し方なかったからです。

さげすむべきは、当時のそういった風潮の尻馬に乗って関東大震災の折りに中国朝鮮の人々に関するデマを大きく流しておきながら、そんな話はなかったことにして社内資料からも抹殺してしまった某新聞のようなメディアでしょうね。

日本人には過去を反省せよといいつつ自分はこの態度。この新聞が反戦に与してるのも反戦運動をうさんくさく感じる理由のひとつのような気がします。


本多勝一の『日本語の作文技術』が新装版で出ておりました。

自分の文章に多大な影響を与えた人がふたりいて、ひとりは星新一、もうひとりが本多勝一、というか本多勝一の書いた『日本語の作文技術』(朝日文庫)です。星新一は作品を数十冊読むうちに自然と書き方をまねしておりました。

そして『日本語の作文技術』は「読みやすい文章」を理論的に解説し、「名文を書くには才能が必要だが文章を読みやすくするだけなら技術でやれる」ことを教えてくれた本です。この本を読む前と読んだあとで自分の文章がまるっきりと言っていいぐらい変わったのが自分でもわかりました。今も完全に影響下にあるはずです。

朝日文庫版を見つけたのは偶然でしたが、たぶん幸福な出会いだったと思います。今だったらおそらく本多勝一が書いたというだけで読まないでしょうから。

文章を書く上で大切なことが述べられておりますので、読めば必ず収穫があるはずです。内容が大幅に変更されていない限りは。

03/04/13

先日ラジオを聞いていたら、なんだか「ピジョンミルク」とか「ピジョンズミルク」とかいう歌手のグループがいるらしい。

グループ名は「鳥類である鳩はミルクは出ないことから、あり得ないもの」とかいうところからつけたんだとか。

このラジオのスタッフの人たちは鳩が雛に「ピジョンミルク」とか「ピジョンズミルク」と呼ばれているものを与えているのをご存じないのでしょうか。まあ哺乳類の与える「乳」そのものではなく、肥大したそ嚢壁がはがれたものを雛に食べさせているわけですが、「あり得ない」わけではなく現に存在しております。


以前にも書いたように戦争自体をいいことだとは思っていないし、ブッシュ政権のやりかたにもあまり好印象を持っていないのですが、朝日新聞投書欄あたりでよく見かける以下のような意見はどうかなあ。

「イラクには大量破壊兵器を廃棄しろといいながら、アメリカは持っている」
「戦争は何も生み出さない」

前の方のご意見はなぜイラクが大量破壊兵器を持ってはいけないことになったのか知らないということであり、後者に至っては今の日本で堂々とそういう発言ができるようになったのは何がきっかけかということを忘れているとしか思えない。

それにしても今のバグダッドの状態はどうだろう。博物館からハンムラビ法典の刻まれた石版まで盗まれたなんて。そいつからもなにかこれに相当する大事なものを盗んでやれ(同害報復の原則目には目を)。

おや、Microsoft Encarta では「ハンムラピ法典(Code of Hammurapi)」になってますね。ATOK16でも変換しないけど。ということでさっそくぐーぐってみる。

「ハンムラビ法典」1960件、「ハンムラピ法典」82件、「Hammurabi」47300件、「Hammurapi」2420件。

うーん、どっちがどっちなんだろう? あるいは英語にした場合はどっちでもいいのか?

※掲示板で指摘があったので一部の文章を手直ししました。

03/04/14

Pgeon's Milkについてもう少し書こうと思っていた矢先、今夜の CBC ラジオの番組にご当人たちがゲスト出演し、名前の由来を教えてほしいという聴取者の質問に応じる形で概略以下のように答えておりました。

とにかく“P”で始まるグループ名にしたかったので辞書を引いていてこの言葉を見つけた。鳩が雛に与えるミルク状のもののことだが、同時に鳥類に乳だから「あり得ないもの」という意味もある。現実に存在するのにあり得ないという不思議な言葉であり、語感も気に入ったのでこれをグループ名にすることにした。

現在のところこれが公式見解のようです。あるいは公式見解が決まったのでラジオなどで公に由来を語るようになったのかもしれません>下忍さん

ちなみにメンバーの女性はピジョンミルクを「ゲロ」と称しており、司会の女性も鳥類では未消化の食べ物を吐き出して雛の餌にするのはよくあるから、とフォローしておりました。先日の番組よりはまだましかも。

「ピジョンミルク」という言葉はしかしどこで覚えたんだろう? 「レース鳩777アラシ」かな?(違うような気がする)


Japan Air Show Society 主催者の破産宣告通知が届きました。

でも、日本でもエアショーが見たいという気持ちは変わっていません。アメリカ本土でアメリカ人に囲まれながら真珠湾攻撃再現を見るという刺戟的体験はともかく、あの楽しさは忘れられるもんじゃない。その日が来るのを待ちたいと思います。とはいえ零戦の里帰り飛行はもう絶望的だろうなあ……。


昼休みにウォーキングをしていたら膝の内側が痛みだしました。自分の見立てでは半月板損傷。思わず跪く。脆い。


しまった、「ハムラビ法典」が2300件で日本語では一番多かった>ぐーぐる

ちなみに「ハムラピ法典」は7件。

03/04/16

昨日の朝日新聞夕刊に料理研究家・小林カツ代さんがこんなご意見を寄せておられました。ちなみに趣旨は反戦・反米です。

(食べ物に関する味や香りの取り合わせの話を書いた後)何か人間をすごく愛している存在があって、おいしく食べさせよう、楽しませようとしている。そこまで生かそうとする自然の摂理をみていると、絶対に殺したり、殺されたりしてはいけないのです。

 大量破壊兵器を持っているらしいと、あんなに殺して。大量破壊兵器はまだ見つからない。一番持っているのはアメリカでしょ。小泉さんなぜ追求しないの。情けない人を首相に持ちました。


料理研究の大家にこんなに恥をかかせて。どうして大量破壊兵器をイラクが持ってはいけないのか朝日新聞さんなぜ説明しないの。情けない言論機関をオピニオンリーダーに持ちました。

それにしても、食材が人間に香りや味を楽しませるために存在するみたいな考えってのはどうなんでしょう。しかも「人間をすごく愛している存在」がそれを提供してるとは。その考えをちょっと発展させるだけで「アメリカの正義」をほかの文化圏に押しつける行為に近くなるとご本人は気づかないのでしょうか。

さらに、人間がほかの動物や植物をおいしくいただくためにはそれらを殺さなければいけないということが頭から抜け落ちているようです。もっとも、昔、生きたものを殺すのはいけないと主張して川に打ち上げられた死んだ魚ばかり食べておなかをこわして死んだ人もいるそうですから、ひょっとするとこの料理研究家が使っている食材は以下略。


ついでに、昨日の朝日新聞投書欄の27歳医学生のかたのご意見。この人、戦争に反対するためにひとりでアメリカに経済制裁を加えているのだそうです。その内容は、

・米国の領土へ行かない。
・米国産の食料を極力買わない。
・生活必需品のパソコンは買い換えを遅らせる。
・ハリウッド映画は見ない。

この運動が他の人にも広がり、結果日本の不況をさらに加速させようとも甘んじて受け入れる覚悟だとか。

どうせならアメリカのテレビ番組も見ない、アメリカの音楽も聴かない、アメリカ文化はすべて排除する、英語は敵性語なのでつかわない、アメリカ人を見かけたら当局に国外退去願いを出す、医療機器や医薬品もアメリカ製は大学から排除する、なども徹底したらいかがでしょう。

さらに、テレビ・ラジオ・電話・インターネットなどはアメリカ産の技術なので使わないとか、戦後民主主義はアメリカに押しつけられたものだから捨てるとか。

戦争もお嫌いのご様子だから、戦争とそれに関連する言葉も発してはいけないことにしましょう。どうしても触れざるを得ないときには「セ」と呼称する……小松左京だったかなな。

03/04/18

仕事帰りにコンビニエンスストアに寄ったところ、マルコメから「伊勢志摩産 あおさみそ汁」というカップタイプの生味噌汁が並んでおりました。ふるさとの春の味です。

思わず一個買ってしまいましたが、考えてみたら春の彼岸に法事でとんぼ帰りしたときに味わったばかりでした。

しかし、マルコメのサイトの「即席カップタイプみそ汁」に紹介されていないところをみると地域限定かあるいは季節限定だったのか。

いずれにしても次の季節には「めかぶ汁」希望。


『お言葉ですが(7)漢字語源の筋違い』(高島俊男、文藝春秋)、
『最後の波の音』(山本夏彦、文藝春秋)、
『ワイルドライフ(1)』(藤崎聖人、小学館)など。

03/04/23

先日の朝日新聞「朝日川柳」にこんな川柳が選ばれてました。頭の☆マークはたぶん今日の特選という意味でしょう。

☆アリババの DNA が暴れ出し
(選評 略奪横行)


まあアリババだって「持てるもの」から掠め取ったわけだし、字数制限のある川柳ならしかたないのかな、と思っていたら、今度は昨日の「かたえくぼ」にこんなのが。

『バグダッドで略奪横行』
もしかしてオレたちのことかい
──アリババと40人の盗賊


どうも朝日新聞とその読者はアリババを盗賊の頭目か一味と思っているようですね。

もう少し穿って考えるなら、川柳や「かたえくぼ」に投稿した人はくだんの川柳の少し前に「天声人語」で取り上げた「アリババと40人の盗賊」というタイトルだけでこれらの作品を思いついたのかも。どっちにしても選者と校閲は「アリババと40人の盗賊」を読んだことがないらしい。たしかに紛らわしいタイトルではあるけど、タイトルのイメージだけで決めつけるのはどうなんだろう。

それとも私が知らないだけでアリババが盗賊の一味として登場する「アリババと40人の盗賊」もあって、そっちのほうが世間では流通しているのでしょうか。あるいは、最終的に盗賊たちの財宝を我がものにしたのだからアリババも盗賊と五十歩百歩という解釈が一般的なのか。


暴走族追放ポスターを作成/西署や3区役所

そのうちアニメなんかでも「エヴァ初號機(仮名)、珍走を始めました」なんていうようになるのかな(早とちり)。

ネタ元はお笑いパソコン日誌でした。

03/04/25

今日の朝日新聞投書欄に、72歳男性のご意見が掲載されておりました。以下概要。

戦時中日本軍がシンガポールへ攻め込んだときに尾張徳川家19代当主が王立植物園への軍の介入を許さず、無事な姿で終戦を迎えた。今度のイラク戦争はこれと対照的にバグダッドで文化遺産が掠奪された。

という感じでアメリカ軍への批判が述べられています。ということは、このかたはイラクの文化遺産を奪ったのはアメリカ軍だと思っておられるわけでしょうか。朝日新聞側は掠奪を防ぐためにアメリカ軍に介入せよと主張してるのに。

反戦反米の意見なら矛盾があろうが無理があろうが、という感じですね。これからも楽しませてください。


そういえばオーストラリアに出張したとき、メルボルンの王立植物園を訪れる機会がありました。様々な植物が集められているというだけでなく、全体のたたずまいもすばらしいものでした。あれを荒らされたら私も泣きます。

しかし、考えてみると私の行ったことのある外国って、その領土を日本軍が武力で攻めたことのあるところばかりだなあ。なんの因縁だろう。

03/04/26

最近部署が変わったおかげで昼休みに囲碁対局ソフトで遊べず、せっかくの新コンテンツが早くも更新停止。

で、かわりに雨の降らない日は食後に仕事場の裏手の土手を散歩しているのですが、本日土手の上から見慣れない動物を見かけました。

一緒に歩いていた同僚が発見したもので、姿は鼠によく似ているものの、大きさは体だけで40センチを、尻尾まで入れたら60センチを越えようかという巨大なもの。それが2匹、川の中を泳いでいるのです。同僚は気味悪がることしきり。

そ、たぶんそいつの正体はヌートリア。以下、「エンカルタ総合大百科2003」より。

ヌートリア Coypu 南アメリカにすむげっ歯類。赤褐色または黄褐色の上毛と濃灰色の下毛をもつ。後足には水かきがあり、歯は丈夫である。体長は43〜64cmに達し、尾は長く鱗(うろこ)状になっている。湿地帯の地下に巣穴をほり、おもに水草を食べている。下毛はビーバーの毛皮に似せて加工され、販売される。日本でも昭和初期に導入され、のちに野生化したが、今は荒川下流域にわずかに生息するのみである。


愛知県に荒川があるというのは初耳でしたが、水かきで泳いで淡水性の水草を食べるというのならまあ間違いのないところでしょう。

海豹なら「かわい〜」とかいわれるのに巨大鼠の類だと無気味がられるというのはなんか不公平な気もしますがまあ世の中そうしたものです。

で、じつはこのヌートリア、中学生の時分にはすでに名前を知っておりまして、きっかけは伯父に買ってもらった平凡社の『世界大百科事典』で「ぬーと」のあたりを調べていたからだというのはわかる人にはわかる話ではないかと。


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庵主:matsumu@mars.dti.ne.jp