やまいもの雑記

サイボーグ009

石ノ森章太郎
順番で行くと「スーパージェッター」だけど、HTMLファイル名を見てて気が変わってしまったのことである。だいたいこれの前の「8マン」だって、ファイル名と番号合わせるためにひとつ番外入れてるし。しかしそうなると次は「緊急指令10−4・10−10」か?そのあとは意表を突いて「横浜いれぶん」で木之内みどりという手もあるな。彼女のデビュー曲が何というタイトルだったか知ってる人もそうはいるまい(それ以前に木之内みどりを知ってる(覚えてる)人がどれくらいいるのやら)。

閑話休題。記憶によれば『サイボーグ009』は最初『週刊少年キング』(少年画報社)に連載され(秋田書店サンデーコミックス版(以下SC版)の1〜4巻。「誕生編」「ベトナム編」「ミュートスサイボーグ編」)、次いで『週刊少年マガジン』(講談社)に連載(SC版5〜8巻。「地下帝国ヨミ編」「怪物島編」「砂漠のモーゼ編」)、さらに『月刊冒険王』(秋田書店)にも連載していた(SC版8〜10巻。「移民編」「ローレライの唄編」「海の底編」「天使編」)。

あとは『週刊少年サンデー』(小学館)に連載していたのをちらっと見た記憶があるのと、某K○○ん氏(笑)の情報で秋田書店の愛蔵版の21巻「神々との戦い」が『月刊COM』掲載と知ったぐらいで、残りは雑誌に掲載されたものやら書き下ろしなのやら皆目さっぱり全然まったくである。

で、実をいうと自分がいつ『サイボーグ009』を知ったのか、まったく覚えていない。あるいは『鉄腕アトム』や『鉄人28』号と同じく、幼いころに刷り込まれたのかもしれない。SC版の第2巻あたりで「夢の超特急」にあこがれてただ乗りするシーンがあったから、連載が始まったのは1960年代前半ぐらいか。とにかく新幹線と併走する009の姿が最古の記憶である(もしかすると白黒版テレビアニメのオープニングと混同してるかも)。

たぶん「サイボーグ」という言葉自体は「エイトマン」あたりで覚えていただろうが、おそらくはロボットの親戚ぐらいの意識しかなかったと思う。「改造人間」としてのサイボーグという概念は「サイボーグ009」で焼き付いたと記憶している。

当然ながら人体を改造してより優れた存在にするということは「鉄腕アトム」でも述べたように当時の私にとっては「すばらしいこと」だった。つまり、黒い幽霊団(ブラックゴースト)の科学者たちと同じ考えだったわけである。しかも洗脳無しで(笑)。まあそれだけ私がコンプレックスの強い人間ということだ。実際、中学生になるぐらいまで本気でサイボーグにあこがれていた。しかし、「バイオニック・ジェミー」(リンゼイ・ワグナー主演。胸がなくても人気のあった点は木之内みどりに似ている、なんて言うとファンが怒るだろうなあ)が製作費600万ドルと聞いてあきらめた(嘘)。

『サイボーグ009』という作品自体は知っていたものの、その誕生エピソードを読んだのは『週刊少年マガジン』連載第1回が初めてだった。その走りの速さから「ハリケーン・ジョー」と異名をとるレーサー・島村ジョーが、レース中の事故で瀕死の重傷を負って救急車で運ばれる。しかし、そのあとからもう一台救急車がやってきて、ジョーが誘拐されたとわかる。連れ去られたジョーは太平洋のある島でサイボーグにされるが、ギルモア博士の計略で同じサイボーグ仲間の8人とともに島を脱出、自分たちを改造した死の商人・黒い幽霊団と戦うことを誓うのだった。

おや、と思う人もいるかもしれない。秋田書店のSC版や愛蔵版、文庫版の「誕生編」では、サイボーグ009こと島村ジョー(記憶だとSC版第1巻では「村松ジョー」になっていた)は仲間とともに少年院を脱走したところを黒い幽霊団に捕まって改造された(このあたり、後に同じ『週刊少年キング』に連載された『ワイルド7』(望月三起也)の飛葉が踏襲している。しかし、飛葉はなぜ月に一回脱走していたのだろう?)。その後レーサーになって事故を起こし、炎の中から立ち上がって過去を回想するエピソードはあるが、レーサー・ジョーが改造されたわけではない。

事実確認したわけではないが、おそらくこれは『週刊少年マガジン』に連載を開始するに当たって、主人公が少年院出身ではまずかろうという判断で新しい設定を作ろうとしたのではなかろうか。というのも、この連載が開始された当時、劇場版漫画映画や白黒版テレビ漫画の「サイボーグ009」が製作されていたはずなのだ。当時の風潮として漫画映画の正義のヒーローが不良では都合が悪いという世間体を気にした常識的判断があっても不思議ではない。ついでに言えば、009を元レーサーの改造人間とすることで、あらゆるメカを自在に操る能力の裏付けとしたかったのではなかろうか。それが、後にどちらの版もまとめて秋田書店で単行本化されることになったため、混乱を避ける目的でレーサー・ジョーのエピソードを改変したのだと思われる。

改変といえば、少し前に読んだ秋田文庫版の「移民編」(テレビ白黒版「悲しき獣人」の漫画化)が昔読んだSC版とかなり違っていたのでSC版の最近の版のものを読んでみたら、文庫版とほぼ同じ内容だった。改変されたのは、放射能戦争で人類を含めた動植物が突然変異を起こし、奇怪な姿に変貌してしまう部分。どうやら「ウルトラセブン」の第12話と似たような運命をたどったらしい。

しかし、最近出版された『リュウの道』(石ノ森章太郎)では同様の部分がそのままになっていた。描かれた当時の社会的状況や、差別が目的でないことを鑑みて、できうる限り当時のまま出版する方針の本がぼちぼち増えてきていて、その影響で久々に復活した『リュウの道』は改変を免れたわけだ。『サイボーグ009』のように作品に人気があって絶版にならないのも考えものである。

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