やまいもの雑記

とぜんそう第一段


先日読んだ新聞のコラムにこんな事が書いてあった。以下要約。ちなみにこの回の筆者は服飾デザイナー。
職業の絡みからかよく人から「鳥類は雄が色鮮やかな場合が多いのに、人間はなぜ女性の方がおしゃれをしたがるのか」と聞かれることがある。「鳥と人間を一緒にするのが間違いです」と答えれば済む話だが、それでは面白くないのであれこれと理由を考えてみる。「男女が一緒に歩いているとき、すれ違う男性は女性の方を見る。そして、すれ違う女性も女性の方を見る。だから、一緒に歩く男性のためにおしゃれをするのだ」(以下同趣旨の答えが数種類)。
何というか、この人やこの質問をした人たちは根本的に勘違いしているのではないだろうか。鳥と人間の違いがどうのというより、最初の質問がそもそも変だということに気付いていないように見える。なぜ自然に生える羽の色と、意識的にやるおしゃれを比べなければならないのか。鳥の雄は別に羽を色鮮やかにするために何かを塗りたくったり羽以外のものをくっつけたりするわけではないし(そういう習性の鳥もいたような気もするが)、おしゃれがしたくてきれいな羽を生やしているわけでもない。適齢期(?)になれば勝手に生えてくる成人の印にすぎない。

動物を擬人化したたとえ話には、案外人間の主観たっぷりの思い違いがあるものだ(自分も気を付けなければ)。ところで、鳥や獣の雄雌と人間の男女の比較は昔から言われている話題らしく、初めて聞いたのは中学校の先生からだった。こちらの方は作為と自然を混同してはいないが、恣意的ではある。

「動物の世界を見ると、一般的に雄の方が雌より美しい。孔雀もライオンも鹿も兜虫も、雄の方が立派な羽やたてがみや角を持っている。だから、人間も女より男の方が美しいんだよ」

女生徒の大半はいやそうな顔をしていたが、彼女たちがもっと顔をしかめそうな説も聞いたことがある。

「人間も他の動物同様、雄の方が美しい。だからこそ女はおしゃれをして男の美しさに近づこうとする

これなんかはけっこう皮肉が効いていて面白いのだが、いかんせん、先ほどの主観が入ってしまっている。つまり、成人になった証しが雄雌どちらが見事かという話なのだから、要するに男女どちらの髭がりっぱかというだけのことである。おしゃれのために付け髭をする女性はあまりいないと思う。

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