やまいもの雑記

とぜんそう第四段


先日ラジオを聴いていたら、こんな葉書が紹介された。その人が電車に乗っていると、そばにいた初老の男性ふたりの話が聞こえてきたそうだ。

「自動販売機の缶コーヒーな、あれ青いのと赤いの、どっちが熱いんだ?
「俺もよくわからないんだよ」

自分にとっての常識が他の人にすれば難解な場合もあることだなあ、という趣旨だ。確かに日本国内なら「」と「」にすれば間違う人も少なくなるかもしれないとふと思いつつ、ほんとに今時こんな人がいるのかなどと考えてしまった。

その数日後に会社で他の部署の人に呼ばれた。パソコン関係でいつも使い方の指導や厄介事の解決を頼んでくるベテラン社員たちだ。うちの会社は機械関係なので、当然ながらコンピュータにはほとんど無縁。今回はCDーROM付きのキー入力練習プログラムの本を買ってきたのだが、どうやってプログラムを動かせばいいのかわからないという。

「その本に動かし方が書いてあるはずですよ」
「まだ読んでないんだよ。ちょっと頼むよ」

そこにいる二人ともそういった方面にはまったく疎いし、取説を見てから何かを始めるようなタマでもない。断れば別の誰かが迷惑を蒙るだけだろう。その部署のパソコンには MS-Windows 3.1 が入っているので、まずファイルマネージャでCDーROMドライブを確認しようと思いながらふとそのCDーROMを見ると……。

Windows95
キー入力練習プログラム

「これ、このパソコンじゃ動きませんよ」
「え、だってこれ Windows でしょ?

世間であれだけ騒いでも、所詮一般の人の認識としてはこんなものなのだろう。Machintosh 用のソフトを買ってこなかっただけ上出来だったのかもしれない。

二人に事情を説明したあと、ため息をつきながら缶コーヒーを買った。虚脱感のせいか、ホットのつもりがコールドを押していた。温めてから飲んだら心なしかまずかった。所詮人間の敵は人間ということか……。

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