やまいもの雑記
ショック・センテンス・シリーズ:「南極大陸の北部」の超真相!
皆さん、こんにちは。私がセンテンス・エンタテイナーのいかるが・あきおです(今思い付いた。おっと、忘れちゃいけない。あすか先生ごめんなさい)。今回は私の前にスフィンクスの投げ掛ける謎のごとく立ちはだかった難問についてお話ししましょう。
「南極大陸が北部に大きくはりだし」という表現で私の方向感覚を混乱に陥れてくれた『2002年−ムー大陸の大浮上』(広瀬謙次郎著、日本文芸社刊)(お言葉ですねに11月16日付で収録)だが、今度は次のような文章が見つかった。
(略)当分の間、人類の生活は南半球に集中して行われることになるだろう。もっとも、磁極が半転してしまったため、旧赤道から東半分といったほうが正確ではある。
はて、この場合著者は一体何を基準に「東半分」と言っているのだろう。
単純に考えた場合、北を上として地球を見れば右側が東半分だ。しかし、ぐるりと回って反対側から見ればその範囲は西半分になる。
また東経0度から180度までを東半分と考えても、磁極が90度動いて現在の赤道上に北極と南極が来た場合に元赤道が経度0になるとは限らない。それに元赤道を通って北極点から南極点に向かう線は2本引けるから、どちらを経度0とするかで「東半分」は逆の範囲になってしまう。いったい何を根拠にした「正確」な「東半分」なのだろうか。
「南極大陸が北部に……」といい、実に摩訶不思議な方向感覚の持ち主だ。「北部」というからには他の方向もありそうなものだが南極大陸で東部や西部というのも無意味だし、南部というのは中心部のことだし……待てよ……。北部だけが張り出し、赤道から東半分……。
ある! 確かにある。南極大陸の面積の拡大が北部への張出しに見えて、なおかつ赤道を境に東半分のイメージにもぴったりの物があるではないか。
地球は丸い。フォーリーブスも「僕から逃げようとしたってだめだよ。逃げれば逃げるほど僕に近づくのさ。だって、地球は丸いんだもん」と歌の合間のせりふで教えてくれている。従って正確な世界地図を作ろうとしたら球形に、つまり地球儀にするしかない。平らな紙に書くと、収録する地域が広がるにつれて距離的な狂いが生じてしまう(地球は完全な球体ではないそうだから、地球儀もちょっとは狂っている)。
しかし地球儀はかさばるし、手軽に持ち運ぶためにはやはり紙に書いた方が都合がいいと考えたのかどうか、実際地球儀とどっちが古いのか知らないが、距離の狂いに目をつぶって丸い地球をむりやり平面に延ばした世界地図が作られるようになった。二つの円の中に世界を半分ずつ描いたもの、一つの楕円の中に納めたもの、海洋に切目を入れて陸地のゆがみを少なくしたもの、極点を「極線」にまで変形させた丸い地球の四角い世界地図など様々なものが登場した。
賢明なる読者の方はもうお気付きだろう。北を上にして赤道を左右に展開した世界地図であれば、地図の下の方に「南極大陸の北部」だけが見えているから「北部に大きくはりだ」す様子も容易に想像できる。(どーん)(←効果音)
さらにこの地図をえいやっと左に90度回転させて、上を新しい「北」と見れば、これまた見事に「旧赤道から東半分」が現在の南半球と一致する。(どどーん)
そう、私は地球が球体であるという既成概念にとらわれすぎていたため、南極点上空から見た南極大陸しか思い浮かばなかった。そんな常識は捨てて、世界を平面的に見ればよかったのだ。そして経度がどうのなどとややこしく考えずに、磁極が90度移動するのだから赤道が南北に走る、と考えるだけでよかったのだ。
また一つ新しい世界が開けたような心持ちだが、ここまでの想像力を読者に要求するなんて、読書とはなんと奥深いものであろうか。そして一つの文章に何と豊富な情報が込められていることであろうか。
内容はなかなかに興味深いものなので、書店で見掛けたら手に取ってみていただきたい。
それでは次回のショック・センテンス・シリーズをお楽しみに(まだやるのか?)。
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庵主:matsumu@mars.dtinet.or.jp