やまいもの雑記

CD「梶原一騎の世界」(真樹日佐夫監修、東芝EMI)


「巨人の星」より「ゆけゆけ飛遊馬」「友情の虹」「クールな恋」

今「巨人の星」を笑うのは簡単である。でも、それはたとえば今の若者が戦前の徴兵制のことを聞いて「いやだったら逃げればいいじゃん」と言ってみたり、大丸屋デパートの火災の時に裾がまくれるからという理由で多くの女性が飛び降りるのを拒否して焼け死んだと聞いて「バカみたい」とあきれるのと同じような行為だろう。その時代にはその時代にいる人間にしか分からない雰囲気・空気があるのだ。

と、息巻いてみたってやはり現代には現代の気分というものがある(おい)。

ここでの聞きものはなんといってもオーロラ三人娘の「クールな恋」。昔友人宅のソノシートで聞いたときにもあのバックコーラスの「ららららら」にはひっくり返った記憶がある。

足を痛めたオーロラ三人娘のひとり橘ルミを気遣ってステージに駆け寄ろうとする飛遊馬に向かって「来ないで!ここはあたしのマウンドです」。原作にもないこんなシーンをぽんぽん放り込んでいたアニメ版「巨人の星」はある意味原作を超えていたと思う。

ときに、相手が数学者だったら橘ルミは「私の円を踏まないで!」とでも言ったのだろうか。

「柔道一直線」より「柔道一直線」「男だったら」「柔道小唄」

主演の桜木健一はどうでもいいが、ガールフレンド・ミキっぺ役の吉沢京子である。当時14歳で輝くばかりの愛らしさを振りまいていた。どのくらいの美少女ぶりだったかというと、後に「ど根性ガエル」のヒロインが名前をいただいてしまったほどなのである。

ちなみに桜木・吉沢コンビはその後同じ梶原一騎原作の「太陽の恋人」(『週刊少年チャンピオン』連載開始時には「朝日の恋人」、その後テレビ放映のころに「太陽の恋人」と改題、最終的に「夕日の恋人」になった。作画は全てかざま鋭二)にも出演している。坂本征二役が桜木、天地真理役が吉沢。坂本征二の由来はは言うまでもなく坂口征二であろう。このアルバムに桜木の歌っている「太陽の恋人」が収録されていないのが実に残念。

で、私としては「天地真理」という名前のイメージは吉沢京子、またはかざま鋭二描くところの美少女だったので、同じ名前を名乗る歌手との落差にくらくらしたものである。

ところで、テレビ版の「柔道一直線」の後番組の野球ドラマ「ガッツ・ジュン」に一条直也(桜木健一)がゲスト出演したことがあった。野球の特訓をバカにする一条に「それじゃ俺の球を受けてみろ」というピッチャー・ジュン。受けて立った一条は投げられた球が予想外に速いのを見て取って、とっさに前転してから見事捕球。「よく捕れたな」「野球もバカにしたもんじゃないな」などと和解するお約束シーンが展開されたのだが、その捕球では完全に打撃妨害だぞ、一条。

この「ガッツ・ジュン」もなかなかのもので(『週刊少年チャンピオン』連載時の作画は小畑しゅんじ)、たとえば相手チームの必殺技が、一塁線沿いにバントした球を拾う野手の手をバッターランナーがスパイクで踏んづけるというものだったりする。しかも巧妙なことに「タッチ」はボールまたはボールの入ったグラブで行わねばならないため、バッターランナーはセーフ。

これにジュンが引っかかり、まさに手の甲を踏まれようとしたその瞬間、持ったボールを上に向けてスパイクを受け止めるのだった。当然バッターランナーはタッチアウト。これなんかは「巨人の星」のノックアウト打法攻略法がヒントになってるような気がしないでもないが、いかにボールでスパイクを受け止めたといっても、地面に置いた掌を走っているランナーに踏まれたらそれだけで十分危ないと思う。

『月刊少年チャンピオン』だったかに石川賢が「がっつき・ジョン」を描いていたのもこのころだった。

「キングコング」より「キングコング」

うーん、日米合作とかいうアニメ版「キングコング」に梶原一騎の名前がクレジットされてたかどうか知らないのだが、ひょっとするとあれかも知れない。

昭和40年代初頭に『週刊少年マガジン』の二色グラビアにこんな話が掲載された。南の島から連れてこようとしたキングコングが嵐に巻き込まれて自由になり、サンフランシスコ湾に現れる。折しもその嵐のせいで金門橋が崩れており、何も知らない船が突っ込もうとしている。コングのいた島でコングと暮らしていた仲良しの親子がコングに船を助けるように頼むと、コングは金門橋を持ち上げて船を通してやる。

つまり、アニメ版「キングコング」のオープニングで「戦えキングコング、世界の王者」の部分のあの絵である。

で、そのグラビアの内容が同誌で連載漫画として掲載された。作画は「ナショナルキッド」「黄金バット」「プロレス悪役物語」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「黒い秘密兵器」「甲子園の土」「宇宙猿人ゴリ」「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」「スペクトルマン」「怪傑ライオン丸」「風雲ライオン丸」「電人ザボーガー」などでおなじみの一峰大二。

このときのコングの顔がのちに宇宙猿人ゴリの部下・ラー1号に活かされたのかどうかは定かではないが(何しろ絵をほとんど覚えてない)、もしかしたらその漫画の原作ストーリーを担当したのが梶原一騎なのではなかろうか(憶測)。

ラジオエクスプレスの「キングコング」のストーリーを知ったのはそれからかなり後である。

「あしたのジョー」より「あしたのジョー」「ジョーの子守唄」「力石徹のテーマ」

立つんだジョー「プロレス・スターウォーズ(3)」(原康史原作、みのもけんじ作画、集英社)より。
こんなところにまでさりげなく登場する「あしたのジョー」の主題歌。しかし、ジョー樋口でやるとは意表をつかれたぞ。

「夕やけ番長」より「夕やけ番長」

歌っているのはサザエさんである。

「タイガーマスク」より「行け!タイガーマスク」「みなし児のバラード」

原作で虎の穴が崩壊するときにはのっぽのタイガーマスクやらがっしりしたタイガーマスクやら太ったタイガーマスクなど、タイガーマスク軍団が虎の穴本部に現れて、十六文タイガーキックやタイガーコブラツイストやタイガー原爆頭突きやら披露してくれてとても楽しかった。

「キックの鬼」より「キックの鬼」「キックのあけぼの」

原作では本名・白羽秀樹と紹介されていたのだが、アニメ版では沢村忠が本名になっていた。しかも脇役の少年が柴田秀樹。この時点で、あ、こりゃ違うな、と思ってしまったためか、アニメ版は主題歌のかっこよさ以外ほとんど覚えていない。

原作では、キック転向後に山籠もり(!)し、更に人恋しさに下山しようとした自分を戒め、恥ずかしくて山を下りられないように片眉を剃り落としてしまうのだ。(どどーん)

「赤き血のイレブン」より「赤き血のイレブン」「わが友玉井真吾」

原作では必殺・サブマリンシュートはオーバーヘッドシュートだったのだが、アニメ版では左膝でワントラップしたあと右足で蹴り込む形に変更されていた。作画の難しさのためか、子供がまねをすると危険だからという配慮なのかは不明。

「空手バカ一代」より「空手バカ一代」「空手道おとこ道」

こちらもいきなり主人公が大山倍達ではなく「飛鳥拳」である。おまけに主題歌で「おのれと敵とに虹架けて 虹呼ぶ拳が空手道」だもんだから、「空手バカ一代」ではなく「虹を呼ぶ拳」のアニメ化と混同しているのではないかと思ってしまった。

しかし、オープニングや番組中のおそらく極真門下生による試割りや真剣白刃取りなどの実写映像は当時としては衝撃的だった。

今回このアルバムを買ってよかったと思ったのは、「空手道おとこ道」の歌詞が「空手の道は人の道 貫く愛とど根性」だと知ったこと。ずっと「貫くファイト ど根性」だと思っていたのだ。「巨人の星」の歌詞が「重いコンダラ」に聞こえたことなど一度もなかったのにね。

「侍ジャイアンツ」より「侍ジャイアンツ」「サムライ番場蛮」

なんか調子がよくておしゃべりで、ちょっと「侍」のイメージではなかったことしか覚えていない。

「柔道讃歌」より「柔道讃歌」「母シャチの歌」

やたらと埃の立つ畳が印象的な漫画だった。アニメは見ずじまい。

「愛と誠」より「わたしの誠」

けっこう原作に忠実にやっていたのだが、結局高原由紀の正体がばれたあたりで打ち切り。大賀誠を隣の教室から丸太で吹っ飛ばした相手の正体も分からずじまいだった。

早乙女愛は主題歌「わたしの誠」を歌っている池上季実子、大賀誠は夏夕介が演じていた。

夏夕介はその後、舞台で変身ヒーローものを、という新機軸の番組「突撃!ヒューマン」で主演。ピンチになったときに客席の子供が円盤をくるくる回すとそのエネルギーで舞台の上、客の目の前で超人・ヒューマンに変身するのだ。ライトで入れ替わりをごまかしてただけのようだったが。

しかし、人気がどうのというのではなく、毎回舞台の上で火薬を破裂させたりしていたため、危険だからということで会場が借りられなくなって打ち切りになってしまった(ということになっている)。

最後の方はかなりはしょってしまったが、またそのうち語る機会もあることでしょう。
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庵主:matsumu@mars.dtinet.or.jp