DC/DCコンバータの作成(Luxeonミニマグ用)

2002.11.25 ページ公開
2003.05.19 光出力(照度)安定化の記述追加


はじめに

リニアテクノロジー社のDC/DCコンバータIC、LTC3402(EMS)を入手することができました。
同期整流で最大97%の効率、スイッチ電流最大2A、0.5V〜5Vの入力で動作、最大3MHzのスイッチングなどの特長があり、以前作ったLuxeonミニマグのコンバータ用に試作してみました。

とはいえ0.5mmピッチのMSOP10ピンなんて扱うのは初めてで、基板の作成からハンダ付けまで、かなり神経を使う工作になってしまいました。
携帯機器を開発しているプロの方に聞いたところ、専用の顕微鏡と極細のコテを使ってクリームハンダで実装している、とのことでした。私はそんな工具を持っていませんので、30Wの普通のコテとピンセット、ルーペを駆使してどうにか組み立てることが出来たという状態です。回路は簡単ですが、工作にはかなりの精密さが要求されると思います。

回路

データシートの応用例を参考に、スイッチング周波数=1MHz、入力=2.4〜3Vの2セルで、360mA前後の電流出力としました。

NiCdやNiMHを主に使うため、万一点けっぱなしでバッテリーが過放電してしまうとイヤンなので、バッテリー1セルあたりの電圧が0.9Vを切るとシャットダウンするようにしました。ただ、余計な回路を組み込む余裕がなかったため、入力電圧を分圧してSHDNピンでおよそ0.7Vのシャットダウン電圧になるように抵抗を付けただけにしています。バッテリーが消耗して境界電圧にかかると昇圧が間欠動作になるので暗くなってきて、境界を完全に下回ると消灯します。
本来このような使い方は推奨されないと思いますが、暗くなってきたら電池を交換するということでこのような回路にしてみました。

最初は定電圧出力に電流制限抵抗をつけて実験していましたが、出力電圧固定としてしまうとLED(Luxeon)のVF/温度特性(およそ-2mV/℃)の関係で温度が上がるほどLEDの順電圧が下がってしまい、その結果、電流が増えてさらに発熱することになる悪循環で、高温下や放熱が充分でない環境では厳しいように思ったので、今回は温度補償を行う方式にしてみました。
フィードバック電圧の+分圧側にシリコンダイオードを2直列として、温度に対して出力電圧で負の勾配(約-4mV/℃)を持たせました。これにより、ユニットの温度が上昇するのに従いLEDへの電流が自動的に減ってきます。
なお、シリコンダイオードとLuxeonとは熱結合が必要です。

実験では、ユニット温度=25℃で390mA、45℃で366mA(放射温度計で計ったのでかなり適当・・)程度になっています。
計算上は-2mA/℃程度になるので、25℃を基準にすると10℃で420mA、40℃で360mA、60℃で320mAくらいになるのですが、ユニット内の熱抵抗などの関係で-1mA/℃くらいで安定しているのかもしれません。
実際にミニマグに組んだ状態ではアルミのボディに放熱板が接触するため、連続で点灯してもそれほど高温にはならず、電流、照度とも点灯後数分で安定しているようです。・・・初雪が降った日に暖房のない部屋で計測してますので、念のため(^^)

開放電圧(分圧抵抗の値)は使用するLEDの特性(順電圧)に合わせて多少修正する必要があると思います。今回使用したLuxeonは実測3.14Vだったので、設定電圧を(1.25/3.9)*3.6+1.25+(0.57*2)=3.54Vとして、(3.54-3.14)/1=400mAを標準に設定しました。
いずれにしてもLED点灯時に1Ω抵抗の両端電圧を測って、電流値(抵抗の両端電圧/抵抗値)が適正かどうか確認することが必要です。

なお、単三NiCd2本使用時の効率は約84%でした(テスト基板で組んだほうは90%だったので、パーツの個体差や組み方で結構変わるのかも?)。

 

制作

コンバータIC。左は十円玉、右がマッチ棒です。こりゃ厳しい(^^;
作成した基板。左からLuxeon+放熱スイッチ板、基板(下)、基板(上)。
放熱&スイッチ板と+電極は例によって24Kメッキでぴかぴか〜♪

ミニマグに入れるため14mm径に作成する都合で、基板は2枚に分けました。
パターンが細かいので、グリーンレジストをスプレーして余計なハンダブリッジを起こさないようにしています。

私の腕と道具だと0.5mmピッチのハンダ付けはまず失敗しちゃうので、ICの足はピンセットで0.6〜0.7mmピッチになるくらいにフォーミングして取り付けました。

基板(上)にはさらに温度補償用のダイオードと、電流制限抵抗1Ω1/4Wも乗ります。
あとは携帯充電器を使ったミニマグ改造と同じ要領でユニット化します。

この状態で動作確認ができたらエポキシで基板の隙間を埋めて一体化すれば完成。

電池+極側。プラバンで電池の逆挿入保護の輪っかを作って取り付けました。

 

光出力(照度)の安定化 (2003.5.19)

DC-DCコンバータを使って比較的大きな電流でLEDを点灯させようとする場合に問題となるのが、どうやって一定の電流を作り出すかという点になると思います。よくあるのが低抵抗の電流検出抵抗を使った出力フィードバックや、定電圧出力に電流制限抵抗を組み合わせた方法などだと思います。
どちらの方法もほぼ定電流が得られるのですが、LEDの光量自体が一定になる保証は無く、効率の面でも(特に後者の方法は)問題が残るなぁと考えていました。

先日レーザダイオードの実験を行っていてふと思ったのが、たいていのレーザモジュールに出力制御するためのモニタ用フォトダイオードが内蔵されているということでした。
要はこれと同じようにLEDの発光度合いをモニタして一定の出力(照度)になるよう制御をかければ、出力系統の直列抵抗は不要になるし光量も一定になるはず・・・ということで思い立ったのが下の回路。

Vout = Vfb/R2*R1+Vfb ; R1=1/(1/(Rcds+Ra)+1/Rb)

コンバータのFB(フィードバック)入力にはRcds,Ra,Rbの合成抵抗(=R1とする)とR2で分圧された電圧が入力されます。
CdSはLEDの近傍に配置して、おこぼれの光をモニタするようにしておき、あとはCdSの最大最小抵抗値とLEDへの最大電圧からRbとRaをうまく設定して、任意の明るさになるようRaを調節すればいいはず・・・?
(念のため最初はLED直列に1Ωくらいの抵抗を入れて、両端電圧から電流値を測っておいたほうがいいでしょうけど)

VRのRaにはほとんど電流が流れないので表面実装の小型タイプでもOKですし、うまく作ればライトのテールSWにVR付きSWを使って、明るさの無段階調整が出来るLEDライト(しかも効率がいい)な〜んてのも出来そうですね!

いろいろ忙しくてまだ実験もしていませんが、近いうちLuxeonの5W-Whiteを使って製作してみようと思っています。
・・・ローバッテリーの検出とか、放熱対策もちゃんとやらないとダメだろうなぁ。。。

ROF-1miniの製作へ続く

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