ISOとバランススコアカード 08.03.30

最近経営に関する本を読んでいる。私が役員になったとか社長候補にノミネートされたということは・・・まったくない 
面白いというのが理由だ。私にとってはミステリーや恋愛ものより面白い。
そういえば昔、子育ては恋愛よりも面白いなんてコピーがあった
経営と言っても財務とか貸借対照表なんてのは理解できない。簿記もわからない私には借り方と貸し方の区別もつかない。数字と言っても私になじみの深い寸法公差に比べて、お金は別次元のようだ。
そうじゃなくて経営戦略とかITを経営システムにいかに取り込むか、SRB・SRIなんてのがわかりやすくて良い。そんな関係の本を手当たり次第に読んでいるなかで、バランススコアカードというものにであった。
おっと、バランススコアカードを私が知らなかっただけで世間に広く知られているに違いない。知らない人は私だけであろうが、簡単に説明すると、会社や組織がその存在目的を再確認して、ビジョンを実現するための手法と言えばいいだろうか。
細かくは書いてなかったものの、ISO14001のトップの方針を、目的、目標、実施計画と展開して、PDCAを回して実現していくのに似ているなあと感じた。
というわけで、バランススコアカードに興味を持ったので、さっそくインターネットでそれに関する本を探した。あっというまに30冊くらいみつかる。タイトルから想像して入門と思われるものとその次に読むべきものと思われるものなど5冊くらいアマゾンで注文した。翌々日には入手できる。便利な時代である。
私の本の読み方というのは、あるテーマについて書かれた本を何冊も読むというアプローチである。もちろん同じ著者では意味がないので、違った出版社の違った人が書いたものを買う。
出版社というのは著者が違っても主張が相反する本は出さないようだ。
そうするとひとつのテーマについてだいたいどんなものか、社会的にどのような評価されているかがわかる。読み方も平板でなく、最初の一冊はじっくりと読み、二冊目ははじめの本で良く分からなかった項目を重点的に読み、三冊目は見解が異なるようなところを読む。だいたい4冊から5冊読めばそのテーマについての概念と、世の中の評価はわかる。そうすれば人と一応話ができるレベルになる。
もちろんそんな読み方は小説には適用できない。

おおっと、まだ前ふりなのだ。本論に入る。
企業、組織というものは、ある目的を持って設立あるいは発生し、その目的を実現するために具体的戦略、戦術、行動に展開していく。気高い目標を持っていても、具体的展開ができなければ、あるいは展開がまずければ実現することは困難になる。目標実現には当たるも八卦当たらぬも八卦ではなく、必ず実現する方策を立てなければならない。
勘と度胸と出たとこ勝負のKDDでは困るのである。

ではビジョンを確実に達成するにはどうすればよいのか? あるいは既に存続している組織においても、ビジョン実現と組織に関わる人たち(利害関係者・ステークホルダー)の満足を最大化するにはどうすればよいのか? という手法としてバランススコアカードというものが考案されたらしい。
まずビジョンをどうすれば実現できるかという方策をいろいろと考える。そして実現手段をいくつもの観点で考え評価する。最終的にはアクションプランに落とし込まれる。それも1本道ではなく、通常財務、顧客、業務、人材という切り口の4本の柱で構成され、それも上下関係のある相互作用によって有機的につながる。
戦略マップ
効率的経営
戦略目標重要成功要因業績評価指標ターゲット
数値目標
アクション
プラン

財務の視点

顧客の視点

業務プロセスの視点
←ISO

人材と改革の視点
なるほどと二冊三冊と読むうちに、これはISO14001の語る目的目標の概念よりはるかに広い包括的なものであることが分かってきた。ISO9001にしてもISO14001にしてもバランススコアカードのほんの一部になるようだ。そして実際に、アクションプランレベルにISOによる活動と書いてあるのをみつけた。これにはギョットした。
経営全体を考えるとISOのマネジメントシステムというのは、包括的活動のほんの一部を担うものなのだろう。

それらの本の中でどのように書かれているか例を挙げると
■国際標準化機構(ISO)に基づく品質管理、6σ(シックスシグマ)など、すでに企業経営に取り入れられている各種の経営管理プロジェクトは、バランス・スコアカードの中に組み込まれ、目標達成に向けた強力な「エンジン」の役割を果たします。
■ISO、TQC、CS(顧客満足度経営)、CSR(社会的責任経営)など社内のさまざまな取り組みが、ビジョン実現に向けて位置づけが整理され、効果を発揮する
おっと、日本だけではいけない。世界ではどう捉えられているのか?
これもインターネットでググるとあっという間、
英語が不得手なので斜め読みだが、バランススコアカードとISOの関係を記したものはいくつもあった。
bsc.gif
右の列、下から二番目にISO9000とある。




まあ、そんな本を読みまくっているといろいろなことを考える。
ISO9001とは包括的なマネジメントシステムを品質の切り口で見たものとか、ISO14001は環境の切り口で見たものという言い方がある。それさえも間違っていたのではないか。ISO9001は包括的マネジメントシステムの品質に関する一部であり、ISO14001は包括的マネジメントシステムの環境に関する一部分に過ぎないというのが正しいのではないだろうか。
ISO9001が顧客満足を取り上げるのはもちろん正しいことだが、ISOに任せておいて顧客満足が実現するはずがない。顧客満足を実現するためのたくさんの方策のひとつであるということだろう。
ISO9001やISO14001が経営に寄与するといっても間違いではないが、それは平社員も会社発展に寄与しているというのと同じような意味なのだろう。
私のような平社員といえどいなければ当面は困るだろうが、すぐに代わりの人を採用すれば事業推進には支障はない。

そういったことから導かれる結論とは何か? と考えるといろいろなことが思い浮かぶ。
経営に寄与するISO審査というのはいったいなんだろう。
作業改善をすることは経営に寄与することは間違いない。環境マネジメントシステムあるいは品質マネジメントシステムが経営に寄与するというのは作業改善とレベルが違うとは思えない。じゃあ、経営に寄与するなんてたいそうなことを言うべきじゃないのじゃないか?

マネジメントシステムISO9001・ISO14001
は間違いで本当は
マネジメントシステム
>
ISO9001・ISO14001
あるいは
マネジメントシステム>>ISO9001・ISO14001
なのかもしれない

そう考えるとISO事務局の役割だって小集団活動とかTPM活動の事務局と同じじゃないか? ISOの担当者のみなさん、責任重大なんて深刻真剣に考えることもなさそうです。

本日の疑問
そもそもISOに基づくマネジメントシステムなんてタイトルが誇大表示であって、ISO規格が定めているのは包括的マネジメントシステムでないのはもちろんのこと、品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムでさえなく、その一部を占めるだけではないか。
ISOを一生懸命に進めれば会社は良くはなるだろうが、寄与率は提案制度と同レベルではなかろうか?



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