定義 08.06.12

いつも有益な環境側面などないと主張している私である。もちろんネットだけでなく審査の場でも内部監査員教育するときもこの持論は変わらない。
審査でそんなボケ審査員に会うと、そんなものないと突っ込んで、敵があわてて規格をめくるのを冷ややかに眺めている。

ところが最近、親しい人から「有益な側面という考えがないとはいえないよ。例えばインターネットには有害な側面もあるし、有益な側面もある。という表現は少しもおかしくない。」と言われた。この方もISOの素人ではない。
これを聞いた瞬間に、私の有益な環境側面に関する疑問は氷解した。
もちろん問題が解消したわけではない。 

有益な環境側面と語る方はISO規格を理解していないのだ、ということを理解したのである。つまり、単に、環境側面というものを理解していないのではない。規格を全然理解していないのである。
環境側面は日本語の辞書に書いてある「環境」や「側面」が重なった意味ではない。その意味を調べるには、いくら広辞苑や字源を読んでもだめ。いえいえ、わざわざ調べるなんて面倒なことをする必要がない。ISO14001規格の定義の章に答えが書いてあるでしょう。
ISO14001:2004 3.6【環境側面】
環境と相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素。
おっと、このまま読み下そうとしてはいけませんよ。【環境】ってなんですか? ほーらまた辞書をひこうなんてだめでしょう。ISO14001の定義を読みなさい。【組織】もね!

「インターネットには有害な側面もあるし、有益な側面もある。」という文章は日本語としておかしくないし、その意味するところもおかしくない。
ま、多少異議のある方がいらっしゃるかもしれない
なぜならば、この文章にインターネットや有害、有益、側面といった言葉を辞書の説明文(定義と同義)に入れ替えても文章の意味は大きく変わらない。
例えば次のようになる
「【コンピューターネットワークを世界的規模で接続し、電子メールやデータサービスなどを行うネットワークの集合体】には有害な【一面】もあるし、有益な【一面】もある。」
ご存じない方はこの世界にいないと思うが、ISO規格(JISでも法律でも同様)において定義された言葉を代入してもまったく意味が変わらないことが保証されている。ISO9000:2000 3定義の項で明言されている。
もっとも、定義された言葉に定義を代入して意味が変わるなら・・・それは定義でないことになるではないか!
しかしISOの要求事項の中の文言に一般の辞書の語句を代入するのは禁じ手ではないか!
しかも日本語のJISに翻訳するときあてはめられた日本語の単語の意味を適用するのは見当違いはなはだしい。
恐れ多くもいやしくも、ISO審査員です、コンサルです、事務局です、なんて名乗るお方が過失でするはずがない。過失でなければ故意であり、故意であるなら確信犯でなくてなんであろうか!
でも、そういうテクニックを使う方は大勢いらっしゃいます。 ISO規格を論じるなら、定義をしっかりと理解してから話し合いましょう。
2ちゃんねるでも「話はそれからだ」と言われますよ 
もしこれでも「有益な環境側面」を主張したり「環境目的が3年後の目標」だとか「環境側面から環境目的を選ぶ」とか騙る、事務局、コンサル、審査員、審査機関がいるなら(たくさん存在することは間違いないが)、すっぱりとISOの世界から足を洗ってほしい。あなたたちがISOをだめにしたのですから。



Yosh様からお便りを頂きました(08.06.13)
環境側面

其れでは「環境表面」も「環境裏面」もあるのかな?
すでに誰か突っ込みてましたか?

Yosh師匠
突っ込みありがとうございます。
真面目に面白いです(変な表現ですけど本当です)
これは単なる突っ込みとかダジャレでなくそれほど本質的なことだと思います。

yosh様からお便りを頂きました(08.06.13)
其れに「環境上面」、「環境下面」序に「環境内面」も。
「環境上面」は(かんきょううわっら)と讀むのかは分かりませんが。
Yosh師匠 この話をぜひともアホな審査員に伝えます。
なにしろ、もう固定観念で天動説に染まって救いのない審査員が大勢います。
彼らを救うことはできるのでしょうか?
神よ、救い給え


ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(08.06.17)
初めて環境側面という言葉を見たとき、何で品質側面とは言わないんだろうと違和感を覚えました。

品質側面と語るコンサルや審査機関はあります。
労働安全ではJIS Z 8051:2004「安全側面−規格への導入指針」という規格までできています。
要するに、どのようなカテゴリーでも管理すべき項目に側面をつけた言い回しは存在します。
ただ、英語原文のaspectと側面が同じものかとなると、ニュアンスは違うでしょう。側面なんて日常語ではありません。やはり「○○に関わる要管理項目」くらいのほうがわかりやすいのではないでしょうか?
私が変なことを言うと、Yosh師匠がアメリカ人として訂正してくれるでしょう。

ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(08.06.17)
ははあ、そうですか。
しかし、「側面」と訳さずにいっそカタカナの「アスペクト」を使った方がよかったかもしれませんね。
社員教育をするたびに、「環境側面」の説明でやたら時間をとられます。
もうめんどくさくなってきたので、ISO統合を機に「環境側面」という言葉を追放することにしました。マニュアル、規定類から一掃します。
やれやれ。

経営者による見直しがマネジメントレビューになったのは、多数が経営者の見直しと読んだせいだという噂があります。(半分冗談です)
マネジメントシステムなんてもう日本語になったようです。
いっそのこと、いい加減な漢語を追放しましょう

管理責任者ではありません、マネジメントリプレゼンタティブです
環境側面ではありません、アスペクトです
環境目的ではありません、オブジェクティブです
環境目標ではありません、ターゲットです
おお!そうだ!
JISQ14001なんてなくして、ISO14001をそのまま使いましょう
もちろん、JISQ9001なんて破り捨てます
私どもではISO9001しかありません

エッツ!審査員さん、英語読めませんか?
じゃあ別の方をお願いします。


ぶらっくたいがぁ様からツッコミを頂きました(09.03.15)
先生、質問。
環境側面の定義について、お考えをお聞きしたいことがあります。
「環境と相互に作用する」とはどういうことなのでしょうか?
「環境に作用する」ではなぜいけないのでしょうか?
まず、「環境と相互に作用する可能性のある」という部分は、「環境と相互に作用するもの」と「その可能性のあるもの」の両方を指すと思います。これはまあいいのですが、では「環境と相互に作用する」というのはどういうことなのでしょう?
日本語的には「環境に作用する」の方がスッキリします。
すなわち、「環境に作用するかその可能性のある組織の活動又は製品若しくはサービスの要素」というのがいちばん理解しやすい表現ではなかろうかと思います。
ちなみに、「組織の活動又は製品又はサービスの要素」の「又は」の使い方はJIS Z 8301に違反しているので、「組織の活動又は製品若しくはサービスの要素」の方が正しいと判断しました。この3つは並列ではなく、「活動」と「要素」が上位にあって、「製品」と「サービス」は「要素」を装飾する下位の単語だからです。
英原文を無理やりこのように訳したために珍妙な日本語になっただけなのか、「環境と相互に作用する」と「環境に作用する」とでは意味が異なるのか、どちらだと思われますか?

たいがぁ様 毎度ありがとうございます。
接続詞の使い方はとりあえずパス
環境側面が「環境と相互に作用する」確かに変ですよね??
「interact」をEncarta英英辞典でみると
1. communicate or work together: to be or become involved in communication, social activity, or work with somebody else or one another
2. act on each other: to have an effect on somebody or something else or on one another
どうみても相互に影響しあうですよね?
もっとも規格を読むと、定義3.3.6では相互に作用するとありますが、4.3.1では環境に影響を与えることだけ語っています。
具体的にポピュラーな環境側面を考えると、エネルギーの使用、廃棄物、騒音・振動の発生源などがあります。ここで例えばプレスなどの騒音振動の発生源が「環境に作用する」ことは間違いないですが、「環境が作用する」ことってあるのでしょうか? まさか自然環境がお怒りになってプレスが動かなくなったりして?
廃棄物処分場枯渇が廃棄物の排出抑制に働くことはあるでしょうけど、それを環境が影響するってわけでもないでしょうね?
お手上げです。


湾星ファン様からお便りを頂きました(09.03.15)
佐為さま 湾星ファンです。
ISO14001は、著しい環境側面を如何に管理するかという規格ですから、3.6や、4.3.1にどう書かれていようと、JIS版の「環境側面」なんてケッタイな言葉に惑わされる必要はなく、「管理ポイント」で宜しいのでは。心許ないという方には「環境上の」という形容詞を前につけるのに吝かではありません。「著しい環境側面」よりも「重点管理ポイント」のほうが、余程わかりやすいと愚考します。

湾星ファン様 おっしゃることは良く分かります。というかまったく同感です。
しかしそうなるとまた疑問がわきあがってきます。いえ、疑問というより変だなという感じです。
「著しい環境側面」を「重点管理ポイント」と言い変えたら、トートロジー、同義反復、数学的不定、意味のないそのまんまじゃないですか?
具体的に規格文中の「著しい環境側面」を「重点管理ポイント」に入れ替えると
4.3.1 組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持する上で、「重点管理ポイント」を確実に考慮に入れること
・・・確実に管理するものを「重点管理ポイント」というのでは?
4.3.3 組織は、組織で働く人・・(略)・・に、自分の仕事における「重点管理ポイント」を自覚させる。
・・・しっかりと認識させるものを「重点管理ポイント」というのでは?
4.4.4 「重点管理ポイント」に伴う運用を明確にする計画、運用及び管理を確実にするための記録を含む文書
・・・確実に管理すべきものを「重点管理ポイント」というのでは?
その他、どれをとっても当たり前で同じことの繰り返しになってしまい、わざわざ規格に書くほどのことはありません。ISO規格の制定者・翻訳者はISO規格のありがたみを出すために「著しい環境側面」という言葉を創作したのでしょうか?

湾星ファン様からお便りを頂きました(09.03.16)
佐為さま
湾星ファンです。いつもながら、言葉足らずで申し訳ない。
ご指摘の通り、単純に「環境側面」を「重点管理ポイント」と置き換えて、規格のJIS版を読むと、同義反復となるのは認めます。
規格は金科玉条でも何でもなくて、単なる管理技術を述べた道具ですから、意図を損なわない程度に意訳して一般の(規格に詳しくない)人へ伝えれば良いと思います。
4.3.1a)項は、事業活動に伴って、どんな環境影響があるかキチンと調べなさい。b)項は、何を(ISOに準じて)重点管理するか、決めなさい。
4.3.3.と書かれたのは、4.4.2のミスタイプと拝察しますが、作業者に、重点管理ポイントをしっかり訓練し、力量を持たせろ。
4.4.4は、「重点管理ポイント」としてどの手順書を(ISOに準拠して)管理するのか、決めなさい。
ということで、実務的には(外部審査に対しても)「環境側面」を「管理ポイント」と読み替えても、全く問題は無い、と愚考します。
最後に、ISO規格の制定者・翻訳者はISO規格のありがたみを出すために「著しい環境側面」という言葉を創作したのでしょうか? というご意見?には、全く同感、というか私も邪推しています。

湾星ファン様 私の言い方が悪かったようですみません。
私は規格がおかしいと言ったのであって、湾星さんの意見がおかしいといったつもりはありません。
環境側面なんて日本語にない言葉を作り、まして著しい側面などという形容詞の使い方が間違っているのではないかと思うような言い回し・・
あまり真剣に考えることもなさそうです。
とはいえ、審査員が馬鹿正直に文字とおり解釈してくるのでチャンチャンバラバラせねばなりません。
もっとも、審査員がそれほど規格を読んでいることもないか?

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