計画のお手本 08.10.04

2008年第3四半期は、JABに登録されているISO9001は616件の大量減少、ISO14001はわずかに16件の増加であった。ISO9001の登録件数減少はすでに2年前からのことであったが、とうとう「ISO14001よ、お前もか」という感じである。
2008/2/28JAB環境ISO大会で、吉澤教授はISO14001認証件数80,000件を目指そうと語っていたが・・夢に終わるかそれとも元々ホラなのか?
ちなみにISO先進国イギリスではQMSもEMSも登録件数が毎年4000件くらい減少しているそうだ。(07年実績)
日本もISO先進国になったということなのだろうか?
../9001gurafu.gif
もちろん何年も前からISO14001登録件数の増加が鈍ってきていたので、いつかは減少するであろうことは十分に予測できた。今さら驚くことでもない。
しかし登録件数減少は、夏が過ぎ秋が来たので涼しくなったというような自然現象ではない。社会的な現象であり事業活動の結果である。
どんな事業でも製品でも売れ行きが陰ってきたら、社長をはじめ営業担当役員が社内に叱咤激励をかけ、営業マンには厳しいノルマを与え、営業部門以外の社員にも知人を紹介しろとかお客を取ってこいというだろう。もちろん取締役自ら取引先に出向いて「よろしくお願いします」と頭を下げ回ったりする。
それと同じく認証機関においてもトップから末端まで必死に動いているだろう。社長が「売り上げ上げろ!」と叫ぶだけとか、「一人当たり年間何十件の新規契約」なんて理屈に合わないノルマをかけるだけで具体的施策がないなんてことは絶対にないだろうと想像する。
これはそういう認証機関があるとか、いやみではないと力説しておく 
正直言えばそういう噂を聞いている
営業にノルマはあって当たり前だし、高い目標を持つべきとは審査員が常に組織に語っているところである。しかし、QMSが減少、EMSがゼロベースであれば、一認証機関の一営業マンのノルマが年何十件というのはもはやまっとうではなく、進め一億火の玉だという精神主義の領域である。
常識的に考えて「今のお客さんを絶対に逃がすな!新規顧客を月1件!」くらいではないだろうか?
そもそもマーケティングの理論と常識から言って、新規顧客獲得ではなく、現在のお客さんを囲い込み離さないことが営業戦略の基本であり鉄則である。それが費用対効果が最善で長期的利益を最大化する。そのためには良いサービスを継続して提供していなければならない。
おっと、認証機関は常日頃審査に行って「顧客満足」を語っているのであるから、その心配はあるまい。
これもいやみではないと力説しておく 

そしてそういった活動の結果にもかかわらず何年も継続して認証件数がずるずると減少しているというのはかなり重症である。
もはや構造的に製品・サービスが時代に遅れてしまっているのだろうか?

本日はそういう実例を基に、いかに改善のための計画を立てるべきかを考える。
なにしろ、ISO9001では品質計画と語っているし、ISO14001でも環境目的・目標を実現するための実施計画を詳述している。認証機関ならばそういった計画についてそりゃ詳しいだろうし、世の企業・組織のお手本となるような計画を立てているだろうという前提で考えよう。

事業拡大においても改善を進めるためにも計画は重要である。
以前PDCAではなく、CAPDもありだし、DCAPもあるしと書いたことがある。
すると某審査機関ではPDCAしかないと語っているよと教えてくれた方がいる。その理由はシューハートやデミングがPDCAと言っているのでそれが正しいのだそうです。うーん、その審査機関の仰せには大いに疑問がありますが、まあ計画が大事ということは私と同意見であるとして話を進めます。
計画なき目標は願望に過ぎない。個人なら願望のまま終わってもゆるせるかもしれないが、事業において目標が願望に終わることは社会的に許されない。目標は実現するためにある。
日頃、ISO審査の場では審査員の方々は「目標は願望ではいけません」「実施計画は矢印を引いただけではだめですよ」「目標と施策の数値的な整合はとれていますか?」と語っていると聞く。
おっしゃるとおりだ!
個人的であろうと、組織においても、我々が何事かを成し遂げようとするときに、なりたいという願いは必要条件であるが、十分条件ではない。目標を実現するためにはそれを実現するための計画を作り、それを実行していかなくてはならない。
しかし世の中の企業あるいは個人において願いを実現する計画がすべて立てられるかと省みればすべての人、企業が目標を確実に達成する計画を立てて推進しているようには思えない。さらに言えば施策が目標実現に完全に見合って整合している計画などほとんどない。
といって計画がなくては目標が実現しないわけではない。そして施策の効果を合計すると目標に一致するようなスバラシイ計画を立てているような企業・組織はそう多くはないのではないだろうか? 実は「完璧な計画」つまり「目標を実現するための諸施策の効果が定量的に把握でき、その合計が目標に整合している計画」が理想とか必須というわけではない。もちろんそういう計画であれば、そうでない計画より目標を実現する可能性が高いだろうとは思える。
実際に計画を立てるにあたって、施策が目標達成にどれくらい貢献するか定量的に計り知れないことは多い。例えば売上増のためにキャンペーンを行えば、あるいは客先回りをすれば、何個売り上げ増になるかということは経験則はあっても理屈はない。
そういったことでなく、省エネ機器を入れれば○kWh減る、塗装工程を改善すればVOC放出が○トン減るということはほぼ見積もることができる。
あるいは経験と知見から細かいところまで展開しなくても、実施可能で実現可能ということも多い。審査機関はそういう場合にも施策の効果を定量化して目標実現可能を立証することを求めることが多いというかほとんどである。
おせっかいと言うべきか、ありがたいと言うべきか?

さて世の認証機関は、この芳しくない現状を打破しようと、その存在をかけて事業拡大・認証件数拡大を図るために計画を策定しているだろう。そういった計画は、目標と施策と効果がぴたりと整合し、実現可能であるはずだ。教師は生徒より知識も実行能力も優れているに違いないから、我々俗世間の企業が建てる事業計画よりもそれは精緻で高度なものだろうと考える。 今QMSやEMSの登録件数が減少しつつある、そしてまた第三者認証制度の認証を受けている企業・組織において偽証やかいざんが行われて認証の信頼性が疑われているというピンチではある。しかしピンチはチャンスという。いまこそ、認証機関が素晴らしい計画を立てて実行し、認証件数を盛り返すということは認証機関が力量のあることを立証することであり、第三者認証制度復活のきっかけとなるだろう。 さあ!認証機関の皆様、今こそ汚名をそそぐ機会です。
ISO認証件数をどんどん増やして、「さすが認証機関は力量がある」「審査員の言うことを聞けば会社は良くなる」ということを見せつけようじゃありませんか。 
そしてもちろん、それができなければ認証機関の力量のないことがはっきりしますし、日頃審査員は教師であるとか審査とは教える場であると語っていることが嘘だということです。
さあ!期待しております。

お手並み拝見

ところで、昔から敗軍の将兵を語らずという。
認証機関が現状を挽回できなければ、経営に寄与する審査などとはもう言わないのでしょうね?
 


認証機関が私に刺客を送るのも結構ですが、そんなことをしても状況が変わらなければ認証機関のみでなく第三者認証スキームが斃れてしまうのは時間の問題。
真の価値を企業と社会に提供しないと見放されてしまいます。
そもそもすべての組織も企業も、社会に貢献するために存在し、貢献が認められないと存在を許されないという自然の摂理は変えようがありません。



あらま様からお便りを頂きました(08.10.04)
勘違い
佐為さま あらまです
認証を継続しない会社が増えたということですが、これは制度が悪いのではないと思います。
認証してもらっても、儲からない。認証してもらっても、労災事故が減らない。
だから認証なんて不用だ・・・。
なんて思っている会社が多いのではないでしょうか。
そもそも、認証制度とは、その会社が「ちゃんとした会社である。」というお墨付きをするだけ。
その後の努力は会社しだいです。
それを、認証しても成績が上らないと責任転嫁することは、そもそもの認証の意味が分かっていない。
・・・ってことは、やはり審査員が認証制度をきちんと理解させていないから ?
・・・ってことは、そんな審査員が横行する認証制度に問題があるんでしょうね。

あらま様 毎度ありがとうございます。
お言葉ではありますが、現実の審査に多数立ち合っていると、審査とは価値あるものとか、認証は価値あるものとは思えなくなります。
もちろんすべての審査員が真面目にそして力量があって審査を行えば価値があるのでしょうが、現実ははるか遠くにあるように思います。
そして認証機関や審査員が経営に寄与すると大口を叩いているのですから、やはり世の中とずれていると思わざるを得ません。
まあ、私の実体験からの感想です。

同志ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(08.10.05)
そもそも審査サービスは、その組織のマネジメントシステムが効果的に運用されているかどうかの視点から改善すべき課題を探し出し、組織に気づきを与えて改善の機会を提供することが目的であると私は考えます。
つまり、非常に重要なミッションを担っているわけで、組織側がそのパフォーマンスを測定・評価することは不可欠といえます。
そこで、審査機関を購買先と見た場合、規格の理屈上は不備な点を指導したり第二者監査を実施することも可能なはずですが、なぜかそのような事例を聞いたことがありません。もし機会があれば、審査機関を逆審査してみたいものです。
例えば、審査で次のような問答になれば、審査機関も断れないと思うのですがいかがなものでしょうか。

「あの、ある購買先が提供するサービスに不満があるんですけど、これはやっぱり指導なり第二者監査をするべきでしょうか?」
「それは、やるべきでしょう。規格は、そのために供給者を評価・選定することを求めているのですから。で、その購買先の何が問題なのですか?」
「当社が期待する成果が出ていないんです。不満を持っているのは当社だけじゃないようで、その購買先から離れていく顧客もあるみたいです。」
「その購買先は、顧客満足度調査をやってないんですか?」
「それが、定期的にアンケート用紙を送ってきますから私も要望や不満に思うことを書いて送ってますが、まともに回答が返ってきたことがありません。
そのくせ、その購買先を賛美する回答なんかはホームページで紹介してますね」
「それは顧客満足度調査の使い方を間違えていますね。本来は、PDCAをうまく廻すために使うものです。そもそも、顧客の不満や顧客数の減少に対して品質目標をどのように立てて計画を実施しているんでしょうね」
「実は、私もぜひそれを確認したいんです」
「じゃあ、その購買先が何を言おうが監査を行うべきです。もし拒むようなら他に代えることも検討した方がいいでしょう。で、この購買先台帳には載ってますか?」
「はい、ここです」
(台帳に記載されているその審査機関を指差す)
「・・・・・」(絶句)


、すばらしい
私も真似をしたい
私の場合、考えなく実行してしまう性格なので、そのうち結果を報告しましょう



ISO14001の目次にもどる