ISO14001審査不適合の分布 08.12.06

ISO事務局は自社の審査結果は知っているが、他社ではどんな不適合が出ているのかはあまり知らないだろう。審査員にしても、自分のしている審査だけでなく自社の審査状況は知ることができても、他の認証機関の審査状況については、普通は知ることができないと推察する。日本には認証機関がたくさんあり、一般的に審査結果がどうか?ということを知っている人はあまりいないのではないか。
もちろん認定機関は把握しているとは思うが。
ということで、本日はISO14001審査においてどの項番で不適合がどのくらい出ているのか、そしてそれはなぜかを考えよう。
そんなことに関心がないといわれるとそれまでではある 
私は知り合いなどにお願いして審査結果は相当数見せてもらっている。ISO14001が2004年に改正されてからの4年間だけでも、9つの認証機関による約360件の審査結果を見ることができた。そこでは約950件の是正を必要とする不適合が出されている。
日本のISO14001認証件数が約20,000であるから、毎年90件というのは全認証件数の0.5%にあたり、決して少ない数ではない。

認証機関により「不適合」の表現は多々あるが、ここでは「NC」とか「指摘事項」という名称にこだわらずに、是正を要求されたものをすべて「不適合」として扱う。「観察」と称するものは是正を要しないという審査機関もある。しかし「観察」という名称であっても、審査員が是正報告を求めている場合はそれも不適合としてカウントした。
下表に示すものが規格改正後の過去4年間の不適合の分布である。
出典の関係から詳細数値は記載しない(長さと前記数値から計算すればバレバレであるが)

ISO14001審査における不適合分布
(2004-2008上期 おばQ調査による)
4.1一般要求事項
4.2環境方針
4.3.1環境側面
4.3.2法的及びその他の要求事項
4.3.3目的、目標及び実施計画
4.4.1資源、役割、責任及び権限
4.4.2力量、教育訓練及び自覚
4.4.3コミュニケーション
4.4.4文書類
4.4.5文書管理
4.4.6運用管理
4.4.7緊急事態への準備及び対応
4.5.1監視及び測定
4.5.2順守評価
4.5.3不適合並びに是正処置及び予防処置
4.5.4記録の管理
4.5.5内部監査
4.6マネジメントレビュー
ロゴマークの管理
純粋なアドバイス、わけのわからないもの

年により若干各項番の分布に変化があり、特にこの2年は遵守評価に不適合が多くなりつつあるが、これは変化というより遵法を注意深く見るようになったという程度であろう。
2008年4月以降は全体に「是正を求める不適合」は減少している。
これは組織のレベルが向上したのではなく、審査での判定が厳密になったのではないかと推察する。つまり2008年からISO17021が適用になったことにより、いいかげんな表現の不適合が減り、以前は「規定が明確ではありません」なんてのでお茶を濁していたものが、ISO19011に基づき証拠・根拠を明記しようとすると、確固たる根拠としっかりした証拠がないものは「不適合」にしにくくなったのではないだろうか?
とはいえ08年10月時点で「環境方針に一般の人々が入手可能であるという文言がないので不適合です」なんてのが現実に出されているのだから、審査の質が向上しているとは言えない 
いや、そういう表現は間違いだろう。審査の質は向上していないのである。

さて審査ではどの項番に不適合が多いかというと、グラフを見てわかるとおりである。では審査結果の不適合からはどのようなことが想定されるだろうか?
お断り、
上記の不適合の数値や内容は証拠に基づいているが、以下の考察はすべて私の主観である。

本日のまとめ
おお!不適合が大変多い項目を見逃していた。
それは純粋なアドバイスとかどの項番なのかわからない不適合であった。
ひょっとしたら、いや多分、あるいは間違いなく、これは審査員の不適合であろう。 




ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(08.12.06)
ここで取り上げらている不適合を良く見れば
・省エネは予定を達成していませんが、適切な是正処置が取られていません。
・何パーセント目的未達であれば是正処置をとるのか決めていません。
・昨年は目標値を超えた実績をあげているのですから、今年度の目標は低すぎます。
・目標の中に、絶対値のものと、昨年との相対値のものがありますが統一すべきです。
てなものが多い。


ハゲ藁です。マジですか?
いったい、これらの何が不適合なのか。理解不能ですわ。今年度の目標は低すぎって、余計なお世話ってもんでしょう。
いやぁ、信じがたい事実です。では、認証機関自身で行っている内部監査はいったいどんな立派な内容なのか、ぜひ一度見せていただきたいものです。

グラフを拝見して思ったのですが、数は少ないものの「環境方針」に対する不適合というのが腑に落ちません。
一国一城の主であるシャチョウがありがたくもかしこくも作りたもうた環境方針を、審査員風情がNGを出すのですか。もう、開いた口がふさがりません。何様?
「一般に公開する」という文言がないという理由で不適合なら、ウチの方針なぞは法令順守のコミットメントなどという当たり前のことなんて書いてありませんから、きっと認証停止をくらうことでしょう。
あ、もっとスゴイのがありますね。ロゴマークの管理って何ですか?
まさか、ISO登録マークや認定マーク、それらの清刷りの管理がマズイとかですか?
それって、規格要求事項の何に違反しているんでしょうね?

たいがぁ様 いつもご指導ありがとうございます。
確固たる証拠がありますが、環境方針の不適合の具体例には

・組織の活動、製品及びサービスの性質、規模及び環境影響に対して適切でない
というのがあります。
はたして何を根拠にして適切でないのか?私は知りません。
そもそも寺田博さんの本に、ISOの会議でこのようなことを要求事項にできるのかという議論があったと書いてありました。世界中のISO委員よりこの不適合を出した審査員は物知りで優秀なのでしょう。
あるいは物知りでなく優秀でないのかもしれません。

・環境目的・目標の設定およびレビューのための枠組みがない。
というのがあります。
意味不明でその会社が審査員に質問したら「枠組み」という言葉がなかったためだそうです。
4.2ではありませんが2004年改定後に文書管理で「配布」の文字がないという不適合をたーくさん拝見したものです。ISO審査とは単語の有無を調べることなのでしょうか?

たいがぁ様 ご期待の
・一般の人が入手可能であるという言葉がないので不適合。
こんなことを言って、お金がもらえるなら楽しいですね

おっと強烈なものもありました。
・従業員が会社の規則を守っていないのは環境方針が周知されていないことであり4.2項の不適合である。
本日以降、ISO14001には4.3以降はいりません。すべて4.2項の不適合にすれば簡単明瞭です。誰でも審査員ができます。

ロゴマークの管理は認証機関との契約に記載されていますので、契約違反は審査での不適合になります。
ロゴマーク規定はISO規格ではなくJABRE300-2006)だったと思います。いずれ民事の世界ですから契約書から落とすことは組織と認証機関の話し合い(契約)で可能ですが、その時は認定機関への登録はなし、ロゴマークの表記は不可になります。
同様に認定審査の受け入れも一般的な契約書にありますが、これも契約書に記載を拒否すると認定機関への登録はなし、ロゴマークの表記は不可になります。
脱線ですが、審査契約書に「審査報告書は認証機関(通常『乙』と記載される)の許可なく外部に提供してはならない」と書いている認証機関があるそうです。
そんなことはISO・IAFの基準ではありませんから、「契約書の文言から削除」と強く要求しましょう。もっともそんな認証機関とはサヨナラが一番か

ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(08.12.07)
・環境目的・目標の設定およびレビューのための枠組みがない
というのがあります。
意味不明でその会社が審査員に質問したら「枠組み」という言葉がなかったためだそうです
・たいがぁ様 ご期待の
一般の人が入手可能であるという言葉がないので不適合というのがありました
こんな程度で審査ができて、お金がもらえるなら楽しいですね


このような指摘を出す審査員は、規格の前にまず国語を勉強するべきですね。
国語の勉強はCPDの対象にはならないのかしら?
いったいどう読めば、d項の「枠組みを与えること」とf項の「一般の人々が入手可能であること」を方針の中に記述せよという解釈になるのでしょうか?

おっと強烈なものもありました。
・従業員が会社の規則を守っていないのは環境方針が周知されていないことであり不適合である


これはスゴイ。その根拠と証拠があって不適合と判定しているのでしょうか。
いやいや、そんなことを立証できるはずがありません。つまり、審査員の主観にすぎないことを不適合と断じているわけで、こうなるともう審査員の登録制度の妥当性に疑問を持たざるをえません。

ぶらっくたいがぁ様 お断りしておきますが、すべて現実の実例です
これでもISO審査登録制度は信頼できるのでしょうか?
真面目な人は呆れてしまいます


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