鼎の軽重を問う 2 2009.08.07

昔々は権威者に問い合わせるということはかなり困難だった。
この文章だけでは意味が分からないかもしれないので、若干補足する。
【権威者】とはなにか?
まあ本の著者、新聞に記事を書いた人、論文を書いた人、大学の先生・・そんなものだ。
【困難】とはどういったことか?
まず相手の住所を知らない。知るすべがない。住所が分かったとしてお手紙を出しても、届くかどうか、届いたとしても読んでもらえるか、はなはだ心もとない。ましてご返事がいただける確率は非常に低いだろう。
昔の著者と読者の関係は、21世紀の現在とは違いはるかに距離があり、上下の差は大きかった。つまり本を書いたり、新聞に寄稿したり、講演したりする方は、己が信じることを主張することができ、それを聞く側はそれに異議を唱えたり質問することが非常に困難であったことは疑いのない事実だ。もっとも本を書いたり講演ができる立場になるのは、それはまた大変なのだといわれると、それはそうなのだろうけど、主張する側と聞く側の発言権の非対称性は否定できなかった。

しかし、今現在はそうではない。
今の人たちは本を読んでいて疑問があったら、即座に著者に電子メールで問い合わせたり異議を唱えることを躊躇(ちゅうちょ)しないだろう。少なくとも私は気負いもせず気兼ねもせず問い合わせする。
著者のメールアドレスをどうして調べるか? 多くの本には末尾の著者のプロファイルにメールアドレスが記載してある。記載してなくても、ウェブサイトで検索すれば本を書くような人のメールアドレスはすぐに見つかる。あるいはご本人がウェブサイトなりブログを開設していれば、そこに書き込めば読むだろうと期待できる。大学の先生とか研究者であれば、データベースも整備されている。
もっとも二・三年前のこと、東証二部上場の会社の幹部のお名前が高校の同級生と同姓同名であったので、その会社にメールを出してその方が同級生か否か教えてほしいと問い合わせたが、なしのつぶてであった。この場合、私が非常識なのだろうか?

本と同様にインターネットのウェブサイトを見ても、論理がおかしかったり、その主張に反対であれば、これまた即アンケートなどに書きこむなり、メールを出すことは普通のこと、当たり前のことだ。
そして、受けた側、つまり本を書いた人、ウェブの開設者もそれに応えることが当然であろうと考えられる。そういった意見を無視するような人間はインターネット時代に発信することは許されないとみなされていることは事実だろう。
そういう状況を理解せず、「反対意見は聞かない」とか「下々の者が何を言っている!」なんてスタンスではネットでとっちめられることは間違いない。
しかし今でも古い時代のままの認識でいる著者とかウェブ開設者もいる。
本日はそんなことを語る。

まず、驚くことではあるが、ウェブサイトのどこを見てもお便りを受け付けるところがないものがある。これは会社のウェブサイトでも個人のウェブでも結構ある。つまり、メールアドレスも表示してなければ、アンケートのページもなければ、住所も電話番号も記載していないなんてものがあるのだ。いくらなんでもこれは非常識極まれりだろう。
個人がプライベートに作っているウェブサイトならともかく、政治的であろうとなんであろうと、世の中に対して何かを主張しているなら、その対価として人の意見を聞くというのは当たり前すぎることだ。
見方によっては、論駁されそうなのでその予防処置としてメールアドレスを表記していないのかもしれない。稚拙な平和主義者、憲法9条主義者にはそういうウェブサイトはたくさんある。きっと右翼(?)に論破されないようにしているのだろう。
しかし会社のウェブサイトでメールアドレスも電話も表記していないというのは、商売をしないと宣言していると同じと思える。ぜひとも担当者、いや幹部の方にお考えを聞きたいものだ。

もっとも、メールアドレスが記載してあっても、ご返事がいただけるかというとそうとも限らない。偉い先生の中には、我々下々を相手にしないお方もいる。私はものおじしない方だと自認している。ISO-TC委員などに質問したいと思うと、すぐにネットを検索してメールアドレスを探してお問い合わせをする。過去何人ものISO-TC委員に問い合わせしているが、回答をいただけなかったのはISO9001で有名な I 教授ただひとりである。きっとメールが不達であったのだろう。まさか I 教授ともあろうものが人様から来たメールを読まないとか返事をされないという失礼なことはされないだろうと推察する。 

しかし現代はメールを受けたら返事をすればよいというような時代どころではない。インターネットの掲示板で議論している論者がその議論を基に本を出し、あっというまに国家経済の権威、日本再生の預言者になったしまった例もある。私は三橋貴明氏がネットで議論していた時代から見ていた。三橋氏に限らず、ネットの論者がクラッシックな雑誌や論文との違いは、主張するだけでなく、双方向性、インタラクティブであり、かつその議論は猛スピードでやりとりされる。経済とはお金が回ることだ。お金があっても使わなければ経済は成り立たない。一定量のお金しかなくても、それが使われる回転が早ければ経済は拡大していく。
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昔、「金は天下の回りもの」なんて言ったが、本当は「金は天下を回すもの」なのだ。
議論はお互いに疑問・反論を投げ合うことにより進歩していくし、その応酬が早ければ早いほど考えは進みお互いに高みに至ると愚考する。そしてもうひとつ重要なことだが、インターネットの論者たちは議論によって自分の意見が変わることをいとわない。いや己自身が変革して成長することを目標としているようにさえ見える。論者が己を権威と思っておらず、己の意見に固執せず、他の意見がより良ければ自分が変わることを恥とも何とも思わない。そういったことが現代のインターネットの威力であり、象牙の塔に閉じこもっている学者たちはネットの申し子にあっというまに置いてきぼりにされてしまうだろう。いや現実はそうなってしまったようだ。
じゃあ、世の中すべてそうなりつつあるのか?といえば、残念ながらそうでもないようだ。
わが愛しきISOの世界は、いまだ己の世界に閉じこもり、頭の中で考えた高尚でバーチャルなことを論じているだけのようだ。
昔、書を捨てよ街に出よと語った作家もいた。現実を知らずに書物の世界を語っても実践じゃありません。もうインターネット以前だよね 

本日の妄想
鼎の軽重を問うとは権威を脅かすというニュアンスがある。
現代では、鼎の軽重を問うのではなく、お互いに鼎を競い合い作り直していく時代なのではないだろうか?
しかし、これは当事者にとっては息の抜けない疲れる時代であろう。

なんで、パート2なのかといえば、だいぶ前に同名で書いたものですから・・


KY様からお便りを頂きました(09.08.08)
「鼎の軽重」を測ること等もってのほか?
パート2のコラムで9条の話が出たので一言。
かの箕面市の無防備マンが殺人未遂で逮捕された件で、「みのお9条の会」はようやく事件に対する会の方針をHPで発表しましたが、身内の1人がやらかした犯罪について詳細に触れることなく、ただ「ナイフを使った」と極めて抽象的な言及に留め、容疑者を呼びかけ人リストから外す、という極めてお粗末な声明文で済ませる実に不誠実な態度しか窺がえませんでした。
しかも申し訳的に容疑者の行為に対し「遺憾の意」は表明したものの、その一方で事件に対する自組織対応の不手際・不誠実さに対する批判を「誹謗中傷」の一言で切り捨てて不誠実さに更に輪をかける愚行を為しており、これが普段他者に謝罪を要求する連中のやることなんだな、と改めて感じました。
もしHPに掲示板があればさぞ「炎上」したでしょうが、当然ながらこの会のHPに掲示板はありません。痴呆、もとい地方支部にはある所もあるのですが(ただし大半は閑古鳥状態)、大都市部の支部にはあるほうが珍しいです。無防備マンのサイトもそうでしたが、自分の主義主張の矛盾を突っ込まれるととたんに掲示板を閉鎖したり、或いは最初から設けなかったりするのが護憲や無防備地域サイトのパター・u档唐ンたいです。彼らにとって憲法や無防備地域抗争は絶対無謬の価値を持つ「聖域」なのでその価値に疑問を持つ、鼎の軽重を問うことは許されないことなのでしょうね。「真正なる存在に疑問を呈する」ことはタブーに触れる神をも恐れぬ蛮行、と平和信者の目には映ったのでしょう。
でもこれじゃ「理念」を飛び越えて完全にカルトの域に入っていますけど。

KY様 毎度ありがとうございます。
事件に対する自組織対応の不手際・不誠実さに対する批判を「誹謗中傷」の一言で切り捨て
これってサヨクの常とう手段ですね。
毎日新聞の時も捏造ヘンタイ報道を批判されて、「当社の女子社員に対するストーカー行為」なんたらと言いだして、それが嘘だってばれてまたまた・・というのは記憶に新しい。
そうそう、数日前でしたっけ、偉大なるNHKも台湾問題で逆切れしたそうです。
しかし宣伝はサヨクが上手ですから、こういったうそを声高く、いろいろなところで語りつないでいかなくてはなりません。
サヨクは常に善意の正直者という仮面をかぶっているのですが、それをひんむいてやらないと日本のためになりません。


KY様からお便りを頂きました(09.11.28)
久しぶりに「箕面9条の会」を覗いたら
URLを貼り付けておきますが、何とまあ、7月に発起人の一人が起こした「9条ナイフ事件」に関する声明文が綺麗さっぱりなくなっていて、文字通り(少なくとも彼らの脳内では)件の事件は完全に「なかったこと」になっています。
普段から他人に対しては「事実を直視せよ」とご高説を垂れるサヨクの何時ものダブスタ振りですから起こる気にもなれませんが、この体たらくで「護憲」ですか・・・でもネット上では事件は無数に拡散していますし、下手に隠し立てすればまた2CHのネタにされるのに、彼らは何処まで行っても「無自覚なピエロ」ですね。

KY様 毎度ありがとうございます。
サヨク政権ができたから我が世の春なのでしょうか?
今にサヨクに真冬をもたらさねばと・・・


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