環境実施計画 愚考 10.01.15

ここ1週間、家内と旅行に行っていた。と言っても私のことだ、高級リゾートとか遠いところではなく、安くて近いところである。まあ、定年前の家内孝行ですから あなた!白い目で見ないでください。

旅行中、某所で次のような掲示板と見つけた。

Waste Management Plan

A) Provide trash bin onboard
B) Instruct passenger wishing to dispose of waste where the bin is located
C) Empty trash bin into shore side trash dumpster daily




この掲示物がどこにあったかここに一度行った方ならご存知のはず 

簡単な文章で私にも読めた。ちなみにbinとは容器、いれものである。
内容はどうでもよいと言えばよいのであるが、私が気になったのは大層なお題目だったからだ。逐語訳すると「廃棄物管理計画」である。
このような内容の文章に「マネジメントプラン」という表題を付けるということにいささか驚きを感じたのである。たかがゴミ箱を置いて乗客にそれを使わせることを「廃棄物管理計画」「マネジメントプラン」というのだ! マネジメントが日本語の経営とか管理とかに対応するなら、少しどころか非常に大げさに感じた。
そしてこのタイトルをみて、私は環境実施計画を思い出したのである。

環境実施計画は management programme だからPlanとprogrammeは違うというご意見がすぐにもくるだろうというのは分かっている。
ではPlanとprogrammeとは何が違うのだろうか? ちなみにprogrammeとは英国式のスペルらしくアメリカではprogramと書くらしい。いったいplanとprogramは何が違うのか?とネットを調べてみたが、planは一般的な計画で、programは予定というニュアンスが強いとあった。なお、建築業界ではplanは図面(特に平面図)、programmeは工程(工程表)を意味するとある。

私が過去に聞いたことのあるプランとはどんなものかというと頭をひねると・・
プランと付くものでは真っ先にマーシャルプランが頭に浮かんだ。今じゃマーシャルプランなんて年配者しか知らないかもしれない。調べてみると、普通にはマーシャルプラン(Marshall Plan)と呼ばれているが、正式名称は欧州復興計画(European Recovery Program)なんだそうである。フルブライト留学制度なんてのも、もう古(いにしえ)かもしれないが、これも通常Fulbright planというがFulbright Programが正式呼称らしい。
このように正式名称がプログラムのものを一般にplanと呼ぶのは、planとprogramの違いはあまりなく、プログラムとはかたくplanは日常語ということなのだろうか?
この他に日本語で計画と訳されているアメリカの施策はたくさんあるが、マンハッタン計画はManhattan Projectである。projectとなるとplanとはどう違うのか私はわからない。規模が大きいのがプロジェクトかと思いきや、アポロ計画はApollo programである。Apollo planという表記は見かけない。このあたりはどういう事情なのだろうか?
最近のアメリカで太陽光発電を推進しようという「ソーラーアメリカ計画」の原語は「Solar America Initiative」である。initiativeとは計画という意味ではなく、イニシアティヴをとるつまりアメリカが主導権をとるぞ!という計画なのだろう。

ところで大変なことに気が付いた。
ISO14001に関わっている人々はみな「環境実施計画」とか「environmental management program」あるいは短縮して「EMP」と言っている。実は私も常にそういう言葉を使っていた。ISO規格を読みなおすと、なんと「環境実施計画」という言葉はなかった!
英文の規格にある言葉は単に「programme」であり、日本語ではこれを「実施計画」と訳している。
ちなみにISO9001:2008ではprogram(あるいはprogramme)という語は使われておらず、planあるいはplanningである。このあたりの違いはどうなのだろうか?
と考えるより、そもそもPlanとprogrammeに違いはないと理解した方が良いようだ。

しかしISO規格の翻訳は逐語訳が原則であるが、「programme」がなぜ「計画」でなく「実施計画」になったのだろうか? 単なる「計画」でない理由が良くわからない。前述したようにプログラムが予定というニュアンスが強いといっても「実施する計画」という意味はないだろう。そもそも実施する当てのない計画があるはずがない。
しかしそれよりも、なぜ私も含めて「環境実施計画」と呼ぶのだろう? これは大きな誤解あるいは思い込みだろうと思う。インターネットでググると「環境実施計画とはenvioronmental programme(s)のことである」という解説はいくつも見つかる。しかし元々の規格原文(英語)にも「envioronmental programme(s)」という熟語がない。単独でprogramme(s)があるだけだ。いつか誰かの勘違い・勇み足で架空の熟語を作りそれが広まったのか? いずれにしてもISO14001では「環境の実施計画を作れ」と語っておらず、「目的・目標を実現する計画」を作れと言っているにすぎない。
このprogramme(s)が定義されていないことに注意!
要するに、規格制定者はここでいうプログラムを特別なものと考えておらず、単に目的・目標を実現する計画という平文(ひらぶん)として記述したにすぎないと考える。

ひらぶんとは暗号の反対語だが、ここでは特別の意味を持たないという意味で使った。
自今以降、自戒を込めて環境を付けずに実施計画と呼ぶことにしたい。

とこれだけでは、単なる雑談である。
冒頭に戻ると、「Waste Management Plan」と銘打ってもあの程度の中身で良いのなら、ISO14001のprogrammeも同じようなもので良いのではないだろうか?
いや例の「Waste Management Plan」はあまりにも簡単な文章だから、規格要求を満たしていないかもしれない。
検証してみよう。
ISO14001:2004 4.3.3 最後のフレーズは次のとおりである。
実施計画は次の事項を含むこと。
a) 組織の関連する部門及び階層における、目的及び目標を達成するための責任の明示
b) 目的及び目標達成のための手段及び日程

例の廃棄物管理計画は大体次のような文章である。
A)(私たちは)船上にゴミ箱を搭載する
B)(私たちは)乗客にゴミ箱にゴミを捨てるよう指導する
C)(私たちは)毎日ゴミ箱の中身を岸にある大きなゴミ箱に入れます
 関連する部門及び階層
における責任の明示
手段
日程
第一文(私たちは)ゴミ箱を搭載する(まずはじめに)
第二文(私たちは)指導する(乗客が乗った時)
第三文(私たちは)ゴミ箱を空ける毎日
おお!完ぺきに4.3.3の要求を満たしているではないか。
と、そんなことを考えるまでもなく、何事かを行う手順を示す文章には当然ながら5W1Hがなければならないのだ。

ISO14001の4.3.3の「環境実施計画」とは何かものすごいものだろうと考えていたが、実には「環境実施計画」なんて要求はなく、規格で求める「実施計画」とは簡単なものでよかったのではないだろうか?
いやいやISO14004には(環境の付かない)実施計画のひな型が載っているのだが、もちろんそれは複雑でもないし、細かな数値などは記されていない。時系列でさえない。しかし5W1Hはしっかり漏らさずに記載されている。
ご一読あれ
側面目的目標実施計画・・・
燃料油の消費燃料消費量削減1年以内に20%削減する効率の良い燃料バーナー設置・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
(ISO14004:2004 表A2を参照した)
ここでは
「より効率の良い燃料バーナーを設置する」
「設備及び設計の技術者が温排水の熱を回収し再利用するために運転を再検討する」
「サービスセンターにおける廃棄物管理の教育訓練実施計画を開発し実施する」

などなどが実施計画として挙げられている。
細かな日程もなく、詳細な数値目標もない。これで立派な「環境実施計画」、おっと違った「実施計画」である。もしこれで不適合になるならそう判断する審査員にISOかISO-TC委員に問い合わせてもらうしかない。

本日学んだこと
いやあ、学ぶということはどこでもできるものですね!
いや、いつでもどこでも学ばねばならないのです。


我が師匠Yosh様からお便りを頂きました(10.01.16)
この掲示物がどこにあったかを当てた方には座布団を2枚差し上げます。
たぶん遊覧船かの船でせう。
shore side とあります故。

このように正式名称がプログラムのものを一般にplanと呼ぶのは、planとprogramの違いはあまりなく、プログラムとはかたくplanは日常語ということなのだろうか?
会社は何かの行事をしますとPlan(計画)を立てます、決まつた一つの行事をするどのやうにするかをProgram(式次第)を決めて其のやうに執り行ひます。

マンハッタン計画はManhattan Projectである。projectとなるとplanとはどう違うのか私はわからない。
米政府は新兵器の開発のPlanを立てました、そして核の原理を利用して兵器を拵へるProject(事業、企て、試み)を学者にさせて、結果原子爆弾を作り上げました。

最近のアメリカで太陽光発電を推進しようという「ソーラーアメリカ計画」の原語は「Solar America Initiative」である。initiativeとは計画という意味ではなく、イニシアティヴをとるつまりアメリカが主導権をとるぞ!という計画なのだろう。
太陽光発電の推進のInitiative(發起)が適切かと、思ひます。

以上が當話題の文中で私の理解する各々の英単語の意味であります。

Yosh師匠 毎度ご指導ありがとうございます。
まずはじめの方は、ボートの掲示であることは誰にでもわかります。どこの航路かということが問題です。

プラン、プログラム、プロジェクトのニュアンスありがとうございます。
Yoshさんのお話を聞きますと、英語の単語にはいろいろな意味があるのだけど、日本語にするとみな計画になってしまってそのニュアンスが伝わらないということでしょうか?
英 語
plan
programproject・・・
../2009/yasita.gif
../2009/yasita.gif
../2009/yasita.gif
../2009/yasita.gif
../2009/yasita.gif
日本語
計画

ISO9001ではplanといい、ISO14001ではprogramというのは、9001の方は大まかでよく、14001は式次第までなければならないのでしょうか? あるいは単に規格を作った人たちの気分だったのでしょうかね?

Yosh様からお便りを頂きました(10.01.16)
とうた様、
あの文面での英語の意味を日本語にすれば申し上げたやうになります。
其れらを全て日本語で計画とするのは私のやうな教育を受けてない者でも判ることなのに、其の英文を日本語になされた方達は余程英語を知らぬか日本語の意味を解せぬやうに思はれてなりません。
英語の単語が全て違ふてるのに日本語の単語が全て同じとは今の日本の日本語も余程底が浅くなつたものでありますね。
若しISOの日本語が全てがさうだとしたら、ISO関係の英語の文章を日本語にするのに相当簡略されたと思はれても仕方がないでありませう。
多分ISOの規格にはないでせうが、このISOの英語の文章の翻訳の仕事をISOの規格に合はせて適合するか審査するのが必要なのでは、と思はずには居られぬでありませう。

Initiativeは”太陽光発電の推進の率先”でも構はぬかとも思ひます。

Yosh様 ご教示ありがとうございます。
今の日本の日本語も余程底が浅くなつたものでありますね。
いやはや、アメリカ人のYosh様にそう言われては日本人の一人として恥ずかしさのあまり穴にでも入りたい。
ちょっと違うかもしれませんが、ISO14001規格で「compliance」を翻訳するとき「遵法」を読める人も書ける人もいないからと「順法」としたそうです。今の日本人は劣化しているのは間違いないようです。
はたしてどうしたものでしょうか?


Yosh様からお便りを頂きました(10.01.17)
とうた様、
onboardをとうた様は”船上”と訳されてます、あなたは其の掲示板を船上でみたから其のやうに為されてる。
若しさうでなければ如何為されますか?
onboardは汽車でも飛行機でも用ひられます。

C) Empty trash bin into shore side trash dumpster daily

が若しEmpty trash bin into a terminal trash dumpster daily.とあれば如何為されますでせうか。汽車のか飛行機のかの到着地なのでせう。
多分汽車ならa terminal stationとかにはするでせうけど。
其れに鉄道会社とか航空会社とかではこのやうな表示はされなくても社内で既に周知されてて掲示板などには掲げられぬでありませうね。

Yosh師匠 毎度ありがとうございます。
おお!Yoshさん今年はシャーロックホームズか金田一か探偵に転職ですか!?
おっしゃる通りです。
ただ私はこの掲示物がどこの海か湖の遊覧船で見かけたのかを質問しようとしたのです。
と言いますのは、一度訪問した人は誰でも知っているところですので・・


massy様からお便りを頂きました(10.02.02)
「環境実施計画 愚考」について
おばQ様
初めまして。massyと申します。
私は会社でISO9000の事務局をやっておりますが、昨年の10月、認証登録を返上しました。理由はこのサイトでも述べられていますが、1枚当り10ン万円もする審査報告書に価値を見出せなかったためです。
14000の事務局はは別の部署が担当しておりますが、こちらはご多分にもれず、外部コンサルの言いなりですので、例の点数式の環境アセスなど、?マークの多い運営を致しております(^^;)
さて、今日の投稿に思い至ったのは、「環境実施計画 愚考」の中で、programとplanの違いの一件が論じられていたことによります。ISO規格の翻訳がまずいのは9001だけかと思っていましたが、14001も翻訳の問題が多いのですね。
9001:2000が発行された時、JIS版ではなく対訳版を購入しました(高い! 高すぎるゾ!)。原文と翻訳文を何気なく読んでいると、英単語は違うのに日本語の翻訳語が同じになっていることに気付きました。
特にヒドかったのは、
define,describe,determine,identify,specify,state がすべて「明確にする」
carry out,conduct,implement,perform,undertake がすべて「実施する」
と訳されていました(JIS版も同じです)。
どなたが翻訳されたのか知りませんが、あんまりと言えばあんまりです。このような方たちが、英語でやりとりするであろうISOの会議や規格作りに参画したり、規格の解釈を主導しているかと思うと、「えっ、それでいいの?」とつい思ってしまいます。
英語のレベルと日本語のレベル、どちらが低いのですかね?
えっ、両方ですか?

massy様 お便りありがとうございます。
論点が多々あります。
まず第一に、日本規格協会の本は高すぎます。ましてJIS規格は著作権があるのは当然ですが、国民の財産です。これを一私企業が高い値段を付けて売るなんて、日本産業界の足を引っ張っています。なんて言ったら大げさでしょうか?
財団法人と言っても官公庁じゃありません。
工業標準化委員会にアクセスするとJIS規格を見ることができますが、印刷不可で更に精細さをおとしています。これは日本規格協会からの要請によるものといわれています。真偽はわかりませんが、たぶんそうでしょう。
第二に、翻訳がおかしいこと。
これは新井さんという方が本格的、逐条解説&正訳をウェブにアップしています。
残念ながら、私の英語の力では議論することができません。ただどうもヘンということは多々あります。
第三に、現実に多くの審査員がJIS規格さえよく理解していないという事実があります。これは困ってしまいます。1週間ほど前私が立ち会った審査で、「緊急事態の訓練をしてますか?」という質問をしていました。
はあ? そりゃ訓練も必要だろうが、その前にテストをしなければならんでしょう・・絶句
審査員研修機関、審査員登録センターしっかりしろといいたい。しかし審査員研修の講師さえまっとうな理解をしていないという事例をいくつも知っています。私が研修を受けたのは97年頃ですが、当時の講師は何が何でも不適合を出すんだ! その方法はこうするんだというようなことを教えてくれました。
第四に、審査機関独自というか、いいかげんな独自ルールが多すぎます。日本適合性認定協会はしっかり認定審査をしているのでしょうか?
環境目的は3年以上ないとだめ、すべての部門に目的目標がないとだめ・・・呆れるばかり
massy様 認証を返上して正解ですよ。


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