管理責任者検定 10.02.20

これは我が同志、ぶらっくたいがぁ氏のアイデアである。もちろん文責はすべておばQにある。笑っていただければうれしいのですが・・・

ここは江戸、どこかの人足置場で数人の男たちが輪になって話し込んでおりました。

おい、おれはちょっとした商売を考えたんだぜ、まあ、聞きな
内部監査員検定という検定を行っている機関というか団体があるそうでさあ〜。おっと、ここでいう内部監査てえのは、会計監査とか監査部とか業務監査とか、そう言ったものとは関係ねえ。ISOマネジメントシステムというものがあったと思いね〜、その規格でしなくちゃいけねえって決めている内部監査のことなんでさあ〜
ご存じねえってお方に簡単に説明するってえと、会社の品質管理(広義)の仕組みがしっかりしているよとか、環境管理がしっかりしているよと外部に説明するってのが、はやりなんだそうだ。
でもって、しっかりしているよというためには、内部環境監査とか内部品質監査ってのをしてないといけねーってわけでさ、変な話だがよ、まあそんなからくりに従うのも渡世の義理ってもんで・・

内部監査なんてやってますっていえば、お上が行うISO審査ってのには簡単に通ってしまうらしい、
といってもノータリンとか、節穴見てえなお目々の人がいくら内部監査をしてもそりゃいけねえ。やっぱし、まっとうな奴がお店や会社を点検しなくっちゃいけねえってことはあたりめえだわ。
そんなわけで、内部環境監査とか内部品質監査をやろうって野郎の能力がどれくらいかってえことをテストして、大丈夫かどうかみるってのが内部監査員検定っていうらしい。らしいってのはあっしはそんなもの受けたことがねえ〜
そんな検定が役に立つのか立たねえのかわしは知らんが、じっせえにそんな検定があるってのが今の日本なんだそうだ。

しかしね、そこであっしはちょっと考えたんだわ。そりゃあっしだって首の上に乗っかっているのは帽子掛けでもねえし、鉢巻きするためでもありあせんぜ、やっぱしなんだ、その考えるために頭ってものはあるもんでよ〜、
で、考えたんだがよ、ISO9001とか、ISO14001ってのは、内部監査員だけじゃ成り立たねえ。
おお、おめえさんもご存じでしょう!?
そうです、まず経営者ってのがいねえとなんねえや、もちろん会社ってのは投資家も必要だが、ISO規格では投資家までは管理できねえと考えたんだろうねえ。いや、投資家が投資するために会社を良くするというのが規格のめあてだったのかねえ〜?
ともかく経営者、つまりなんだ、旦那だ、あるいは棟梁っていってもいい。まずそいつがいねえと形になんねえ〜
しかし経営者ってのはどこの店の旦那でも、棟梁でも忙しいことに決まってまっさあね。昨今のように景気が悪いと、両替屋や銀行回りして金策はしなくちゃなんねえし、お客さん回りをしてお仕事をよろしくと頭を下げなくちゃなんねえ。三河の車屋のような問題が起きるってえと、はるか遠くメリケンなんぞまで行って公聴会なんかで事情の説明をしなくちゃなんねえわけよ。

おおっと、景気が良くなればなったで、利益がドンドン出たりすると、それはそれで大変でさ、なるべく利益を少なくする方法を考えたりもしなくちゃならんのよ。
まあ、なんだ、そんないろいろあるもんで、経営者ってのはとにもかくにも忙しいちゅうわけだわな・・
忙しいって時は、いっていどうしたらいいかってえと、まあ、あっしの頭で考え付くことは、てこ、つまり手伝いを使うとか、誰かに任せるってことがまっ先かなあ〜
ISO規格を作った人たちは、あっしより頭のいい人たちなのはもちろんだけんどもよ、考え付くことはおんなじだわさ、経営者の代わりに会社の品質管理とか環境管理を任せてもいいって決めたわけだわ・・まあ番頭というか、代貸っていうか、まあそんなわけだわ・・
もちろん番頭や代貸の指図で働く手代や丁稚が大勢がいるわけだけどよ、そんな連中は言われたことして手間賃をもらえばいいってわけだ、

ともかく番頭とか代貸となると、そりゃやっぱしそれなりの采配が振れる一人めえじゃねえといけねえわ。
それでさ、あっしは考えたんでさ、内部監査員検定なんていくらやってもだ、めはしのきく内部監査員をつくってもしょうがねえ、だってそうだろう、悪いところを見つける能のある奴がいてもさ、しっかりと仕事をする奴がいねえならどうしようもねえじゃねえか? なあ、そうだろう?
こいつは使い込みをしてる、そいつはサボってばかりいやがって、あいつは女中を口説くことしか頭にねえ・・そんなことを見つけてもお店は良くなんねえのは猫でも犬っころでもわかりきってるがな、そうでがしょう?
大工だってそうだわさ、屋根が1寸ずれているのを見つけても、釘の頭が出ているのを見つけても、大黒柱が傾いているのに気がついても、それをちゃんとできるやつがいなくちゃだめだろう、な、
まあ、ちゃんとした職人をそろえるのも必要だが、まっさきに考えなくちゃならねえのは番頭だよな、
で、おれが考えたってのは管理責任者検定だよ。
オイ、お前、お前は口が軽そうだけど、この考えは秘密だぞ、ばらしたりするんじゃねえぞ、めはしの聞く大阪の野郎が明日にでも管理責任者検定なんてでっち上げないとも限らねえ〜
だから内緒だぞ 分かったか! ヨシヨシ
ところで管理責任者検定っていうと、なんだ、どんなことをテストしたらいいと思う?
やっぱし旦那がいないとき旦那に変わってお店をとり仕切れることが一番大事だなあ、しかしお店によって商(あきな)っているものが違えば、良いも悪いもやっぱし違うなあ、食い物屋の味を変わんねーようにしっかりするのと、呉服屋の反物を管理するのはやっぱし違う、
環境っていってもだ、大工なら音も立てるし、カンナくずや切れ端も出す。壁を塗ったりすれば濁った水をどぶに流すことになる。そうじゃなくて両替屋ならそんなことは起こさねえ。するとどこのお店でも大工でも管理責任者が知らなくちゃならないことってなると、うーーん、これはちょとやそっとでは決めらんねーなあ〜

おい、なんだお前、なんか言いたそうな顔しているな、言ってみろよ
なに、経営者検定をしたらどうかって!
うーん、そりゃすごい・・・けどよ
だけどよ、大店の旦那になるとか、大きな仕事をもらう棟梁になるってのは、既に周りから立派な奴だって見られてるってことだろう?
それにだ、旦那の仕事が良い悪いって言ったところであんまし意味がねーじゃねーか、旦那の采配が良けりゃ事業が伸びるし、めはしが利かなくちゃ家屋敷手放す羽目になるのは旦那本人だ。だったら旦那の才覚があってもなくてもだれも困らねーんじゃねーか
だけど旦那が誰かしっかりした人を頼みたいって時にこいつなら大丈夫ってお墨付きをだすのが管理責任者検定ってものよ、分かったか、おれの頭の良さを

なんだ、お前もなにか言いたそうだな、言ってみろよ
なに、万が一、こいつは大丈夫っていった奴が使い込みとか商いでヘボしたらどうするって?
うーん、おれは保証人にはなんねーぞ、そんなことをしたら身の破滅だ
しかし、うん、なんだな、なんだか管理責任者検定ってヤバイ感じがしてきたな、気が変わったぜ、おれは止めた、止めた
おい、お前、大阪あたりのめはしの利くやつに今のからくりを伝えてみろよ、どうなるかじっくり見てみようじゃねーか

本日の続き
そのアイデアを伝え聞いた大阪の商人が管理責任者検定という看板を上げたそうであります。残念ながら近松門左衛門がいないので状況は伝わっておりません。 



名古屋鶏様からお便りを頂きました(10.02.22)
佐為様
管理責任者検定ですが、その大阪商人様に聞いて頂きたいのですが。
「その検定には認定講習による救済措置はありますか?」
何せ、その手のものが立ち上がると「管理責任者としての力量を確実にしたエビデンスとして云々」と仰せになるお方様がお見えになろうかと思いますですので・・

名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
つまり、なんですわ・・つまらない例えですが、「牛乳は人を健康にする、飲む人でなく配達する人を」なんてことわざがありましたよね。
同じ伝で、
「管理責任者検定は力量を確実に証明する、検定を受けた人でなく、検定を考えた人の商才を」
なにしろ大阪商人は生き馬の目を抜くと言われていて、商売の力量はものすごいそうです。
今日も教材のたたき売りのダイレクトメールが送り付けられてきたような気が・・


外資社員様からお便りを頂きました(10.02.23)
佐為さま
楽しい内容に思わず笑ってしまいました。
当時は、医者が無資格だった一方で、資格商売は武士や朝廷、それらに付随した家元制度で すでに存在していたと思います。
一番 大がかりなのは、将軍家で、大名を石高と格式(国持ち、城持ちなど)と親近間(御家門、一門並など)で格付けして、江戸城中の詰めの間、さらにはその中の座る畳の位置、装束(ドレスコード)、江戸城までの乗り物と行列の形式と持ち物(参勤交代も同じ)、江戸屋敷の門構えなど、瑣末で複雑なルール(有職故実)を編み出して、大名がそれらに血道を上げるように誘導して、金銭を浪費させ消費を増大させ経済活性化につなげました。
平和と経済の両立という面でみれば、黒船が来なければ 上手く動いていたのかもしれません。
朝廷の公家では、(女優の久我美智子さんを出した)久我家は、座頭の管理(当道座)で許認可の費用を取っていました。
時代劇などで、金貸し座頭が出てきますが、なぜ強いかと言えば朝廷(久我家)の許認可を受けて、町奉行が手を出せないのですね。
座頭の金貸しは、身障者福祉の面で保護されていたのですが、許認可権はしっかり存在しておりました。
江戸時代は、不思議な時代で、商業の最先端では 為替、信用取引から、現金掛け値なし安売りという当時の世界でも先進の商法が考案された一方で、「猫の蚤取り」「声色屋」のような、のんびりとした商売もあったようです。
TSUTAYAも貸本屋の延長ですし、リサイクルショップ・金券ショップは献残屋、レンタルは損料屋と、今あるものの殆どは存在しているみたいです。

外資社員様 毎度ご指導ありがとうございます。
時代劇になると、もう外資社員様の天下! ひれ伏すばかりでございます。
人間て、平等だとかいいますが、案外序列があって落ち着くところに落ち着いた方が気が楽ですよね。
会議とかどこに座ろうかと迷ったりしますが、一番末席(と言われているところ)にとりあえず座っているのが一番無難。
ところで、そんなことはどうでもよくて、そのうちお酒を飲みましょう。


うそ800の目次にもどる