代用品はホンモノがあってこそ 10.05.04

ISO9001の登録数もISO14001の登録数も減少している。私が、JABよしっかりしろ! JACBよなんとかせい!認証機関は審査の品質を上げろ!審査員は真面目にやらんか!と檄を飛ばして早や数年になります。
登録件数が減るばかり

ISO業界が元気がないのは日本だけではなく先進国共通といわれています。とはいえ中国をはじめとする開発途上国は、まだまだ認証件数が伸びているようです。経済成長と関係があるのでしょうか? いや人口増加と関係があるのかな?

でもISOばかりを見ていてはいけません。EMSといってもISO14001ばかりではないのです。ヨオロッパの地にはEMASというものがあると聞きます。エゲレスにはBS8555というものがあるそうです。日本でも創造力豊かな人々がいろいろなEMS規格を提案し、認証事業を行っています。
具体例を上げますと、環境省が音頭をとっているエコアクション21、某社がビジネスとして始めたエコステージ、国土交通省が勧めるグリーン経営、地域版EMSの老舗であるKES、その兄弟KEMS、そして県ごとに独自EMSがざくざくと・・
こういった簡易版EMSがどれほどの登録件数があるのかといいますと、結構な数になります。具体的な数字をあげても一刻一刻変化していますが、2010年4月時点の数字は概ね次の通り

認証制度件数
ISO1400120441件
エコアクション214543件
エコステージ718件
KES3294件(第一段階と第二段階の計)
KEMS580件
グリーン経営6435件
いずれもサイト数ではなく認証件数とした。

これだけの合計でISO14001登録件数の倍はあります。
この他に各自治体ごとにKES互換のEMSを設けて中小企業に認証を勧めていますし、飯田市などは独自のEMSを推進しています。
驚くではありませんか! ISO14001なんて日本のEMS認証件数の半分しか占めていないのです。
本家のISOも、今まで簡易版EMSに盗られていた取こぼしを拾おうと最近ISO14005なんていう簡易版を作ったそうで、いや規格ができる前から認証を始めちゃった気が早い認証機関もあります。今までISO14001のような3ナンバーじゃうちには身分不相応だなんて思ってたおじさん、お手軽な軽自動車ができましたわよ 

あなたがISO14001の親せきとか義理があれば別ですが、縁もゆかりもないならば、あなたに、いやあなたの企業にぴったり合ったEMSをみつくろった方が良いではないですか? 完全にオーダーメイドというわけにはいかないかもしれませんが、吊るしの服だって自分の体に合ったものを選ばないと困りますよね。これほどたくさんEMSの種類があるのですから、自分の体型にあったサイズを選べば、金がかかりすぎるとか、文書が重すぎるとか、わけのわかんねー審査員が来ることはなくなるかもしれませんよ
なくならないかもしれませんけど 

ではこれからどんどんと簡易型ISOが伸びていくのかというと私はそうは思わないのです。
それはエコアクション21でもエコステージでも、最終的な到達点はISO14001を想定しているからです。
ISO14001らしく言えば目的(objectives)になるのでしょうか
新参者のISO14005もそうです。寺田のおじさんはステップを踏んでいけばISO14001になります、とにこやかに語っています。このように簡易型ISOすべてが、いつかはISO14001にしよう、明日はISO14001になろう、あすなろうと心に誓っていることは間違いないでしょう。
エッツ、規格が誓うはずはないだろうって?
そう言われりゃそうですねえ、困ったなあ
認証組織が誓っていることにしましょうか
ところで井上靖の「あすなろ」ってご存知?

目指すものがISO14001なら、もしISO14001がこければこれら代用品もコケルだろうと思う。あなたもそう思いませんか?
代用品、廉価品、あるいは偽物は、ホンモノ・オリジナルがあればこそ意味があるのです。ヴィトンそっくりで品質も良いニセモノがあったとして、本物のブランド価値が下がれば偽物も価値を失います。それと同じだ。
誤解なきよう、私はいかなるEMS規格でも、それを実現したシステムは価値があり役に立つだろうと思う。しかし認証するという行為、あるいは認証を受けることに価値があるのかといえば、そうは思えない。
つまりまずISO規格に基づく認証制度があり、そのIAF傘下の認証機関の認証に値打があると思われているから、簡易版EMS認証制度もその代用品としての価値があるとみなされているだろうということである。
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昔のこと、1990年頃、私は田舎の囲碁クラブに所属していた。そのクラブではクラブ独自で段位を設けていて、クラブの大会で優勝か準優勝すると立派なクラブの段位免状を授与していた。私はその頃級位者で、その段位免状が欲しかったことを思い出す。しかしながらそのクラブの規約では日本棋院の段位免状は無条件に認めていた。つまり日本棋院のランクを基準にしてクラブの段位を定めていたのだ。
簡易型ISOとISO14001の関係も何かそんな気がする。

ところで私はそのクラブの大会ではついに優勝も準優勝もできず、あきらめて県の大会で準優勝して日本棋院の段位を半値でいただいた。田舎の囲碁クラブの段位の方が日本棋院より厳しかったのである。
エコアクションがISOより厳しいと言われるのとなんか似ている。
ISO規格に基づく第三者認証制度が崩壊すれば、簡易版のEMSの認証制度もこける。それは間違いないだろう。ISO14001の第三者認証制度が崩壊した時、ISO14001の認証企業がエコアクション21やエコステージに乗り換えるということは・・まずあるまい。認証ということをやめてしまうのではないだろうか。
それだけでなく、エコステージやエコアクションの認証している企業も、みんなそういったEMSの第三者認証制度を降りることになるのではないだろうか。そうなることを止めることはできそうない。
企業はしっかりとしたEMSを構築し運用していけば良いのであって、認証が必要かはまた別の問題である。そしてEMSが有効であるか否かは事故・違反のたびに組織の内部からも外部からも検証されてきた。しかし今だかって認証の価値は検証されたことがないようである。

本日の教訓
代用品は元祖があればこそ

本日のエクスキューズ
前にも同じことを書いたとおっしゃるあなた
あなたの記憶力はスバラシイ
あれからもう5年がたつのですね・・遠い目
日本のISO業界は進歩していないのかしら



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