PDCAの話 11.01.09

PDCAという言葉を知らない人はいないだろう・・といっては言いすぎであるのは間違いない。しかし企業で働く人なら一度は耳にしているだろうし、それどころか「PDCAをしっかり回せ」なんて常日頃言われているかもしれない。あるいは管理者の方とかISOに関わっている人なら、ご自身が「PDCAをしっかりせよ」と叫んでいるかもしれない。

というほどに人口に膾炙(かいしゃ)しているPDCAであるが、実際にそれを実行している人は少ない。
お前はなぜ断言できるのか?と言われると、チョット詰まるが  本心からそう思っている。
200×200 というのは、PDCAが回っていない例は実はたくさん見られる。
新聞は毎日「当社は何カ年計画でこうします」「来期の決算予想は・・」「新製品を出します」「新事業を始めます」そんなことを企業が広報したことが報じられているが、報道されたことを実現する会社は微々たるものだ。そして実行できなかった会社は、それにも懲りずに何度も似たようなことを広報し、新聞はそれを報道している。
PDCAがしっかりしていればかなりの割合で目標を達成するだろうし、たとえ実現できないプランがあっても、計画策定を繰り返すことによって精度が上がり実行不可能な計画は立てなくなる。いや実現するための施策を十分に考えるようになり、実現する確率は高くなる。それがマネジメントシステムの継続的改善である。
もし、そんなことに興味がある方はぜひともお調べになって、調査結果と考察を修士論文にでもまとめてください。
本日は、そのようなたいそれたことではなく、職場レベルのPDCAについて、いや職場レベルでPDCAが回っていないことについてのケーススタディを行ないます。

多くの企業には中期計画があり、単年度計画があり、それが職場の職制・・つまり課とか係などの部門に展開される。立派な計画を立てただけで方針展開をしていないような企業はPDCA以前である。そしてそれが日常業務に展開され推進していくはずです。
・・・ですよね?
当社には中期計画どころか、長期計画がありますとおっしゃる方がいるかもしれない。
長期計画がある会社は、事業活動が固定していて変化がきわめて少ない業種・業態に違いない。一般的な企業ではせいぜいが3年ないし5年の中期計画だろう。
10年スパンの長期計画を立てている会社は、民主党政権成立とその崩壊とか、中国の日本併合なんてことまで盛り込んでいるのだろうか?
リーマンショック前に長期計画を立てていた会社は、それがどのよう役に立ったのだろうか? 気になる。

さて、あなたの職場を考えてください。
事務所でも、販売の現場でも、設計でも、製造の現場でもよろしい。
課長があなたを呼びました。
「安藤君、これこれの調査をまとめて来週の月曜日までに報告してくれ」
「伊藤君、今月の売り上げ目標は1本だよ、1本、1千万だ、できるだろう、わかったな」
「宇藤君、今日は夕方に図面番号1234の部品を300個出荷しなくてはならない、頼んだよ」
「遠藤さん、あさってまでに環境レポートを送ってほしいんだ。ここに宛先リストがあるから、よろしくね♪」
「大藤さん、来週の月曜日に会議をするので、会場の準備、昼食、飲み物、その後の懇親会の手配してください」
そんなことを言われたとしましょう。

さて期限が来ました。
「安藤君、報告できたか? 何!やってない、今日役員に出さなくちゃならないんだぞ
../odoroki.gif 「伊藤君、数字はいくらだ? なに750? お前、会社辞めるか?」
「宇藤君、出荷するぞ。ええ! 機械故障で260個しかできてない?」
「遠藤さん、レポート送ってくれた? ぎょえ!明日までだと思ったって、泣くなよ、泣きたいのは俺だよ」
「大藤さん、今日の会議大丈夫だよね? え!忘れてたあ!」
となると期限まで放っておいてはいけないことは分かりますよね、でも、そういうケースがけっこうあるのではないでしょうか?

PDCAって、1年に一回まわすなんて都市伝説がありますが、そんなのはうそ800、仕事の内容や職場の能力によってPDCAのサイクルタイムは決まります。
話はちょっと違いますが、排水や騒音など法規制値があるものには、たいていの会社で自主基準値を定めています。自主基準値になったら手を打って、間違っても法規制地を逸脱しないようにするわけです。
大変結構ですといいたいのですが、実は結構でないことが多いのです。
「自主基準値をどのように決めたのですか?」と聞きますと、なんとなくとか、1割の余裕を見てとか、実力値ですとか、まあそんな回答が返ってきます。本当はそうじゃないですよね、モニターしている値が中心からそれてきて自主基準値になったときに、是正を開始して法規制値を超えないように管理するために設定するんでしょう?
../2008/feedback.jpg
だから自主基準値はそれらによって定めなくちゃならないんです。
PDCAのサイクルタイムも、是正をかけて間に合わなければチェックした意味がありません。時定数って言葉をご存知でしょうけど、時定数に合わせてチェックする間隔を決めなくちゃならないんです。
ISO14001で出てくる、環境目的とか環境目標って言葉を理解している人は少ないのですが、実は簡単です。計画表を作る時、普通右端を到達期限にして到達目標を記載するでしょう。そして途中にいくつかのチェックポイント、毎月とか4半期ごととかを決めて、そのときの目標値を決めるはずです。
このとき、環境目的とは右端の最終目標値であり、環境目標とは途中のチェックポイントの目標値のことなのです。
今でも、環境目的は3年後の目標、環境目標とは年度の目標と語っている(騙っている)認証機関がありますが、そりゃあ、まったくの勘違い、間違い、お門違い
当然、環境目的の実施計画と環境目標の実施計画というのが存在するわけがありません。 何年か前にCEAR誌に「環境目的の実施計画と環境目標の実施計画が必要だ」と書いていたTさん、今は理解しているのでしょうか? 

話がずれっぱなしでいけません。
PDCAを回すとは、次のようなことなのです。
「安藤君、昨日頼んだ報告について考えてくれたか? 月曜日の夕方に役員に報告するのでしっかり頼む。明日にでも方向付けを報告してほしい。」
../musuko.JPG 「伊藤君、月の目標が1千万だから今週1週間で250万いかないと後が苦しい。実績はどうかね?」
「宇藤君、おい10時半だ、予定では75個できていることになるがどうだい? 何? 故障だって、しょうがねえなあ、じゃあ○○工業向けの生産を止めて切り替えろ、30分後にそっちに行くわ」
「遠藤さん、環境レポートを送る件、手配してくれた? おお、ラベルを印刷して貼り付けしているんだ。さすがだね♪」
「大藤さん、月曜日に会議の手配どうよ? いくらの昼飯にするか悩んでいるんだって?『京料理げん』の4000円くらいのにしようよ、大藤さんの分も頼んでいいよ」
とするのがよろしい。

もうひとつ、実際の典型的、ティピカルにPDCAが回っていない事例を取り上げます。
日本のISOの総本山、日本適合性認定協会が2010年暮に「MS 信頼性ガイドラインに対するアクションプラン -Part 2-」というのを公表しました。
中を拝見しますと、そもそも目標がはっきりしていない、だから実績がチェックポイントの目標を達成したのかどうか分からない。結果としてフィードバックかけようがない、ゆえにPDCAが回らない、ということが明らかです。
PDCAなんていう言葉がなかった昔から計画したからにはしっかりと要所、要所で進捗を確認して、計画を達成するための方策を練ったに違いありません。だってPDCAというのは学問ではなくてものの道理なのですから。

毎回くだらないことを語っているとお思いの方、まあ、そう言わんといて
いつもはこんな文章を1時間もかけずに書くのですが、今日は家内がコーヒー飲もうよ、りんごむいたわよ、なんて声をかけてくるので都合2時間かかりました。

本日の疑問
私の頭から、このような文章がドンドン湧き出してくるのはどうしてなのでしょうか?
過去にあまりにも多くの失敗をしてきたからでしょうか?
ウソ800を書いているだけなのでしょうか?
間違っても天才だからではないでしょう 



上々様からお便りを頂きました(11.01.12)
PDCAサイクルと会社の計画
まだ給料を貰っている(あと数年ですが)弊社(文字通りのボロ会社です)にも以前は中期5カ年計画なるものがありましたが、やはり定期的な見直しなどと言うものは全く無く、「中計の推進と確実な遂行」というのが毎年の目標になり、毎年できてなかったという有様だったですね。
弊社の親会社(業界トップクラス)でも10ヶ年計画というのを実施中ですが、最初の策定というところは詳しく書いてありますが、その後の進捗と見直しというのは見当たりません。
結局こういった中長期計画というのは「不磨の大典」扱いなんではないでしょうか。
欄間に掲げられた額のようなもんで、時々見ては立派なもんだと感心するもののそれを現実的なものとは考えず、やっていることは場当たり施策と、降って湧いたトラブルの対策だけという状態です。
もう会社からも見放されかけた窓際ならぬ窓の外族ですが、こちらも会社を半ば見放しております。

上々様 毎度ありがとうございます。
イエス様はいいました。人の目の中のごみをとやかくいっちゃいけない。あなたの目の中の梁を取り除きなさいと
いや、これは私自身に対する反省です。
自分自身が研鑽しなければならないことは山ほど感じております。 今年もがんばりましょう

外資社員様からお便りを頂きました(11.01.12)
ティピカルにPDCAが回っていない事例

私の専門の労働契約と大変似ていると思いました。
よく聞く話は社労士事務所で、他社の就業規則はお金を貰ってせっせと作るのに、自分の所には無くて、サービス残業は当たり前とか、休日出勤しても「自己啓発の為で労働じゃないよね」と言う所長さん(当然 社労士です)。
総本山と言えば、厚生労働省では相変わらず土日や深夜でも働く公務員が...
「仏を一番信じていないのは坊主」という言葉を思い出しました(笑)

外資社員様 毎度ありがとうございます。
昔、私が部下がいたときは時間外なんてつけませんでしたね、そういうのが当たり前というかスタイルだったように思います。
今は・・・嘱託の身、時間外もへったくれもありません


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