超入門 マネジメントシステム愚考 11.02.01

私は常に発展途上であり、常に新しいアイデアがわき出てくる。当然であるが、古い発言と異なる見解や、過去の発言を覆すようなアイデアが出てくることはやむをえない。そして新しいアイデアは過去に唱えたアイデアよりも良いことが多い。
といっても民主党の政治家じゃあるまいし、過去の発言を否定したり、マニフェストを反故にしたり、あるいは過去の発言を忘れた振りなんてことはしない。

前回、品質マネジメントシステムあるいは環境マネジメントシステムがバーチャルだと語った。
そしてそれについて、同志たいがぁさんから新たな視点を教えられて考えた。
すべてのシステムはより上位のシステムの一部であり、下を見れば更に下位のサブシステムを有する。
例えば、自動車は運輸機械というカテゴリーに分類されるひとつのシステムであるが、実際に人や物を輸送するためには自動車だけではできない。その実現のためにはその上位にある道路や信号機を含めた大きな輸送システムを必要とする。
今の時期なら、除雪や雪に閉じ込められた人を救出するための仕組みも必要になる。
視野を広げれば、更にそれは鉄道や航空機や海運を含めたより大きな輸送システムの一部である。また、目を下に転じれば、一台の自動車にもエンジンとかトランスアクスルなど多数のサブシステムがある。そしてもっと小さいものにはGPSとかカーステレオというシステムもあり、それはまた別個のGPSシステムや放送システムに含まれることになる。
会社の決算だって、下位を見れば部門の決算があり、各個人に割り当てられた予算があり、上位を見ればグループの連結決算がある。もつと上を見れば国家予算にまでつながるかもしれない。このようにすべてのシステムは単独では存在せず、より大きなシステムの一部を構成し、またより小さなサブシステムから構成されている。
もちろん深宇宙探査機などはそれ自体で独立したシステムという場合もあるだろうし、孤島の社会システムも外界とは隔絶している場合もある。まあ、なにごとにも例外はある。
マネジメントシステムについて考えれば、会社すべてを包含する包括的マネジメントシステムがあり、その一部分としてEMSがあり、QMSがあり、その他、財務、資材、知的財産権管理などなどのシステムがあることになる。
そう思えば、EMSがバーチャルとかQMSが想像のものということもない。すべてのシステムは実在し、どこかの階層に属して、まったく独立しているわけでもない。そしてそれなりの機能を担っていることは事実である。
現実に機能しているかどうかは定かではないが 

ということは「QMSとEMSを統合する」という言い方を間違いと言い切るのも間違いというか言い過ぎであろう。いや、より正しく言うなら「EMSとQMSをあわせてひとつのシステムとして扱う」というべきかもしれないが・・
とはいえ「EMSとQMSの統合システムを構築する」となると、どう理解すればよいのだろうか? これは、やはりどうもおかしいというか間違いという感じがする。
良く見聞きする「EMSを導入する」とか「QMSを導入する」いう言い回しに至っては、これはもう完璧なまちがいとしか思えない。もちろん、表現・言い方じゃなくて考え方がまちがいなのだろうと思う。あるいまちがいではなく、そんなことはありえない、存在するはずがないということかもしれない。
EMSというものが「マネジメントシステムの一部である(ISO14001の定義)」であり、「マネジメントシステムが方針及び目標を定め、それを達成するためのもの(ISO9000の定義)」なら、組織が発祥した瞬間にそれは具備しているはずだと私は考える。
ここで組織とは「認証範囲」のことではなく、英語のorganizationの意味とする。
組織(organization)とはなんだろうか? 英英辞典をひいてみた。
a group of people who have a particular shared purpose or interest, for example a political party or charity
例えば政党または慈善など、特定の事項に関心を持っている人々のグループ
方針を持たず、目標を持たず、目的実現を目指さない集団は組織ではないのではないか。組織ではないということは、そのグループは烏合の衆か、街角で演説を聞いている関連を持たない通りすがりの人々の集まり程度なのだろう。
「EMSを導入したってことは、それ以前は組織じゃなかった」ということになるのだろうか?EMSを導入することによって組織たることをえるなら、組織は本質的にEMSを具備しているはずだ。
昔々、春闘になるとオルグなんてのをやりました。私じゃありません、組合の連中がですよ。
組合に関心のない人を春闘に参加させようと勧誘する行為をそう呼んだようです。
余計なお世話ですよね
前述のように組織についておかしな考えをしている人も知るが、ものすごく先進的な考えをしている方もいる。
「環境とはおのれを取り巻くものすべてだ。だから企業の包括的マネジメントシステムはISO14001のシステムと一致する」というのだ。
確かにISO14001での環境の定義は「大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人及びそれらの相互関係を含む、組織の活動をとりまくもの」であるから、企業のすべてつまり財務も労務管理も輸出管理もセクハラも談合も、環境マネジメントシステムに含まれるといっても間違いではなさそうだ。いや間違いではないのだろう。つまり財務の問題であれば資金調達も使い込みも、労務であれば組合も反社会勢力対応も、北朝鮮にわが社の製品が流れないように対策することも、奥さんに冷たくされた中年が若い女性にちょっかいをださないように指導監督することも、すべて環境問題なのである。 その方はEMSつまりISO14001があればすべては間に合う、ISO14001の規格を利用して、企業というか事業を取り巻くすべてに対応する仕組みを作るべきと考えている。
その心意気やよしといいたいが、組織側がそういうスタンスで考え行動しても誰も困らないが、審査員がそのような考えで審査しては困る。偉大なるISO14001の伝道師である寺田さんにお聞きするまでもなく、それは間違いであろう。

とりとめのないことを考えるのだが、きっとこんな積み重ねでまた新しいアイデアが生まれるだろう。
いえ、どっちみち愚考にすぎませんがね。
でも愚考もせずに、「EMSとQMSの統合システムを構築する」と指導したり、「EMSを導入する」と語る人々よりは少しはましかと・・



外資社員様からお便りを頂きました(11.02.03)
細かい話ですが、ご参考まで。
下記で言う Interestとは利害関係や権益のことと思います
ですから下記のような訳では如何でしょうか?

例えば政党または慈善団体など、特定の事項における利害、権益を目的とする人々のグループ

a group of people who have a particular shared purpose or interest, for example a political party or charity
例えば政党または慈善など、特定の事項に関心を持っている人々のグループ


もちろん、本文の趣旨には全く関係ないので、大きな問題ではありませんけれど

外資社員様 毎度ありがとうございます。
すみません、中学英語しか知らず、50年前の中学校で「interest」=「関心を持つ」と習ったのが頭にこびりついております。
そういえばISO14001で intereted party が「関心を持つ人々」ではなく「利害関係者」となっていて、変だなと思いました。
ボキャブラリーが絶対的に不足していてだめですね。
私なりに英語力のレベルを考えてみました。

国際会議の委員とかロビイ活動ができる外資社員様クラス
英語で仕事ができるよくいるレベル
おれは英語得意なんだぜ我が娘クラス
買い物ができるおばQクラス
言葉が通じないけど笑顔で会話する愚妻クラス


Yosh様からお便りを頂きました(11.02.12)
a group of people who have a particular shared purpose or interest, for example a political party or charity

例えば、政党または慈善団体などの特定の共有された目的か関心を持っている人々のグループ、となるのではないでせうか。
”shared:共有された”の部分が抜けてます

Yosh様 毎度ありがとうございます。
おっしゃるとおりでした。
一語一語よく読むように注意いたします。


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